第50話.建設
マラアイ村は、15軒の家で構成されていた。
皆、服装も貧相で裕福とは言えない。
俺が家族といた村を彷彿とさせる。
この村の生活は畑で成り立っている。
畑は、その村の持ち物というわけではない。
貴族が領地の中から一部を貸し与えているという形なのだ。
つまり、貴族の了承無しに好き勝手に畑を広げることは出来ないらしい。
まあ、広げたら広げたで仕事量も増えるし大変そうだが。
――さて、まずやらないといけないのことは家を建てることだ。
昨日は村長の家で寝たが、さすがに5人はキツい。
早く家を建てないとダメだ。
この世界の家は、一般的に丸太の家だ。
木の資源が豊富であり大きく加工する必要がないため、あまり技術を必要としないし、安く作れるからだ。
その次に多いのがレンガの家である。
レンガの家は手間も掛かり、丸太の家に比べれば少し高いため、中・高所得者向けの家と言える。
そして、俺らが作るのは丸太の家だ。
材料はすぐ近くに森があるから取り放題だからな。
でも、昔の地球での地球温暖化の原因のひとつに森林伐採があるらしいから、そこら辺は気を付けないとな。
アフターケアは必須だな。
「バルトさんは木を切ってきて貰えますか?」
ラエアからの指示で斧を持ち西に1kmほど行ったところにある森に行く。
森には魔物が出るし、魔法が使える俺の方が作業が早いから俺が抜擢された。
俺は強化魔法を使い、もうスピードで木を切り倒していく。
そして、それを魔法のバッグにどんどん入れていく。
その作業の繰り返しだ。
木を切り始めてから、ほんの15分ほどで30本の木を切り倒した。
もういいだろうと思い村に帰って、ラエアの前にバックから出した。
「この短時間で、こんなに持ってくるなんて……スゴいですね!」
材料も揃ったしここからが家作りの始まりだ。
俺の家や、鍛冶屋、研究者のリルさんの家などの、俺にとって重要な家は北側に作る。
まず始めに丸太を適切な長さに切り家の枠を作るため、切った丸太を四角形になるように地面に置く。
次に、丸太の両端に他の丸太とフィットするような窪みを作る。
そうすることで、釘などを使わずに丸太を重ねていくことが出来るのだ。
その作業をひたすら続け、壁を作っていく。
そして、16段ぐらい丸太を積み重ねた所で壁部分の作業は終わりである。
今度は板を使い、屋根部分の製作である。
組み立てた壁の家の正面と、後ろの一番上に板で三角形の木枠を作り、それに合わせて段々と長さが短くなっていくように、長さを調節しながら丸太を重ねていく。
次に、出来上がった三角形の一番上の丸太に窪みを作り、そこに1本の板を架ける。
そして、その横からどんどん板を置いていき、釘で止める。
後は、窓やドア、床を作り、壁の隙間を土などで埋めたら家作りは終了である。
家一軒建てるのに掛かった時間はおよそ3日。
このペースなら余裕で5軒作れる。
俺がこの三日間の間にやっていたことがもう1つある。
それは周辺調査である。
強化魔法を使って東西南北すべてを調査した結果、およそ半径50km圏内に街は存在しなかった。
つまり単純計算で、ここから一番近い北にある街から、南の街に移動するのに100kmもの距離が有ることになる。
これは俺からすれば非常に良い。
なぜならば、俺が新たに街を作ることが出来れば、ここは流通の中間地点になることが出来るからだ。
馬車で移動するにしても、100kmの距離は約18時間は掛かる。
そのため、日が上る5時ぐらいに出たとしても、街に着くのは日が暮れる夜の11時だ。
ギリギリ1日で行けなくはないが、そんな早い時間から出発しないとダメというのはキツいだろうし、途中でキャンプをするというのも護衛の数を増やさないといけなくなる。
そんな状況の中で、その中間に街が出来れば朝早く出る必要もなく、キャンプをする必要もなくなる。
だから、流通の中間地点になると自然と人や物が集まってくる。
そうなると、人・金・物が活発に出入りすることになり、短期間で大きな街にすることも可能である。
俺からしてみれば、なぜここに街を作らなかったのかそれが不思議で堪らない。
もしかしたら、この世界にはこういったビジネスチャンスが沢山転がっているのかもしれないな。
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