第35話.オーガ

さっきの悪い豚さんに洞窟まで連れてこられたの。



お母さんも、お姉ちゃんも一緒。



泣いて嫌がったのに、やめてくれなかったの。



やっぱり悪い豚さんなんだ。



「いやぁ!クレア!シャル!」



『お母さん!』



「シャル!クレアをお願いね。」



「うん!」



お母さんは悪い豚さんに洞窟の奥まで連れていかれちゃった。



私とお姉ちゃんは、お母さんとは違うところに連れていかれたの。



でもね、悪い豚さん達は大人の女の人に夢中で私たちには興味がないみたい。



「クレアいくよ。」



「うん。」



お姉ちゃんは私の手をとって、悪い豚さんから逃げたの。



そして、今はお姉ちゃんと一緒に洞窟にある隙間に隠れてるんだ。




◇   ◇   ◇   ◇   ◇




20体のオークとゴブリン10体が、女7人に群がっている。



オーク達はまだ俺に気づいていない。



「オークども!!!」



怒りの籠った声で叫ぶ。



未だ女達に群がっているオーク達の注意を俺に向けるためだ。



「ブギィ?」



しかし、オーク達は俺を一瞥するも、俺には興味を示さずまた女達を犯し始めた。



「てめぇら、俺を無視するとはいい度胸だな。全員殺す。身体強化フィジカルブースト」



キレた俺の口調は自然と乱暴になっていた。



俺が駆けると同時に地面が抉れる。



女に群がっている4体のオークを瞬殺する。



オークの汚物で汚れているのも気にせずに、解放された女性を抱き抱えた。



「あなたは?」



意識が朦朧としているのだろう、声も途切れ途切れだ。



「俺は冒険者だ。助けに来た。もう大丈夫だ。」



その言葉を聞き、女性は涙を流した。



「他の人も助けるから少し待っていてくれ。」



「はい。」



オークやゴブリンは、仲間を殺され怒っていた。



「ブギィィィ!」



「ギィィ!」



怒ったオークどもは俺に向かってきた。



「うるせんだよ、豚どもが!」



俺は一瞬で間合いを詰めてゴブリンを斬り殺す。



オーク達はそのスピードの速さに付いてこられず、俺の姿を捉えることが出来ていない。



1体を殺したら次へ。



それを疾風のごとく駆け、繰り返す。



その結果1分も経たないうちに30体のオークやゴブリンは全滅した。



6人の女性を順番に抱え、中央に寝かせる。



裸のままなのだがら布をかけてやりたいが、生憎布がない。



「助けに来るのが遅くなってすまない。」



彼女達は肉体的にも精神的にもボロボロの状態だ。



「謝らないでください。助けていただき感謝してます。」



その内の一人が起き上がり感謝を述べようとしていたので止める。



「起き上がらなくていい、そのまま寝ていろ。」



「ですが……」



「いいから寝ていろ。ウィル来い。」



「ウォン。」



彼女達は近づいてくるウィルを見て戸惑っていた。



「大丈夫、こいつは俺の仲間だ。危害は加えない。俺は残りのオークどもを殺しにいく。しばらくここで休んでいろ。ウィル、お前は彼女達を守れ。」



「ウォン!」



「あの!……オーク達を一匹残さず殺してください!」



起き上がり、俺にそう言ってきた。



俺は男だ。



彼女達の苦しみを本当の意味で理解することは出来ない。



今後、生きていくなかで、今日のことは枷となることがあるだろう。



そんな、彼女達が少しでも救われるために俺が出来ることは、こんなことをしたオークどもを皆殺しにするだけだ。



「言われなくても分かっている。お前達をこんな風にした奴らを許しはしない。」



「ありがとうございます。」



分かれ道があったところまで戻り、今度は右にいく。



この間も、強化魔法は継続しているので、移動はものすごいスピードである。



そこには、食べ物や武器がたくさんあり、ゴブリンが7体いた。



そいつらを瞬殺する。



どうやら、ここは食糧庫兼武器庫のようだ。



「ち、ハズレか。」



このぐらいの規模になると、群れのリーダーがいるはずだ。



ここにはいないと言うことは真ん中にいるはずだ。



またも、道を戻り真ん中を進む。



そこにはオークが5体とはじめて会う魔物がいた。



オークのような醜い顔。



しかし、オークとは比べようもないほど引き締まった体。



手には斬馬刀のような大きな剣。



そいつの名前は本で見たことがある。



その名もオーガ。



たしかAランクの魔物だったな。



こいつが今回の元凶か。



そのオーガの足元には裸の女が3人倒れている。



だが、その3人は動きはしない。



すでに死んでいたのだ。



無惨にもその体を弄ばれ最後は殺されていた。

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