第34話.カヤ村
今日もお父さんのお仕事を手伝っているんだよ
えへへー私偉いでしょ!
でもお姉ちゃんもお母さんのお手伝いをしているの。
だから、私たち姉妹はとってもお利口さんなの!
でも、今日はいつもと違ったの。
何か大きな豚さんがやって来たの。
お母さんやお父さんは慌てていたけど、この小さな村に誰かが来るのは初めてだったからとっても嬉しかったの。
だからね、遊んでほしくてその豚さんに走って近づいていったの。
そしたらね、お父さんとお母さんがダメー!って叫んだんだよ。
でも、私には何でダメなのか分からなかったから、そのまま近づいて行ったら、お父さんに抱き締められて止められちゃった。
お父さんが強く抱き締めるから少し痛かったよ。
そしたらね、急に後ろからドンって音が聞こえて、お父さんを見たら血を流して倒れたの。
私は、それを見て分かったの。
この豚さんは悪い子何だって。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は誰かが後を付けていることに気づいたので、敢えて人のいない場所に行き、つけてきている奴を誘き出すことにした。
すると、まんまと3人の男が姿を現した。
(ん?こいつら見たことあるな。)
その3人は、冒険者ギルドで何回か見たことある顔だった。
1人はなんとも我の強そうな男で、厳つい顔にスキンヘッドが特徴的だ。
その後ろに手下っぽい男2人。
「よお、スーパールーキー。俺のこと知ってるか?」
はあ、さっそくプラグ回収かよ。
「いえ、知りません。」
「ははは!スーパールーキー様には俺なんか眼中に無いってことか。」
この人笑っているけど、目が笑っていない。
え、知ってるって答えた方が良かったかな。
でも、名前言ってみろとか言われたら終わりだったしな。
「こいつやっぱり調子乗ってますねゲオルさん!」
「やっちゃいましょうゲオルさん!」
「そうだな。出る杭は早めに潰しておかないとな。」
こいつら、やる気満々だな。
出来ればやりたくないのだけど。
めんどいし。
「えっとー話し合いで何とかなったりは……」
「しねーよ!もともとこうするつもりだったしな!」
そう言ってゲオルは襲ってきた。
ほかの二人は参加せず後ろで応援している。
幸いなのが武器を使わずに、素手で殴りに来たことだ。
その攻撃を素手でいなす。
次々と繰り出される攻撃をいなし続ける。
「あの、もう止めません?」
「てめー!余裕こいてんじゃねーぞ!」
さらに攻撃が激しくなる。
それを反撃せずに、いなし続けていると遂にゲオルがキレた。
「クソが!ふざけんじゃねー!」
ゲオルは腰に下げている剣を抜き斬りかかってきたのだ。
(それはダメだろ。)
俺は一瞬だけ強化魔法を使い、ゲオルの腹を蹴る。
「なに!?」
10mぐらい吹っ飛んで止まった。
ゲオルには、俺が瞬間移動したかのように見えただろう。
そして、なんとか起き上がろうとするゲオルの顔に剣を向ける。
「ゲオルさん!」
「俺の勝ちです。」
「てめぇ、何をした!」
「ただ蹴っただけですよ。」
「そんな分けねーだろ!オークに殴られたような衝撃だったぞ!」
「そ、そうだそうだ!ゲオルさんがお前なんかに負けるわけがねー!お前、どんなズルしたんだ!」
「そうはいっても本当に蹴っただけなんですが……ああ、めんどくせー!そんなことどうでもいいんだよ。まだやんのか!」
俺の急変した態度に3人とも怯む。
うん、俺のブラックな部分が出てしまったな。
「くっ!今日はこのぐらいにしといてやる!てめぇら行くぞ!」
「は、はい!」
なんとも定番な台詞を吐いて逃げていった。
「やば!急がないと今日中に帰れなくなる!」
時間の遅れを取り戻すため急いでカヤ村に向かった。
「加速!」
街の外に出て強化魔法を使う。
ウィルも一緒なので、ウィルのスピードに合わせた魔力量を込めた。
ウィルは今のところ大体時速50kmで走る。
このスピードで行けばカヤ村への10kmは、20分もあれば着くだろう。
ウィルと並んで走ること20分カヤ村が見えてきた。
しかし、様子がおかしい。
外に誰もいないのだ。
近づいてみると、家の中からは人の気配がした。
でも、その気配はどこか怯えているようだった。
多分オークから隠れていて、俺のことをオークが来たとでも思っているのだろう。
「すいません!ギルドからの依頼でオーク退治にきたんですけど!」
警戒していて出てくる気配がないので、大声で敵ではないことを教える。
すると、次々と家から人が出てきて、俺の前に集まってくる。
皆、ウィルを見て驚いていた。
「こいつは、俺が使役しているので害はありません。」
出てきた人の中で一番老いている老人が皆を代表して前に出て来る。
「私は村長のアドクじゃ。おぬしが、オークを退治してくれる冒険者かのう。」
「はい。」
「また、随分と若いが大丈夫なのかのう。」
「実力は確かですので。」
「そうか。なら出来れば今すぐ行ってきて欲しいのじゃ。村の女が度々拐われているんじゃ。その中には子供も入っておる。男も何人も殺された。早く助け出してくれ。」
オークは性欲の強い魔物だ。
多分拐った女達を犯しているのだろう。
早く助け出さなければ、女達の精神が壊れてしまう。
「分かりました。今すぐ行きましょう。」
「ありがとう。ほんとうにありがとう。オーク達は東から来た。そこには洞窟があるから、多分そこにいると思うのじゃ。」
涙を流しながら村長は礼を言っている。
周りからも゛ありがとう〝と言う言葉が飛び交う。
「じゃあ行ってきます。」
またも、村人達から頼んだそー!などとの言葉が飛び交う。
俺はそんな声を背に洞窟に向かった。
その洞窟は直ぐにウィルが臭いを嗅ぎ付けて見つけた。
洞窟の入り口には2体のゴブリンが見張りについていた。
「ゴブリンも一緒か。」
オークはゴブリンを従わせていることもある。
今回はそのタイプのようだ。
「ウィルは右を頼む。」
「ウォン。」
「身体強化フィジカルブースト」
早く女の人達を助けるために最初から飛ばしていく。
「ギィ?」
左のゴブリンに斬りかかり、ウィルは右のゴブリンに噛みついた。
ゴブリンは俺達の姿を見ることなく死んでいった。
「よし、中入るか。」
洞窟は、かなり広く奥まで続いているようだ。
そんな洞窟からは何かの音が聞こえているが、反響していてよく分からない。
音が気になりながらも、そのまま進むと途中で道3つに分かれていた。
取り敢えず、左に進むとさっきから聞こえていた音が大きくなってきており、その中には女の人の声も混じっていた。
警戒しながら進むと、開けた場所に出た。
そこにあった光景は見るに耐えないものだった。
裸の女がオークやゴブリンどもに犯されているのだ。
その女達の目は皆死んでいた。
当たり前だ。
こんな醜い奴らに犯されて正気を保っていろというのが無理な話だ。
犯されているだろうと予想はしていたが、その光景を見て俺の中の何かが壊れた音がした。
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