第15話.初クエスト

「す、すいません。私ったら」



冷静になったエルミアはまた顔を赤くしていた。



「いえ、大丈夫ですよ。」



そんなエルミアさんに優しく微笑む。



「説明の続きお願いします。」



「はい!えっとですね、今度はこっちに触れてもらえますか?」



出てきたのはさっきと同じ水晶の様に見えた。



「こっちはですね、魔法の系統を調べるためのものです。火なら赤く、水なら青く、風なら緑に、土なら茶色く、雷なら黄色くなります。また、闇なら黒く、光なら輝き、強化なら灰色になります。。さぁ、触れてください!」



エルミアが期待を込めた目で見てくる。



俺が水晶を触るとエルミアが言ったどの反応とも違う反応を示した。



多分、黄色には光っているのだろうが、何だか色が変だ。



少し暗い黄色なのだ。



「こ、これは!?二種類の反応!?雷と身体強化の二つ持ち!?」



またエルミアの声が大きくなる。



「二つ持ちだなんて……ただでさえ少ない魔法士なのに、それのさらに1万人に1人の割合――」



また、置いてけぼり。



おーい、エルミアさーん!戻ってきてくださーい!



「あ……すいません。また自分の世界に……せ、説明に戻りますね。」



いえいえ、もう慣れちゃいましたよ。



「はい、お願いします。」



「バルト様は珍しい雷と身体強化の2つの属性をお持ちです。ちゃんと練習すれば魔法も使えるようになると思います!」



「魔法の練習ってどうすればいいんですか?」



「一番速いのは魔法を使える人に魔力の使い方を習うことですね。なんなら私が教えましょうか?」



「え!?いいんですか?でも、エルミアさんって魔法使えるんですか?」



「使えますよ。魔法はエルフの専売特許ですから。」



エルミアが笑顔で答える。



どうやら、基本貴族だけが使えると思っていた魔法は、エルフなら大抵の者は使えるらしい。



生まれ持ちエルフは魔力が強いそうだ。



「では今度、私が休みの時に練習しましょう。」



「はい!よろしくお願いします。」



「そして、こちらが冒険者カードになります。このカードは身分証明にもなりますので、このカードを提示すれば街にも入りやすくなります。また、紛失した場合は再発行となりますが1週間ほど時間が掛かります。また、故意に紛失した場合は再発行は致しません。」



以前、良くカードを無くす人が何人かいたそうだ。



不信に思ったギルドはその人達を調べてみると、冒険者カードを売っていたらしい。



何でも、裏で取引されなかなかの高値が付くみたいだ。



それ以来、故意に紛失した場合再発行はしないという決まりが出来たそうだ。



カードを提示すれば簡単に街に入れるらしいし、危険物を持ち込むのに有効なんだろうな。



また、冒険者カードは車の免許証より少し大きいぐらいで、下にはDと書かれていた。



「そして、クエストですが常時クエストと普通クエスト、緊急クエストの3つの種類があります。常時クエストは名前の通り何時でもやっているクエストです。薬草の採取や、付近のコボルトやゴブリンなどの討伐などですね。普通クエストは、商人からの護衛依頼や村付近の魔物討伐依頼、在庫が少なくなった薬草の採取などです。通常、依頼日の1日以上前に貼り出されます。緊急クエストは、冒険者ギルドが出す緊急時のクエストです。安全性を考えて大抵がCランク以上の冒険者に受けてもらいます。そして、クエストは自身のランクの1つ上までなら受けることができます。バルト様は今DランクですのでCランクのクエストまで受けることができます。ですが、死亡確率が高くなるのでお勧めはしておりません。また、普通クエストを失敗した場合は違約金が掛かる可能性があるのでご注意ください。」



失敗すると違約金が発生するのか。



金がない今、失敗することは出来ないな。



「次にランクアップですが、ポイント制になっております。クエストごとにギルドでポイントを設定しています。そのポイントを教えることは出来ませんが、難しい以来ほどポイントは高くなっております。また、自分のランクより下のクエストを達成したとしても、ポイントは付きませんのでご注意ください。」



下のランクのクエスト受けてもあんまり意味ないのか。



「説明は以上になります。質問はありますか?」



「討伐したときの証明ってどうすればいいんですか?」



「あ、それはですね、基本的には耳を切り取って来ていただければ大丈夫です。牙や角がある魔物ならそれでも大丈夫ですし、マジックバックなどがあれば実際に持ってきても大丈夫ですよ。」



「分かりました。取り敢えずやってみます。最初なんで、薬草の採取やろうと思うんですけど良いのありますか?」



「でしたら、Fランクのアオイ草とカイシ草の採取がありますよ。あっちの掲示板に絵や報酬など書いてあるので見てみてください。」



「分かりました。ありがとうございます」



エルミアが教えてくれた掲示板を見に行く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


       アオイ草10本


 青い花が特徴。花びらの付け根に黄色い模様が付いている。


 似た花にニシ草があるので注意。


 花と根っこが薬になる。


 街周辺で採取可能



 銅貨2枚


             F


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


         カイシ草10本


ギザギザの大きな葉っぱが特徴。


 少し刺激の強い臭いがする。


 数はあまり多くないため見付けにくい。


 根っこが薬になる。


 街周辺で採取可能



 銅貨3枚


           F


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



カイシ草の方が見つけにくいのか。



取り敢えず探しに行くか。



「ウィルいく……」



あ、ウィルに臭い覚えさせれば簡単に見つかるかも。



またエルミアのいる総合受付所まで行く



「すいません、エルミアさん。アオイ草とカイシ草の原物ってあったりしませんか?」



「ありますよ。」



「持ってきてもらうことって出来ますか?」



「はい、大丈夫ですよ。今持ってきますね。」



エルミアさんが中の方に行き、しばらくするとアオイ草とカイシ草を持って戻ってきた。



「どうするんですか?」



「ウィルに臭いを覚えさせるんです。」



草をウィルに嗅がせる



「覚えたか?」



「ウォン!」



アオイ草とカイシ草をエルミアに返す



「へー!賢いですね。」



「はい、ウィルはとても賢いですよ。では、行ってきますね。」



「頑張って来てください。」



いよいよ、初クエスト。



俺達は冒険者ギルドを出て薬草の採取に行った。


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