第16話.奴隷

ギルドを出たときには正午を過ぎていた。



そのため、軽く手持ちの食料で昼食を取りながら薬草を採取するために街を出る。



「頼むぞ、ウィル」



「ウォン」



薬草を見つけるのにウィルの鼻を使う。



こっちの方が確実に効率がいい。



「ウォンウォン!」



街周辺を歩いているとウィルが薬草の臭いを嗅ぎ付けた。



ウィルについていくとアオイ草を見つけた。



さっそく取っていく。



すべて取り終わると次の場所へウィルに案内してもらう。



そうしている内にいつの間にか50本以上集めることが出来た。



「ウィル次はカイシ草を見つけて」



しばらくするとウィルがカイシ草を見つけた。



カイシ草は見付けにくいとのことだったが、ウィルがいればすぐ見つけられた。



街から少し離れた所まで行って、何とか30本は集めることが出来た。



これもすべてウィルのおかげだ。



気がつくと夕方になっていた。



薬草をバックに詰めギルドに向かった。



「あ、バルトさん!お帰りなさい。どうでした?」



受付まで行くとエルミアさんが声をかけてくれた。



「はい。ウィルのお陰でかなり集まったと思います。」



そう言って薬草を机の上に出す。



「どんだけ、取ってきたんですか!?」



「大体、90ぐらいですかね。」



「そ、そんなにですか。凄いですね。何か、バルトさん関連でいちいち驚くのも疲れてきましたよ。もう驚かないようにします。」



普通にやってるだけなんだけどな。



今回のもウィルがいなきゃここまで集まらなかっただろうし。



「では、精算しますので少々お待ちください。」



そう言われ待つこと20分



「お待たせいたしました。アオイ草57本とカイシ草30本で銅貨21枚です。アオイ草3本足りなかったですけど、初回ってこともあるのでサービスしときました。」



宿屋代が銅貨10枚だから、中々の成果と言える。



でも、そろそろ持ってきてた食糧も無くなるし、もう少し稼がないとな。



色々と装備とかも揃えていかないといけないだろうし。



「ありがとうございます。」



「それにしても、すべてがアオイ草なのは凄いですね。普通はニシ草が混じるんですが……ウィルさんの鼻は優秀ですね。」



「はい、とても優秀なんですよ。」



「ウォン」



ウィルも僕は凄いんだぞ~という感じで返事をしている。



ちょっとドヤ顔なのがムカつくけど。



「それではまた明日来ます。」



「はい、お待ちしております。」



ギルドを出て、宿屋に戻る。



今日は中々充実した1日だったな。



試験に受かり、魔法の才能があることが分かり、初クエストをクリアしと意外と疲れた。



1番の収穫だったのが魔法の才能があることが分かったことだな。



魔法を使いこなせるようになれば更に強くなれるだろう。



さらに俺は属性が2つ持ちみたいだ。



これはそうとう珍しいそうだ。



自分のこれからの人生が楽しみだ。



元の世界では得ることのできなかった未来への期待。



こっちに転生して本当に良かったと思う。



そんなことを考えていると、宿屋に着いた。



「あら、お帰り、夕食はどうする?食べてくかい?」



屋台のおばちゃんが出迎えてくれた。



金も入ったし、干し肉や果物にも少し飽きたし、食べようかな



「じゃあ、いただきます。」



「はいよ、ちょっと待ってな。」



4つあるテーブルの内2つは他のお客さんで埋まっていた。



空いている左手前の席に座り料理が来るのを待つ。



「お待たせ、ゆっくり食べな」



少しすると料理が運ばれてきた。



肉と野菜を炒めたものに、スープとご飯が付いた料理だった。



村で食べてたのより全然豪華だ。



それに白いご飯は村ではほとんど食べたことがなかった。



俺は久しぶりの白飯にがっついて食べた。



「ふぅ~美味しかった。」



「はい、ありがとうね」



食べ終えた頃、おばちゃんが皿を下げにやって来た。



「この肉は何の肉なんですか?」



「ああ、これはねオークの肉だよ。平民が良く食べる一般的な肉だね。冒険者が良く狩ってくるから手に入りやすいんだよ。」



オークってあのオークか。



オークの肉って食べられるのか。



豚肉みたいでかなり美味しかったけど。



「そうなんですか、これ3日分の宿代と飯代です。」



しばらくこの宿屋に泊まることにしていたので、先に3日分の宿代を払うことした。



合計銅貨32枚をおばちゃんに渡す。



「はい、確かに受け取ったよ。」



さてと、部屋に戻るか。



部屋に戻りウィルにご飯を与える。



ウィルには猪の干し肉だ。



ウィル用に肉も調達しておかないとな。



俺はベットに寝転がる。



それにしてもエルミアさん可愛いかったな。



あの人に会えるだけで頑張れる気がする。



別に恋心とかは無いが、やはり俺も男。



可愛い子がいれば更にやる気も出るというものだ。



明日の午前中は街を見て回ろう。



昨日今日と観光する余裕もなかったしな。



よし、そうと決まれば寝るか。



明日もがんばろうっと。



そうして長い一日が終わった。





◇   ◇   ◇   ◇   ◇




次の日、俺は市場にいた。



色々な店が建ち並び、非常に賑わっていた。



「へー色々あるんだな」



意外と見たことのある野菜が多い。



ジャガイモやキャベツみたいな野菜。



この世界では、比較的育てやすいジャガイモが一般的に使われるらしい。



食材の他に服やアクセサリーなどもあった。



武器屋とかはどこにあるんだろうな。



「ゴロゴロゴロ」



人の声に紛れて車輪の音が聞こえてきた。



何か来るのか?



後ろの人達が道を開けるために左右にズレる。



そして、そこを通ったのは檻に入れられ鎖をしている人達だった。



服はボロボロのを着せられ目には生気がない。



中には小さな子供までいる。



「奴隷ってやつか」



この世界には奴隷制度があるみたいだ。



この街にとっては普通なのか奴隷を乗せたのが過ぎると、元の状態に戻って賑わいを取り戻した。



奴隷を見る街の人達の目は、汚物を見るような目と、こうはなるまいと言う目だった。



別に奴隷制度をどうこう言う気はない。



奴隷制度も、仕組みを変えれば人にとって優しい奴隷制度を作ることもできる。



奴隷制度が仕組みによっては救済措置ともなり得るのだ。



しかし、この街の奴隷制度は街の人の様子を見る限りあまり良い制度とは言えなさそうだ。



そろそろ正午か。



ギルドに行かないとな。



奴隷達の事が少し気になりながらもギルドへと向かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る