第13話.試験(前半)

本文


次の日、さっそく冒険者ギルドに行くために、宿屋のおばさんに場所を聞く。



「冒険者ギルドならここから1キロぐらいだね。大通りに出たら真っ直ぐ進めば着くはずだよ。」



「分かりました。ありがとうございます。」



おばさんに教えてもらった道を行き冒険者ギルドを目指す。



やはりウィルが目立つのかジロジロ見られるが、気にしないようにする。



大通りに出ると、昨日は見れなかった市場が開かれていた。



かなり賑わっており、野菜から果物、洋服の他、見たことも無いようなものまで並んでいた。



そして、一番興味を惹いたのが異種族の存在だ。



エルフがいるのだ。



見て直ぐに分かった。



長い耳。そして、美しい顔。



他とは全然違う美しさだった。



また金髪の髪も素晴らしい。



エルフは美男美女ばかりというのは本当らしい。



色々と見ていきたいが、今は冒険者ギルドに行くことを優先する。



それからしばらく歩くと着いた。



「ここか」



冒険者ギルドと書かれた看板があり、かなり大きな建物だったので直ぐに分かった。



いよいよ、俺の冒険の旅が始まる。



不安と期待を込めて、冒険者ギルドの扉を開けた。



扉を開けて一番最初に目についたのが屈強な男達。



鍛え抜かれたその体は目を引くものがある。



そして、銀行の窓口のように4つに分かれた受付所がある。



総合受付所、素材受付所、パーティー受付所、クエスト受付所の5つである。



その受付には先程も見たエルフ族の女性が立っていた。



その女性もとても美しかった。



俺は取り敢えず、総合受付所のところまで行く。



名札にはエルミアと書かれていた。



「すいません、冒険者ギルドに加入したいのですが……」



「初心者の方ですね。それではご説明させていただきます。まず冒険者には誰でもなれるわけではありません。試験を受け、合格したものだけが冒険者になることができます。これは実力のない者が冒険者になるのを防ぐためです。以前までは試験などありませんでしたが、死者数が多すぎたため今では試験を課しています。取り敢えず説明は以上です。この先の説明は試験に合格してからとさせていただきます。試験は今日でも大丈夫ですがいかがなさいますか?」



「今日やります。」



試験がいるとは思わなかったが、合格する自信はある。



「分かりました。お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。」



「バルトです。」



「バルト様ですね。武器は剣でよろしかったですか?」



「はい。」



「それでは、試験の説明に入ります。試験はこちらが用意した試験官と戦っていただくだけです。単純に戦闘力を測る試験と言うわけです。その試験官が合格と見なせば合格となりますので、勝てなくても力があると認められれば合格になります。もちろん倒せれば合格は確定です。ですが、試験官も元Cランク冒険者。引退したとは言えかなりの実力者です。倒すことはまず不可能だと考えていてください。試験場所は、この建物の裏側の広場で行います。何か質問はありますか?」



「武器は持ち込みですか?」



「武器はこちらで用意させていただきます。念のため木刀とさせていただきますがよろしいですか?」



「はい、大丈夫です。」



「ちなみにですが、そちらのウルフは?」



「あー、ま、ペットみたいなもんです。」



「そ、そうですか。使役されているなら何も言うことはありません。それでは、10時から試験を開始致しますので裏庭までお越しください。そちらの扉から行けますので。」



「分かりました。」



10時まで1時間ぐらい時間がある。



俺は時間までギルドに張り出されている掲示板を見ることにした。



そこには討伐依頼、護衛依頼、採取依頼など色々張り出されていた。



その依頼書の一番下の真ん中にはランクが書かれており、討伐依頼のほとんどがDランク以上だった。



FランクEランクの主な依頼は薬草の採取だった。



数件簡単な魔物の討伐があったが、ほとんどは薬草の採取である。



また、パーティーを募集する掲示板もあった。



気がつくと1時間が経とうとしていたので、指示された扉から裏庭に行った。



そこはテニスコートが2、3面ぐらい出来そうな広さだった。



試験をするには十分な広さと言えるだろう。



そして、そこには先客が2名いた。



やはり、ウィルを見て少しビビった反応を見せた。



3人とも俺と同い年ぐらいの男で、見た目的にそんなに迫力はない。



トレーニングもろくにせずにやって来たという感じだ。



しかし、目だけはやる気がみなぎっているのが分かる。



でも所詮はトレーニング不足。



印象だけで判断するなら、2人には余裕で勝てるだろう。



しばらくそこで待っていると、50歳ぐらいの男がやって来た。



髪には所々白髪が見え老いているように見えるが、体は全く衰えていないようだ。



中にいた屈強な男達同様、体は鍛え抜かれていた。



そして、もう一人。



こちらは30歳ぐらいだろうか。



体はそんなに鍛えられてなく、服装も戦うような格好ではない。 



「お前達が今回試験を受けるもの達か。俺はアッシュだ。よろしくな。」



「私は今回の試験を監督させていただきます、クルムといいます。」



なるほど、監督者だからそんな服装だったのか。



「じゃ試験始めるぞ。誰からやるか?」



「俺からでお願いします!」



真っ先に手を挙げたのは2人のうちの一人。



もともと、俺は最初っから戦うつもりはなかった。



なぜならアッシュの戦い方というのを知っておきたかったからだ。



だから、この2人はちょうどいい噛ませ犬になってくれるだろう。



「いいだろう、準備しろ。他の二人は扉付近で見ていろ。」



俺ともう1人の男、クルムも入り口の扉付近に移動する。



俺はウィルと一緒に座り、戦いを見学する。



もう一人の男は立って見学している。



そして、クルムは紙とペンを持ち記録を取る。



しばらくすると試験が始まった。



アッシュは最初何も攻撃せず受けに回っていた。



(最初は様子を見るのか。どれ程の実力があるのか見ているのだろう。)



それにしても、試験を受けている男の太刀筋は素人とは言わないが、毎日剣を振っている奴の太刀筋ではない。



しばらく受けに回っていたアッシュも、もういいと思ったのか決めに入った。



男が握っていた木刀を弾き飛ばし、試験は終わった。



「さて、次はどっちだ?」



立っていた男は無言でアッシュの元まで歩いていった

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