第12話.カルーネ
近くの木影で休憩し、さっき剥ぎ取ったコボルトの肉をウィルに食べさせる。
調味料などなく、肉を焼いただけだ。
ウィルは生より焼いた方が好きなようなので焼いている。
「どうだウィル?おいしいか?」
「ウォンウォン!」
どうやら、コボルトの肉は美味しかったらしい。
「さてと、そろそろ行くか」
1時限ほど休んで街に向けて出発した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
4時間ほどたった頃、ようやく街が見えてきた。
看板にカルーネと街の名前が書かれていた。
日が落ちるまで残り1時間ぐらいだ。
なんとか日が落ちる前に着けたので良かった。
こんな時間だからか、人は少なかった。
「おい!その狼はなんだ!?」
ウィルのせいで少し騒ぎになったが、ペットだということで納得してもらった。
「そ、そうか。では通行料銅貨1枚だ。」
「え?」
まさか通行料がいるとは……税金を取るのか。
ここで金を使うことになるとは予想してなかったな。
銅貨1枚を払う。
「ここらで一番安い宿分かりますか?」
どこに安い宿があるか分からなかったので門番に聞いてみた。
「門を入ってまっすぐ行くと、十字路があるからそこを左に曲がりな。しばらく行くと憩いの場という宿屋がある。そこが一番安いよ。」
「ありがとう。」
街は結構大きかった。
直径四キロほどあるだろうか。
街の中には人がたくさんいた。
村ではこの時間帯になると、ほとんど家の中だ。
なぜ、こんなにまだ外にいるのかそれは直ぐにわかった。
街には街灯があるのだ。
淡く光っている。
「おや、あんたは田舎から出てきたのかい?」
街灯を見ていると優しそうなお爺さんに声をかけられた。
「ええ、まあ」
「そうかい、そうかい。なら街灯を見るのは初めてじゃな。これは光魔法によって出来ているんだよ。この魔法は10年間は消えることがないらしくてな、非常に便利なんじゃよ。まあ家に付けるとなったら結構な金額がするがな。」
「そうなんですか、村にはなかったのでとても新鮮です。」
「田舎から出てきて大変だろうけど頑張りなさい。」
「はい、ありがとうございます!」
街灯があるだけで便利だな。
おっと、もう日が暮れる。
俺は急いで教えてもらった宿屋に向かった。
その途中、やはりウィルが目立つのかジロジロ見られた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ここか。」
門から10分ぐらい歩いた所にあった。
二階建ての小さな宿屋だ。
さすが、最安値ということもあって中々のボロ屋。
でも、村の家とあまり大差ないので我慢できる。
入ると、1階は食堂になっているようだ。
机が4つ、左右に二つずつ置いてある。
その右側の奥の机をふっくらした女性が拭いていた。
そして天井には街灯と同じ淡い光を発する物がぶら下がっていた。
さっきのお爺さんは中々の値段って言ってたけど、こんな宿屋でも付いているだな。
「いらっしゃい。泊りかい?」
「はい」
「銅貨10枚ね。夕食付きなら銅貨12枚だよ。」
飯なら持ってるし、要らないだろう。
「ところで、その狼も一緒なのかい?」
「ええ、まあ」
意外と驚かないんだな。
門番は結構ビビってたのに。
女は強しだな。
「一緒の部屋でいいならその狼の分は取らないでおくよ。」
「ありがとうございます!夕食は要らないので銅貨10枚で」
「はい、確かに。2階の一番奥の左側の部屋を使いな」
「分かりました。」
階段を上がると、左右に二つずつ扉があり、四部屋あった。
言われた通り左奥の部屋に入った。
そこは広さ四畳ほどの部屋で、ベッドだけが置いてある。
「寝るためだけの部屋だな」
実際寝る以外することもないし、村にいたときならもう寝ている時間帯だ。
今日は歩き疲れたし寝るとしよう。
俺はベットに寝てウィルは下で寝る。
ウィルも寝転がると、床にはほとんど隙間がなかった。
「おやすみ、ウィル」
「クゥーン」
明日はいよいよ冒険者ギルドに行く。
今後のことを考えると楽しみすぎて寝れないかもと思っていたが、かなり疲れていたらしくいつの間にか眠っていた。
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