第5話.練習

俺達は、ゴブリンと戦ったあと、直ぐに村に戻った。



さっきの俺の行動を見て、父がもう帰った方がいいと判断したためだ。



少し不満だったが、それも仕方がない。



帰りは特にケガも無かったので、普通に戻ることが出来た。



父は家に戻ると、母に森であったことを伝えた。



母は話を聞き終えた後、真っ直ぐと俺を見つめた。



その直後、パチーンっといい音がなる。



俺の頬を母が叩いたのだ。



「もう二度とやりなさんな」



そのあと抱き締められ、耳元でそう言われた。



ムチとアメを一度に与えられた感じだ。



無理もないか。



無謀なことを仕出かした俺に対しての怒りと、死ななくて良かったという安堵、二つの感情が母には押し寄せたのだろう。



心配をかけてしまったな。



叩かれたのは痛かったが、自業自得ということで納得した。



午後からは畑仕事の予定だったけど、父と母に休んどけと言われたのでそうすることにしたが、ただ休んでいるのも暇だから、俺は弓矢の練習をしていた。



父がゴブリンを弓矢で一発で仕留めたのを見て、今後必ず役に立つと感じたので練習しようと思ったのだ。



俺はこっそりと弓矢を持ち出し、森の近くで木に向かって矢を射つ。



誰にも教わったことがないので、我流になるがとりあえず1発射ってみる。



もちろん外れた。



それからも休憩を挟みながら、日がくれるまでずっと練習していたがあまり上達はしなかった。



10本中3本当たればいい方っていうぐらいだった



せめて9割は当てられるようになりたい。



じゃなければ話しにならない。



今は止まっている木だか、実際の相手は動くのだ。



そして、自分自身も動きながら射たなければならないこともあるだろう。



弓は仲間がいるときや、敵に気付かれていないときに有効だと思うため、使う場面も剣に比べれば少ないかもしれないが、出来て損はない。



これから、暇なときは弓矢の練習をするか。



そして、剣の稽古もしないとな。



俺は今後のことを考えながら家に帰った。



「あんたは、休んどけって言ったでしょうが!」



家に帰るとさっそくお叱りを受けた。



休んどけと言われたのに、弓の練習をしていたからだ。



その結果、夕食のご飯は抜きだと母に言われてしまった。



反省しろとのこと。



でも、まぁ、ご飯は正直あまり美味しくないからめっちゃ食いたいって訳でもないんだよな。



お腹が空いてるから食いたいは食いたいけど……



この村ではパンが主食だが、パンはパサパサで美味しくない。



スープは味薄いし、野菜もジャガイモばっかり。調味料も塩しかないし。



あ、でも今日は猪の肉があるのか!?



それは食べたい!



「お願いします!反省してるから、ご飯を食べさせてください!」



俺は肉欲しさに母さんにお願いした。



最初は首を縦に振らなかったが、奮闘のすえ何とか猪の肉を食べさせて貰えたが、食べた瞬間驚いた。



「おいしい!」



猪の肉は、初めて食べたがとても美味しかった。



脂も多く、なんといってもコリコリした食感が美味しい。



切った肉に少し白っぽい所があり、境界線がはっきりわかる。



その白い部分がコリコリしていて、その食感の虜になってしまった。



前の世界で食べていた豚肉や鶏肉よりこっちの方が断然美味しい。



「ごちそうさま」



こっちの世界に来て、初めて美味しいものを食べたぜ。



これは積極的に狩りに行って肉を取ってこなくては!



しかし、今日これだけの騒ぎを起こしてしまったのだから、しばらくはムリそうだな……



とりあえずは、剣と弓の練習をしとくか。



で、ある程度時間が経ったらもう一度狩りにいこうって父さんに言うか。



そう決め俺は眠った。


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