第6話.リベンジ

それから3ヶ月が過ぎた。



その間、畑仕事ばっかりやっていたが、仕事の合間を見つけて、弓の練習や剣の練習をしていた。



途中、父に気づかれた止められるかとおもったが、弓を教えてくれることになったので助かった。



父の指導のお掛けで少しは良くなり、今のところ10発中6発は毎回当たる様になって進歩はしていた。



剣は、村一番の剣の使い手と言われているラモンに稽古をつけて貰えることになった。



基本は模擬戦闘だ。



木刀でひたすら戦う。



模擬戦闘なのは、ラモンが人に教えることが絶望的に下手だったからだ。



だが、教えるのは下手でも剣の腕は村一番と言われるだけに強かった。



良い選手が良い監督になれるわけではないということだな。



模擬戦闘を繰り返しやっていくうちに、自分の才能に少しずつ気づいてきていた。



そう、俺には剣の才能が合ったのだ。



いや、俺にあるというよりはこの体なのかもしれないが……攻撃が良く見えるのだ。



動体視力が良いのだろう。



最初の頃は、目に体が追い付いておらず、見えていても反応することが出来なかったが、次第に慣れてくると段々と勝てるようになってきたのである。



今では7割は勝てるようになった。



これには、ラモンも驚いていた。



俺自身も3ヶ月でここまで勝てるようになるとは思っていなかった。



我ながら自分の才能にビックリだわ。



でも、目が良いだけではラモン以上の強者には勝つことが出来ないだろう。



技のスピードや駆け引きなどの技術が圧倒的に足りないからだ。



だから、ラモンとの模擬戦闘の他に、自分自身でも特訓はしている。



それと、この3ヶ月で分かったこともある。



まず、この世界では15歳で大人と認められるということ。



そのため、15歳になればこの村を出ていくことも認められるらしい。



次に、この村の付近には魔物はゴブリンぐらいしかいないということ。



そのゴブリンもこの村を襲うことは滅多にないらしい。



また、ゴブリン以外の強い魔物が森に住み着いたときは、都の冒険者ギルドに依頼を出すそうだ。



最後に、やはりこの世界には魔法が存在するということ。



その魔法にもいろいろなものがあるらしい。



基本的な火、水、土、雷、風の他に聖職者のみが使える光魔法、その逆の人に負の効力などを発動させる闇魔法、身体能力などを上げることができる強化魔法などがあるらしい。



魔法は誰にでも使うことが出来るわけではなく、生まれ持つ魔力の量によって使えるかどうかが決まるらしい。



しかし、魔法を使える者の大半は貴族だという。



なんでも、昔魔族との大戦で活躍した魔導師達が貴族になったらしく、その血筋を受け継いだ子孫である貴族は魔法を大体扱えるらしい。



そのため、魔法を使えるというのは立派な貴族であるという証しでもあるそうだ。



この三つがとりあえず分かったことだ。



また、こっちに来てから5日目ぐらいに自分の顔を初めて見た。



この世界の鏡は高級品だから、こんな村に鏡など存在しない。



ならどうやって顔を見たのかというと、単純に川で見たのだ。



水浴びの時、水面に俺の顔が映りその時初めて自分の顔を見た。



その顔は前の世界と同じだった。



俺の顔は良くも悪くも普通だと思う。強いていうなら中の上ぐらいだ。



まぁ、自分の顔はそんなに嫌いでは無かったので、そんなに不満はない。



逆に、まったく知らない顔というのも慣れるまで時間が掛かりそうだし、違和感しかないだろうから良かったと思う。



――あれから3ヶ月経って、剣と弓の腕も上達したことだしそろそろ森に行きたい。



稽古もいいんだが、実戦に勝る経験というのは無いだろう。



俺は考えた末に一人で行くことにした。



村の決まりでは三人以上で森には入ることとなっているが、父とアグハと一緒に行ったのでは、俺が求める経験はできない。



それに言ったところで、母に止められるだろうし。



まあ、1、2時間ぐらいならバレ無いだろうし、行っても大丈夫だろう。



父さんは畑仕事をしており、母さんと姉ちゃんは川に洗濯をしに行っている。



今が絶好のチャンス。



俺は家にある弓と剣を持ち出し、こっそりと森に入った。



俺はどんどん森の奥へと進んでいく。



ある程度奥に行かないとゴブリンに会うことはできない。



だが、ここら辺でもいないということはないので警戒は怠らない。



森に入り少し経った頃、俺はある違和感を感じた。



そんなに歩いたわけでもないのに呼吸が乱れているのである。



それは俺が緊張している何よりもの証拠だった。



父とアグハと来たときとは全然違った。



以前は父とアグハに守られている感じがしていたのであまり感じなかったが、一人と三人ではこんなに違うのかと思い知った。



いつ敵に襲われるか分からないプレッシャー。



そのプレッシャーに押し潰されそうだった。



そして、30分後ゴブリンが住み着いているぐらいの深さには来た。



ここからはさらに警戒しなくてはならない。



いつゴブリンと遭遇してもおかしくないのだ。



俺は中腰でゆっくりと進んでいった。



「……ィ……ギィ」



そこから10分ぐらい経っただろうか。



少し遠くの方からかすかな声が聞こえる。



俺はその声の方に足音をたてないようにゆっくりと進んでいった。



すると、段々と声が大きくなってきて、前方に今まで木や葉が生い茂ったばかりの所に少し開けた場所があるのが見えた。



俺は木に姿を隠しながら、開けた場所を覗いた。



そこにはゴブリン4体が座っていた……

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