第3話.家族
「……ト……ルト……バルト!」
「おわぁ!」
気がつくと俺の目の前には、35ぐらいの男と女、横には俺と同い年ぐらいの女の子がいた。
「バルト急にボーっとしてどうしたのよ」
「何でもない」
何でもなくない。急に知らないやつらが目の前と隣にいるのだから。
俺は脳内を高速回転させて考える。
「早くごはん食べな。」
俺は今イスに座っており、机にはパンとスープがあった。
そして、目の前の男と女、横の女の子もイスに座っており、ご飯を食べている。
今はみんなでご飯を食べている最中らしい。
ということは、この三人はこの世界での俺の家族である可能性が高い。
そして、ここはS2Rの世界で間違いないだろう。
さっきバルトと呼ばれていたが、それがこっちの世界での俺の名前……ということだろうか。
しかし、こんな場面から始まるなら、14歳までの記憶も引き継がせてくれればいいものを。
急すぎてパニックだぜ。
それにしても、凄いな。
匂い、触感、味覚など五感をすべて感じる。
リアルと何ら変わりがない。
「ごちそうさま!」
すでに俺の母と父、姉と思われる人達はご飯を食べ終えており談笑していた。
その間、俺はとくに話すこともせず、会話を聞き少しでもと思い情報を集めていたが、分かったのは姉の名前がカリーナと言うことと、これから畑仕事をしなければならないということだけだった。
「食べ終わったなら、お父さんと畑仕事をしておいで」
「よし、行くか!」
父の後を追い家を出るとそこには何軒か家が建ち並んでいた。
どれも同じような家で、木で出来ておりそんなに大きくない。
どうやらここは、小さな村らしい。
俺は、農家の息子ってとこなのだろう。
RPGと設定したから多分モンスターとか出てくるんだろうが……
こんな小さな集落、モンスターに襲われたら終わりじゃないのか。
「バルトそっちから耕してくれ」
「はーい」
畑は家の裏にあり、だいたい縦、横15メートルぐらいの広さだ。
これが大きいのか小さいのかはよく分からないが。
今は、土作りの期間らしい。
太陽を見てみると高い位置にあることから、今が昼過ぎということが分かった。
ということはさっきのご飯は昼飯ってことになるな。
俺は鍬で耕していく。
そこで1つ気づいたことがある。
それは俺に結構力があるということだ。
畑仕事を手伝っているせいか、意外と筋肉がある。
「そろそろ終わるぞ」
薄暗くなってきた頃、父が近づきながらそういった。
畑仕事は大変だったけど、初めての体験ということもあり結構楽しかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夕食を食べ終わり、今は布団の中だ。
ランプに使う燃料は高いため、暗くなったら寝るというのが普通みたいだ。。
俺が畑仕事をしている間、母と姉のカリーナは洗濯や掃除、売るための織物などをしていたらしい。
俺は今後のことを考えていた。
どうやら、この世界の住人はNPCに間違いは無いのだろうが、今日見たとこ普通の人間と大差ないようだ。
事前に知っていたとはいえ、実際に目の当たりにすると感激する。
ゲームのNPCは決まったセリフしか言わないが、この村の人たちには感情があり色々なことを話していた。
例え俺が突拍子もないことを言おうと、きちんと反応し返してくれる。
改めてS2Rの凄さを感じたものだ。
そして、俺がRPGを選んだのはもちろん冒険がしたいからである。
しかし、このままここに居たんじゃ冒険なんか出来やしない。
この世界に冒険者という職業があるのかは分からないが、俺は冒険者になりたい。
とりあえずこの世界のモンスターと戦ってみたい……
どうすれば戦えるんだろう。
――よし、明日狩りに行きたいって言って、その時にモンスターを探してみよう!近くに森もあったし、多分そこで狩りをしているはずだ。家に一応狩りの道具とちょっと錆びれていたけど、剣もあったし大丈夫だろう。
そうと決まればさっさと寝よう。
今日の畑仕事で疲れていたのか目を閉じるとすぐに眠ることが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます