第2話.S2R
6月27日夜、明日はS2Rの発売日だ。
S2Rとは、ゲーム機にヘルメットのような装置を繋げ、そのヘルメットを被ることで、その世界に実際に入り込むことが出来るというものである。
S2Rのすごいところは、設定やイベントとかがすべてが作り上げられた世界に入り込むことができるだけでなく、世界観だけが設定されており、そこから先の物語は自分自身の行動で決まっていく、そういう世界にすることも出来ることにある。
これにより自分だけの物語を作っていくことが出来る。
そして、現実の世界よりS2Rの世界で生きていきたいという人のために、コールドスリープの技術を使い、冬眠状態にすることでS2Rの世界を現実の世界とすることも出来る。
しかし、コールドスリープの技術は完璧ではなく、その状態では約30年ほどしか生きられない。
だが、S2Rの世界は時間の早さが現実世界の3倍のスピードであるため、S2Rの世界で90年ぐらいは生きられる。
また、S2Rの世界で途中で死んだ場合も、その時点で現実の世界の脳が破壊されるようにするため、二次元と三次元の世界を完全に入れ替えることが出来るのである。
この機能のことを皆、゛転生〝と呼んだ。
結城はS2Rが発売日されるということを知った瞬間から、こちらの世界を棄てることを決めていた。
こんな世界に未練など何もない。
ジャンルは決めてある。
RPGだ。
それ以外はあり得ない。
18禁系のエロいのもあるが、RPGの世界でもエロいことはやろうと思えばやれるし、わざわざそっち方面に行く必要もない。
他にもホラーやら戦争やらいろいろあったが、RPGがゲームの中では好きというのと、実際に生活していくならRPGが一番いいだろうと思いRPGにした。
転生をするには、S2Rの本体であるヘルメットを買うだけでは出来ない。
S2R専用の店に行き、そこでベットのような装置に寝転がりS2Rを繋げ起動させることで転生することができる。
つまり、本体である体はその寝転がったベットに約30年間いるということだ。
「明日が楽しみだ」
結城は、明日に朝一で店に行くことを決め眠った。
――翌朝、結城は支度を整え、親宛に一応手紙を書き家を出た。
親には、転生することは伝えていない。
言ったら止められることは分かっていたからだ。
そうなると面倒だから言わずに出てきた。
親不孝だとか言われるかもしれないが、そんなのどうでもいい。
俺の人生だ。好きにさせてもらう。
しばらくすると、店がみえてきた。
一階建ての建物の店。そんなに大きくは無く、この一階部分にS2Rの機械があるとは思えないので、多分地下があるのだろう。
ウィーン
「いらっしゃいませ。」
自動ドアが開き、人型の女性ロボが出迎える。
ロボの声は機械的なものではなく、人の声だ。
店の中は一面真っ白で左隅にエレベーターがある他は何もない。少し異質な感じだ。
「転生しにきた。」
短く、それだけを伝える。
「かしこまりました。どうぞこちらへ。」
そう言われエレベーターまで案内され、そこにロボと一緒に乗り込み、ロボが地下一階のボタンを押した。
ロボはその間喋ることはなかった。
店のロボは大抵、接客プログラムがダウンロードされているので、何かしら話しかけてくることが多いのだが、このロボは接客プログラムがダウンロードされていないのか、無駄なことは一切話しかけてこなかった。
エレベーターのボタンを見ると、地下7階まであった。
地下一階につくと、そこは上の階よりもかなり広く、地下は広めに作ってあった。
そしてそこには、S2Rの機械のベットが約100個が5列に分かれて設置されていた。
ロボについて行くと、案内されたのはNo.5と書かれてあるS2Rだ。
No.1~4はすでに人が入っていた。
かなり早い時間に来たつもりだが、先客がすでに4人いたらしい。
この様子だと、多くの人が今の世界に見切りをつけ、S2Rの世界に行こうとしているのではないかと思われた。
「こちらのパネルから設定をしてください。」
ベットの形をしたS2Rの横にはパネルがあった。
その画面を見てみるとジャンル選択の画面が表示されていた。
俺はその中から、もちろんRPGを選んだ。
すると、細かな設定画面が出てきており、自分の身分――貴族にしたり王家の人間にしたりなどいろいろできたり、年齢や性別、職業など自分の見た目から、周りの環境までいろいろ設定出来るらしい。
しかし、細かく設定しすぎてもつまらないと思ったので、性別と年齢だけを設定し、あとはランダムにした。
ちなみに性別は男で年齢は14歳だ。
今の年齢は16だが、S2Rの世界になれるのも時間がかかるだろうし、小さい頃に基礎を身につけて置いた方が良いこともあるだろうも思い、少し年齢は下げて始めることにした
「設定が完了しましたらこちらに仰向けで寝てください」
結城は仰向けで寝転がった。
「では、S2Rを起動します。こちらの世界には帰ってこれませんがよろしいですか?」
「ああ」
最後の確認の問いに返事をする。
「それではS2Rの世界をお楽しみください」
その言葉を言い終わると同時にロボがS2Rを起動し、俺は意識を失った。
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