第8話 君が居ない日の教室
今日優愛には1人でバイトに行ってもらった。最近優愛と遊んでばかりで放課後に親友のしょうやまもっちゃんたちとは遊んでない。しょうやまもっちゃんは俺が優愛を大切にしていることを知っているからあまりしつこくは言ってこないけどたまにもっと俺らとも遊べと冗談半分に言われることがある。
最近言われる回数も増えてきたし今日は学校に残ってしょうやまもっちゃんと時間を過ごすことにした。
2人とも今教室には居ない。さっきまもっちゃんにはサラッと今日一緒に居れることを言ったから帰っちゃったってことは無いだろう。2人が教室に帰ってくるまでスマホを見てることにした。
Twitterを開いてタイムラインをざっと眺める。皆が日常を呟いてるのに、笑ったり驚いたりする。
『あ、今度新作で出るの、桜がテーマの紅茶なんだ・・・』
優愛、連れてって飲ませたら喜ぶかな?今度一緒のバイト休みの日っていつだっけな。
離れてても考えるのは優愛のこと。ぼーっと優愛の喜ぶ顔を思い浮かべた。
優愛と言えば。そろそろバイト先に着いた頃かな?生徒玄関前で別れてからだいたい15分くらい、そろそろバイト先に居ることだろう。
『優愛、バイト頑張れ~』
LINE、仕事の前にちらっと見て元気になってくれればいいと思って送ったけどすぐに既読がついた。
すぐに画面の向こう側で喜んでいることが簡単に想像できそうな返答が返ってくる。そこから優愛の時間が許す限りやりとりした。言葉のそこら中に優愛の感情が映し出されていて愛おしくなる。
しばらく話しているうちにあっという間に時間が過ぎた。
『そろそろ行かなきゃ。ありがと!』
『ん、頑張ってね~』
優愛を送り出してTwitterに戻ってくる。特に変わったこともなくてつまらない。学校のこと、最近のニュースに対しての意見、たまに企業アカウント。
学校の人たちなんかは同じ学校だからフォローしてみたけど顔と名前が一致してる人なんてごくわずか、フォロワーの中に本当は他校だけど俺たちと同じ学校を装っている人がもし居たとしてもきっと気づかないだろう。
教室のドアが開く。しょうとまもっちゃんがセットで帰ってきた。
「あれ?やまちゃんどうしたの?彼女ちゃんは?」
「あー、今日バイトだったから。俺休みだしたまには親友孝行も大切かなって」
「へー、じゃあお言葉に甘えて今日は最後まで俺らに付き合えよ?」
しょうとまもっちゃんと途中で抜けたりはしないで2人と遊ぶことを約束した。
「で?彼女ちゃんとはどうなの?」
「は?結局惚気で良いのかよ」
「おお。やっぱ気になる。野次馬根性だ!」
まもっちゃんが目を輝かせて俺に視線を向けてくる横でしょうも興味津々な様子で耳を傾けている。
「まあ・・・そこそこやってるよ。俺優愛のこと大好きだし、一緒に居てめっちゃ楽しい」
そう、優愛もたくさんの可愛い笑顔で俺に応えてくれるから凄く嬉しい。でも・・・なんか、引っかかる。
「ふとした時にあいつの態度が気になることは、あるかな・・・。上手く誤魔化されてその場は過ぎるんだけど。まあ、これは、きっと俺の自意識過剰だけどな」
そう言って俺は笑った。キスを嫌がられたり、この間だって頭撫でようとしたときに優愛は震えていたり。そんな記憶から俺は果たして優愛と付き合い続けたままで良いのだろうかと考える。優愛は俺に対して凄く気を遣う。俺の顔色をうかがってくるのがたまに垣間見える。それが辛かった。
「もしさ、好きじゃないんだったらもう俺はただ体力消耗させてるだけの面倒くさい男っていう立ち位置になるのだろうな」
「どっちから告白したの?」
「ん?俺だけど。俺が好きで告った。だから余計不安で」
俺が告ったときも頷くだけだった。今まで好きなんて1度も口にしてくれたことない。色々お互いのこと知りたいって言って俺んちで勉強した時に色々聞き出そうとしたこともあったけどはぐらかされちゃって結局ほとんど何も答えてくれなかった。
「落ち込んでんのか?」
「そりゃ、落ち込むだろ。俺は好きだもん」
「そんなに振り回されるなら彼女ちゃんに聞けば?」
「面と向かって聞くのか?ド直球に?」
「ダメ?」
「俺のこと嫌い?って?それは流石にまずくない?ってか無理だから」
嫌いって言われたら立ち直れない。直接聞く勇気が無い以上優愛が言い出さない限り信じるしか無いと思う。疑って別れるより、無理しても今は信じる道を選びたい。
しょうとまもっちゃんと話していると教室のドアが開いた。優愛の友達の高橋さん。隣のクラスの高橋さんが何の用だろう。
「どうしたの?」
「これ、明日配る配布物だって」
「へぇーありがとう」
プリントを教卓に置いてくれた高橋さんにお礼を言いながら、届けられた紙を覗いた。俺がプリントに目を通している間にしょうが口を開く。
「やまちゃんが彼女ちゃんとのことで悩んでるらしいんだけど何か知らない?」
「余計なこと言うなよ!」
「そうそう。好きか不安なんだって!」
「まもっちゃんまで・・・。高橋さん、気にしなくて良いから」
この話は終わりにしようと俺はしたけど高橋さんが食いついてきて離さない。
「あー、分かったよ。話せば良いんだろ?優愛、たまにちょっと様子がおかしいんだ。怯えてるような感じだったり、遠慮がちだったり。あとは、距離置かれたと思いきや家に招待すると帰りたくないって言われたり。・・・高橋さん、何か知らない?」
「特には・・・」
「そう・・・知らなきゃいいんだ。ありがと」
「今度探ってみる!」
「別に良いよ、俺と優愛のことだし」
もう遅いかもしれないけどこれ以上首をつっこまれたくなくて一刻も早くという一心で高橋さんを教室から追い出した。
高橋さんが教室の前から去ったことを確認して教室のドアを閉めた。
「しょう、まもっちゃんも!余計なこと言うな!」
ドアを閉めて振り返って開口一番俺はしょうとまもっちゃんにクレームを言った。
「だって俺らより高橋さんの方が確実に彼女ちゃんに近いし、良い相談相手になると思って」
「そうそう。やまちゃんはなんでそんな嫌がるの?」
「いや・・・自分でもよく分かんないけど、なんかやだ。教えたらやばい気がした・・・みたいな?」
「よく分かんねー奴!」
しょうとまもっちゃんに笑われながら話題は次へと移っていく。
そのうち3人で教室に居ることにも飽きてきた。
「なんかのども渇いたしどっか行かない?」
「どっかって?」
「あそこの喫茶店とか?」
学校近くの喫茶店。放課後生徒のたまり場になる場所の1つだ。行くと決まって1番最初にまもっちゃんが飛び出す。俺としょうも後からまもっちゃんを追いかけるように教室を出た。
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