不自然なまでに美しかった
小さい頃は箱庭で育てられた。見渡す景色は偽物で、不自然なまでに美しかった。そしてそんな世界を本物だと洗脳されていた。だから私が箱庭を出たとき、絶望を知るのは必然だった。
親を恨んでいるわけではない。もしも私に子ができたなら、同じように箱庭に閉じ込めるだろう。それくらい現実というのは残酷で、汚いものだと知った。
そして汚いものは世界の公理系ではなく人間だった。
人は殺し合いをしていた。苦悩は簡単に人を殺した。自分の幸せのために平気で他人を不幸にする人がたくさんいた。他人を蔑むことは楽しいことだった。平等は虚像にすぎなかった。正義はあまりに無力だった。
そして、私もそんな汚い世界を構成する一人だった。
愛だの正義だのと箱庭の摂理を唱えて自分をごまかし続けることもできただろう。けれどそれは信仰であり盲信だ。いくら声高に主張したって真実になり得ない。偶像はいらない。神の時代はとうに終わったのだから。
こんな世界にいたいとは思わない。けれど箱庭にはもう戻れない。
だから私は、
死にたい。
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