あまりにも不愉快な

 羞恥の記憶がよく響く。このあまりにも不愉快な残響を、みんなは苺の味と形容するらしい。不思議なことに私のは腐った牛乳の味がする。どうしてだろう。

 目を覆い、耳を塞いで、嗚咽おえつを噛み締め、嚥下えんげする。それでも残響は止むことを知らず、見たく無いものを見せ、聞きたくない声を聞かせ、私の心をめちゃくちゃにする。

 意味にほだされ手足は縛られ、頭の中は真っ白になる。その場にうずくまって、ただひたすら胸を奥の痛みに耐える。

 不愉快な思い出たちは共鳴する。一度開いたパンドラの匣を閉めるには、それなりに時間がかかる。次から次へと匣から飛び出してくる悪夢は、容赦無く私の平常心を壊してゆく。そうして好きなだけ暴れて、隙間なく聖域を黒に染め上げたら、満足して匣の中に帰ってゆく。

 ああ、もう。最悪な気分だ。

 スマホを取り出して文字を打ち込む。

 死にたい。

 でも、もしもこの、あまりにも不愉快な思い出たちが何か大切な意味を持っているとしたら、この悪夢の暴走が私を強くしてくれるなら、私はどんなに救われただろうか。

 そんなことを考えてしまうくらいには、この世界に期待しているのかも。

 けどやっぱ、さっさと崩壊してしまえ。

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