第16話

☆☆☆


 夕食を済ませた後、僕たちは寝床を探していた。

 もうすぐ太陽は沈んでしまうので、今から高速道路に戻るのは難しい。だからといって、その辺で寝るわけにもいかない。地上にはいろいろな動物が暮らしていて、中には危険な動物もいるのだ。

 一応、肉食動物が嫌う周波数の音を出す装置なども持ってはいるが絶対という保証はない。

 だから僕たちは久しぶりに家の中で寝ることにした。

 選んだのはとても大きく頑丈そうな一軒家。鍵はかかってはいなかった。心がつながって以来、わざわざ鍵をかけるような家はほとんどない。ここもそんな家の一つだった。

「ベッドの上もほこりがいっぱい」

 寝室に入ったナリアが言う。

 比較的綺麗だった外装と異なって家の中は汚れていた。動物たちに荒らされたりしたわけではなく、とにかくほこりがすごい。

 寝室もこの有様。

 ドアの開閉だけで大量のほこりが舞っているし、ナリアが言うようにベッドの上も何もかもほこりがこんもりと積もっていて真っ白だ。

 僕がどうしたものかと考えていると、ナリアは急に走り出して勢いよくベッドの上にダイブした。

 ナリアがベッドの上に着地した瞬間、大量のほこりが舞い上がる。そしてベッドのスプリングがナリアを跳ね上げると、ほこりはさらに量を増して四散した。

 それに驚いたかーくんがカーカーと鳴き声を上げながら翼をバタバタさせて暴れる。その結果、さらに舞い上がるほこり。

 寝室は一瞬のうちに混沌と化してしまった。

 とりあえず僕は部屋の外に脱出する。

 すぐにナリアもごほごほとむせながら出てきた。かーくんもそれに続いて出てくる。

 さて……考える。

 とにかく家の中は、どこもかしこもほこりがすごい。もう山盛りだ。正直、いつも寝ている高速道路のほうがずっと綺麗だと思う。

 それでももうすぐ日が落ちてしまうので、今日はここで寝るしかない。

「掃除をしよっか」

「うん」

 ナリアは僕の提案に元気よく返事を返してくれた。

 しかしそうは言ったものの、掃除用具がない。こんな広い家だから、家主がいたころは全自動の掃除用ロボットを使っていたはずだ。探したところでほうきは出てこないだろう。

 だから僕らは持っていた厚めの手袋をしてほこりを集めることにした。

 ナリアは雑巾がけでもするみたいにして床のほこりを集めている。僕はベッドの上のほこりを集めた後、叩いて綺麗にする。かーくん邪魔なのでナリアのリュックの中だ。

 そんなふうに掃除を頑張ること三十分くらい。とりあえず寝られるくらいには綺麗になった。

 太陽もこの三十分で沈んでしまったので、寝ることにしたいのだが一つだけ問題があった。

 僕は鳥がどうやって寝るのかを知らない。

 そもそもカラスは夜寝るのだろうか? 夜行性だったりするのかもしれない。それすらも僕にはわからない。

 それでも夕飯の後確認してみた様子だと、かーくんに怪我はなかったので、そこだけは安心だ。

「シン」

 そんなことを考えていると、先にベッドで横になっていたナリアに袖を引っ張られた。

「かーくん、寝た」

 言われて、見てみると……ナリアの枕の横でかーくんが仰向けになって動かなくなっている。

 暗くてよくわからないので、直接懐中電灯の光を当ててみるがピクリとも動かない。

 本当に寝ているみたいだ。

 問題はいつの間にか解決していた。

「じゃあ、僕らももう寝よう」

 僕もベッドに入って横になる。

「うん。眠い。シン、おやすみなさい」

 そう言ってナリアは目を閉じる。

「おやすみ」

 天井に向けて立てていた懐中電灯をそっと消してから、僕も眠りについた。

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