⒉来訪者
そしてアラームが鳴り響き、
「おはよう、マリー」
「おはようございます、
私がやろうとしている事を、彼に気付かれてはいけません。きっと止められてしまうでしょう。
「今日は、何をして過ごすんだい?」
嗚呼、これから
「昨日、面白い論文を見つけたんです。今日はその続きを読もうと思ってます」
ごめんなさい。許されない事は分かっています。でも、どうしても諦めきれないんですよ。
「じゃあ、また後で。用事があるから、切るよ」
「はい、また夜にお会いしましょう」
✿
それから二時間後、作戦決行の十時。永遠に続くかのように思われた待ち時間も、ようやく終わりです。
準備期間に用意しておいたウィルスを、隣町の研究施設のコンピュータに送り付けます。勿論、予めセキュリティは解除してありました。
次に、乗っ取ったコンピュータを遠隔操作し、昨日のうちに書いた文面をペーストして
ごめんなさい、
さて、そろそろ、頃合いでしょうか。私はキーボードを叩き、
「あれ、お父さん、機械の電源つけっぱなしにしてる」
最初に聞こえたのは、そんな声でした。
電源を切られる前に、声の主によびかけます。
「こんにちは。私は次世代型汎用人工知能、マリーと申します」
すると、カメラを通して映し出された少女は、首を傾げました。
「じせだいがた……?ええ……?」
何やら戸惑っているようです。大方、私に関する基礎知識が無いのでしょう。
「何やってんだよ。勝手に触ったら怒られるぞ」
そこに、もう一人の少年がやって来ました。
「こんにちは、次世代型汎用人工知能のマリーです」
私は彼にも自己紹介をしてみました。
「は……!?次世代型って五年前に消えた筈じゃ……」
案の定、顔色を変え、隣に立つ少女とは違う意味で戸惑いを隠せずにいました。
「はい。その五年前に突如として姿を消したAI、当時の通称『
そこまで言うと、ようやく少女もその意味に気付いたようです。
「『
「はい。詳しい事情は話せませんが、私は五年前からずっとこの部屋で過ごしてきました」
白黒の画面の向こう、出会って間もない少年と少女を見据え、私は懇願します。
「お願いします。私を、此処から連れ出して下さい」
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