第6話:裁判開始!……そして終了。

【sideカズマ】


このガッカリファンタジーな世界に転生し、新しい人生を歩み出して早数ヵ月……その新しい人生は弁解の余地の無いほどのクソゲーだということを、骨の髄まで嫌と言うほど痛感させられた。

初っ端から俺の初期能力は取り柄らしい取り柄もないと言われ、集まった仲間はどいつもこいつも性能や性格に問題のある色物ばかり。まだレベリングの段階で魔王軍の幹部が攻めてきて、しかもそいつから街を守ったら多額の借金を押し付けられ、借金を返すため身を粉にして働けば首を切り落とされ、しまいには明らかにラスボスより強そうな機動要塞の襲来、そしてそいつから再び街を守ったというのに国家転覆罪の容疑をかけられる始末……


お か し い だ ろ


なんなんだこの理不尽な不幸コンボは!?良かれと思ってした行動の全てが、ことごとく状況が悪化していくじゃねぇか!?こんなやるせなさと無力感しか生まない鬼畜ゲー誰が買うんだよ!?

で、実はガチでヤのつく自由業の人だったらしいみんちゃすを、腕を切り落とそうとしてまでダクネスが引き下がらせた後、なんやかんやで俺は牢屋に連行され拘留。そこで行われた、嘘をつくとチンチン鳴る魔道具を用いた尋問で、あと一歩のところで容疑を張らせたものの魔王軍の幹部(リッチーのウィズ)との交流がばれて、結局裁判が行われることに……こんな些細なことも裏目にでるのか。アクア達は俺を助けようと色々頑張ってくれたようだが……うん、申し訳ないけどあんまり期待してなかったし、実際期待しなくてよかった。

そんなこんなで始まった俺の不当な裁判も、やはりというか例に漏れず……


「……被告人、サトウカズマ。あなたの行ってきた度重なる非人道的な問題行動、及び街の治安を著しく乱してきた反社会的行為などを鑑みるに、検察官の訴えは妥当と判断。被告人は有罪、よって判決は……私刑とする」


理不尽な結末で締め括られた。

…………いやいやいや(笑)


「おかしいだろおおおおおおお!何だこのいい加減な裁判!?もっとこう、確定的な証拠を持ってこいよ!そんなんで死刑とか、お前ら全員頭沸いてんのか!?人の命を軽く考えやがって、殺すぞコノヤロー!」

だいたいなんだよ非人道的な問題行動や反社会行為って!?ちょっと女性のパンツ剥いたり魔剣を剥ぎ取って売り捌いただけじゃねぇか!……いやまあ、セーフかアウトかって言われたら限りなくアウトに近いアウトだけども!だからって死刑とかあんまりだろ!?

「被告人!被告人はもっと言葉を慎むように!」

「こんなフワーッとした流れで死刑宣告されて慎めるわけねぇだろ!?」

というか検察も裁判長も適当過ぎる!さっきまで証拠不十分だとか死刑を求刑するほどではないとか言ってたじゃねぇか!司法の番人がそんなコロコロ言うこと変えんなよ!?

「よろしい、それほどカズマをテロリスト呼ばわりすると言うのなら。この私が本当のテロリストとはどういうものなのかを……あ、何をする!離してください!」

紅の瞳を輝かせながら物騒なことを言うめぐみんを、警備兵達が慌てて取り押さえる。

「ねえやっぱり絶対おかしいわ!私の曇りなき眼には、裁判所内に漂う邪悪な空気がしっかりと見えるんですけど!待っててね、今私がこの空気を浄化して……あっ!別におかしな魔法を使うんじゃないんだから、邪魔しないでよ!」

「裁判所内では、いかなる魔法も使用を禁止されています!でなければ嘘を見抜く魔道具におかしな干渉ができてしまいますから!」

「ええい、その二人を別室に連れて行け!」

検察官のセナもめぐみんとアクアをどこかに連れ出すよう指示を出す。……というか自信満々に弁護人に立候補したくせに、結局こいつら終始事態を悪化させることしかしてねえよ!ダクネスとみんちゃすは何故かずっと無言だしマジでもう詰んでね俺!?

「……おいそこのポンコツ女。このまま何も手を打たねーで静観するつもりなら、いい加減俺は動くぞコラ」

「……わかっている」

と、アクアとめぐみんが連れ出された直後、終止無言だったみんちゃすがドスの効いた声色でそう呟くと、ダクネスは目を伏せて頷いてから立ち上がり…

「……裁判長。これを」

胸元からいかにも高価そうな材質の、紋章みたいなものが付いたペンダントを取り出した。

「そ、それは……!あ、あなたは……」

驚きで立ち上がった裁判長が、目を見開いてペンダントを見る。

「申し訳ないがこの裁判、しばらくの間私に預からせてはもらえないか?この男の無実を証明し、アルダープ、あなたの屋敷も弁償させよう」

セナと裁判長はダクネスが見せる紋章を凝視したまま固まっているが、領主だけは幾分怯みながらも抗議する。

「し、しかしいくらあなたの頼みでも-」


「まあ良いではないかアレクセイよ。屋敷を壊され憤る卿の気持ちはわかるが、この場は彼女の顔を立てる度量を見せたまえ」


しかしそんな領主の抗議は、突然裁判所内に入ってきた老人によって遮られた。

白髪の混った癖のある金髪の、糸のように細い目をした高齢の男だ。傍らに護衛らしき騎士っぽい服装をした、無条件でムカつくイケメン野郎を連れていることから、多分それなりに偉い立場の人間だろう。

それを裏付けるかのようにその場の俺以外の全員……本来なら裁判中の乱入者をつまみ出すのが仕事の兵士達は、つい先程のダクネスのときよりも驚愕した表情のまま固まって動かない。 

「バルター!?それに、ゾ……ゾディアック卿……!?」

「宰相殿……!?な、何故ここに……!」

領主やダクネスも例外ではなく目を見開いている。

「っ……!?」

そしてそれはあのみんちゃすですら例外ではなく、目を見開いて老人の方を凝視していた。

周りから注目されていることなど気にも留めず、宰相とやらは朗らかに笑う。

「何、大した理由は無い。偶々この付近を立ち寄ったら、裁判所が随分騒がしかったので気になって立ち寄ってみたら、思いがけない人物が被告の少年の無罪を証明すると啖呵を切っていたのでね、少し興味が湧いただけさ。……さてアレクセイ、ここは彼女の面子を立ててはどうかね?そうすれば、彼女は君に借りを作ることになるだろう。卿にとっても悪い話ではあるまい?」

「……宰相殿の言う通り、私に預からせてくれるのならば、私にできることなら何でも一つ、言うことを聞こう。訴えを取り下げてくれと言う訳ではない。ただ、待って欲しい」

宰相の言葉に同意してダクネスがそう告げると、領主はゴクリと唾を飲み込み、目をギラつかせてダクネスの体を舐めるように見回した。宰相の隣にいるイケメン君が何故か呆れたように溜め息をついている。

「……いいでしょう。他ならぬあなたの頼みだ、その男に猶予を与えましょう」




裁判も終わり、俺はみんちゃすとダクネスを連れて勾留された二人を引き取りに行く。

「何か、色々釈然としない裁判だったな。……ていうかダクネス、あのアルダープっておっさんと知り合いだったのか?」

「……まあな。私がまだ子供の頃から、何度断ってもしつこく婚姻を申し込んでくるような男だ」

「真性のロリコンじゃねーか。……いやまてよ、さっきの反応からしてまだオメーに執着してるみてーだし、単に守備範囲が広いだけか?」

そこは別に考察しなくてもいい。……って、

「お前、そんな奴に何でも言うこと聞くなんて言っちゃって大丈夫なのか?凄いこと要求されたりしたら……」

「…………。す、凄いこと……」

「……俺の心配を返せ」

顔を火照らせてくねくねし始めた変態にジト目を向ける俺をよそに、みんちゃすはつまらなそうに鼻を鳴らす。

「つーかよ、この俺を引き下がらせておいて用いた手段が安易な自己犠牲とは、随分とお粗末じゃねーかああん?」

「返す言葉も無いな。……お前の言う通り、私がアステリア様のようになりたいなどと、口に出すのも烏滸がましいのかもしれん。だが、私にはああするしか方法は無かった。それに身を呈して仲間を守ることすらできんようでは、アステリア様云々以前に騎士として失格だ。……そうだろう?みんちゃす」

「……チッ、わかった風なことほざいてんじゃねーよが」

相変わらず辛辣な物言いだが、ダクネスはほんの少しばかり認められたらしい。現に、冬将軍のとき以来みんちゃすはダクネスのことを騎士と呼んだことは一度も無かったしな。

「それにしても、あの二人はいったい何だったんだ?特に爺さんの方は宰相とかって呼ばれてたけど、偉い人なのか?」

俺がそう訪ねると、ダクネスは呆れたように溜め息をつきジト目を向けてくる。

「偉いに決まっているだろう。あの方はゾディアック・リベリア・オリベイラ卿。ダスティネス家、シンフォニア家に並ぶ三大公爵家の当主にして、我が国の政務全般を担っておられる御方だ」

「ついでに側にいた優男はアレクセイ・アーネス・バルター。末端の第七席とはいえ、若くしてロイヤルナイツに抜擢された天才騎士様だ」

ふーん、要するに俺らの世界でいう総理大臣みたいな者か。それにロイヤルナイツ、か。以前テイラー達とパーティーを組んだときあったヤンキーみたい騎士も所属している団体だっけか。正直あまり良いイメージがないけど、多分あのイケメン野郎も凄腕の騎士なんだろう……アレクセイ・アーネス?あの領主もそんな名前だったような……まあ気のせいだろう。

「けど、なんでまたそんな大物が俺達の肩を持つんだよ?」

「ふむ……やはりベルディア討伐やデストロイヤー破壊に大きく貢献したお前を処刑するのは、宰相殿にとっても不本意だったのではないか?」

「んなわけねーだろバカが。大方あの狸爺のことだ、俺の策を見抜いて安牌を切ったんだろうよ」

「……は?いったいどういうことだ?」

何故か苦虫を噛み潰した表情のみんちゃすにダクネスが訪ねる。ちなみに俺もダクネス同様さっぱりわからん。 

「今だからぶっちゃけるが、さっこまでこの裁判所周辺に月代組六鬼衆のほぼフルメンバーを待機させていた。そしてもしあのままカズマ、オメーが死刑になるようだったら俺の合図ですぐさま突入、領主も検察も裁判長も皆殺しにしてオメーを救出するつもりだったんだなこれが」

「「ぶっ!?」」

さらっとぶっちゃけたみんちゃすのあまりにも物騒な内容に、俺もダクネスも思わず吹き出してしまう。

「待て待て待て待て!なんだそのアウトレイジ極まりない解決法!?お前裁判中うんともすんとも言わないと思ってたけど、そんなおっそろしい計画立ててたのかよ!?」

「まったくだ!お前本気で国家に牙を剥くつもりか!?」

「たりめーだろ、仲間が国家転覆罪で処刑されようってんだ。だったら毒を食らわば皿まで、本当に国家をひっくり返してやろうじゃねーか。具体的にはオメーら四人をテレポートでクリアカンへ送ってから『六鬼衆』全員で王都へ潜入、国の要人や王族らを容赦なくぶち殺-」

「わかったもういいもう黙れ!誰かに聞かれたら冗談抜きでマズい!」

これまでもやたらと暴力的な奴だったけど、ヤクザであることをカミングアウトしてから輪をかけて物騒にらなったなこいつ……。

「……が、そんな俺らの作戦を読んでいたであろうあの爺に、作戦を決行しなくていい落とし所まで誘導されたって訳だ。宰相って立場からしたら独立都市なんて存在は邪魔でしかないんだろうが、魔王軍と戦争中の今は俺達と殺り合ってる余裕なんざねーだろうからな」

いまいち要領を得ないが話をまとめると、あのオリベイラって人はみんちゃす達と敵対してるけど、みんちゃす達と戦う余裕なんてないから、俺を庇い立てることで内戦を回避したってことか。

と、俺が脳内で情報を整理していると、後ろからパチパチと拍手をする音が聴こえてきた。振り向くと、まさにそのオリベイラその人がにこやかな笑みを浮かべながらこちらに歩いてくる。さっきまで側にいたバルターって騎士はいないようだ。

「素晴らしい。私の思惑をそこまで詳細に理解するとは、その若さで見事な思慮深さだ。……サイガ殿も良い部下に恵まれたものだね」

その言葉にみんちゃすは、眉間に深く皺を刻ませながらオリベイラを睨みつける。

「俺達は上司と部下なんて薄っぺらい関係じゃねーんだよ。知ったような口きくんじゃねーよクソ狸爺が」

「ぶ、無礼が過ぎるぞみんちゃす!?申し訳ありません宰相殿、この子は少々世間知らずなもので-」

友好度0パーセントなみんちゃすの不遜な態度を、本人に代わって謝罪するダクネスだったが、オリベイラは笑みを消すことなくそれを手で制す。

「何、別に構わんよ。彼の立場上貴族のトップにあたる私に、へりくだる訳にはいかないだろうしね」

「……宰相は、彼がどのような団体に所属しているのか、ご存じなのですか?」

「知っていなければ激務の中わざわざ足を運んだりはせんよ。……仲間の危機に『月代組』がどのような行動に出るか、これまでの経験で嫌というほど知っている。回避できるならそれに越したことはないさ」

口調こそ友好的だが、セリフの端々から黒い気配を滲ませている。……政務全般を担っているというだけあって、ただの好好爺では断じて無さそうだ。

「……つーか随分と不用心だな。立場上うちと敵対関係にある以前に、先代六鬼衆と色々因縁深いテメーが護衛もつけずに、現六鬼衆である俺の前にノコノコやってくるなんざ、殺してくれっつってるようなもんだぜ?」

そう言ってとんでもない殺気を周囲に振り撒くみんちゃす。

「おいみんちゃす!いい加減に-」

「ふむ……そのセリフ、そっくりそのまま卿に返そうじゃないか。よもや……」

オリベイラはまたもダクネスのセリフを遮りつつその、糸のように細かった目を開き、




「今ここで私が卿を手にかけようとする可能性を、微塵も考えなかったのかね?」

「「「っ……!?」」」


相変わらず朗らかに笑いながら、みんちゃすのそれを凌駕する殺気を放ってきた。直接殺気をぶつけられた訳でもないのに、その猛禽類のような眼光を直視した俺は、指一本たりとも動かせなくなった。

や、ヤバい……この心臓を握りつぶされるかのような威圧感、この間のサリナスって奴よりずっとヤバい……。

それを受けたみんちゃすは即座に拳を構え、臨戦態勢に移行した。が、オリベイラはすぐに殺気を引っ込めて踵を返す。

「……ふむ。かなりの実力を持っているようだがやはりまだまだ未熟、戦闘体勢への移行が幾分か遅い。今の卿ならばそうだな、若輩のバルター君辺りでは荷が重いだろうが……私にとってはさほど脅威ではなさそうだ」

「……っ!」

明らかな挑発にみんちゃすは視線だけで人を殺せるような形相で歯軋りするが、それでも言い返さない様子からどうやら事実らしい。

「ふふふ……いずれまた会おう。二代目『修羅』、みんちゃす殿」





オリベイラの姿が見えなくなると同時、緊張が解けた俺は腰を抜かしてその場にへたりこんだ。

「いや怖すぎだろあの爺さん……なんであんな人の良さそうな笑みを浮かべながら殺気振り撒けるんだよ」

「うむ、実にすさまじい殺気だった。……んっ……思い返すだけで全身がゾクゾクする」

勝手にくねくねと悶えている変態は放っておくとして……。 

「チッ……心底ムカつくが、今の俺じゃまだ勝ち目はねーみてーだなクソが」

不機嫌極まりないみんちゃすが、忌々しそうにそう吐き捨てる。

「あのオリベイラって人、やっぱり相当強いのか?」

「あー?……強いに決まってんだろうが。あの爺は今でこそ宰相なんざやってるが、昔はバリバリの武闘派だったんだよ。なんせロイヤルナイツ創設者にして元第一席、それに加えかつてサイガの親分と、最強の剣士の座を争った程の凄腕騎士だ」

どうやらこの世界にシビリアンコントロールの概念は存在しないらしい。

「……かつて月代組と国との戦いでは、先代六鬼衆の内二人も奴に葬られている。組にとっては不倶戴天の仇敵だ。俺が生まれてもない頃の話だから個人的な恨みはねーが、立場上到底仲良くはできそうにねーな」






【sideアルダープ】


裁判終了後、ワシはゾディアック家の屋敷へと赴いていた。

「ふふふ、しかし此度は災難だったなアレクセイよ。突然屋敷を吹き飛ばされ、犯人らしき少年の仲間が……よりにもよって月代組の幹部とは。エリス様はよほど卿のことがお嫌いらしい」

ゾディアックは相変わらず朗らかに笑いっているが、告げられた最悪の情報にワシは気が気で無かった。

月代組!? 

あの国家にも喧嘩を売る、芯からイカれた最悪の無法者集団……そんな奴等が、どうしてあんな小僧と繋がりがあるんだ!?

マズイ……マズ過ぎる……。

奴等は金や権力を用いて法の網を掻い潜ってきた、所謂悪徳貴族を幾人も秘密裏に葬ってきたと聞く。これまでは地理の関係でアクセルとクリアカンの関わりがほぼ無かったことから上手くやり過ごしてきたが、今回の裁判で目を付けられたかもしれん……。

そんなワシの不安を察したのか、ゾディアック卿は手でワシを制する。

「まあ落ち着きたまえよ。そう不安に思わずとも、既に根回しは済んである」

「……?根回し、と言うと?」

「卿を粛清対象に入れないようツキシロに伝えてある。でなければ卿は既にこの世におらんよ。上手く隠せていると思っているようだが、幹部の一人が拠点にしている街の情報を、あの男が調べない訳があるまい」

「……は?」

頭の中が真っ白になりそうになった。

確か月代組とこの方は不倶戴天の敵同士ではなかったか?それに……

「……解せませんな。貴族のトップである貴方の言うことを、あの王候貴族嫌いの連中が素直に聞くとは思えません」

「確かにそうだな。それに奴等にとって私は、生かしておく理由が全く無い存在だろう。しかし理想と綺麗事だけでは世の中は罷り通らん。……私もツキシロも長く生きているだけあって、そのことを十二分に理解しているだけの話だ。宰相たる私としても、国を腐敗させるだけの悪徳貴族など害でしかない。しかし腐っても貴族は貴族、正攻法で取り除くのは実に困難でな。……さてアレクセイよ、あの連中が非合法な手段で粛清していることが、どうして問題にならないと思う?」

…………恐ろしい御方だ。この方は何があっても敵に回さないと、ワシは心の内で固く誓った。

「……ところで話を戻すがアレクセイよ、あまりダスティネス嬢に無理難題を押し付けてくれるなよ?彼女もどうやら例の月代組幹部と懇意らしい。月代組を刺激し過ぎれば、私も卿を庇いきれんぞ。……卿の切り札も、流石にあの連中に対抗できるとは思えん」

「ええ、承知しています。今回の件の対価には、私の義理の息子との見合いを設けるとダスティネス卿に持ちかけようと考えておりますので」

「ふむ?バルター君を……。……なるほど、そう言えば卿はあれも所持していたな。そのような回りくどい手を使う辺り、よほどご執心らしいな。やれやれ、またロイヤルナイツの席が空くようだな」

…………マクスについても筒抜けなことといい、つくづく恐ろしい御方だ。


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