橋の繋ぎ屋
大荷物のバッグを振ってぶん殴ってやる。当たったら絶対に気持ちが良いだろう。正解の無い問題をぶっ壊せるんだ。大丈夫だ。過去に精神的に荒れたときお腹を蹴ったことがあるが三秒ほど怯んだ。物理的な衝撃なんだから当然だ。
実は過去に家から走り出たことがある。親が追いかけてきたのだが、隠れて親が探している内に家に戻り、鍵を閉めた。
やってやる。絶対にここ(精神地獄)から出てやる。
両腕に力をいれた瞬間、インターホンが鳴った。その瞬間僕は無意識に心の中にある言葉が現れた。
ー助けてー
「出るから退いて。」
これはこれで都合が良かったのかもしれない。母も無言でついてくる。
「はーい。」
[阿部です。秀秋くん迎えに来たよ。]
彼は僕の声だと分かったようだ。
「今いくよ。」
さすがに向こうが呼び出したので母は制止できなかった。僕は偶然でありながらも阿部さんに感謝してしまった。
扉を開けて阿部さんの下へ歩んでいく。その時の母は隙間から阿部さんを見ようとするだけだった。すぐに扉は閉じられたわけだが。
(釣りの時もこの前の一泊の時も止めなかったのに。)
「じゃあ行こうか。ひでが好きになれる所を色々探したんだ。」
(どうりで目の下にクマが…嬉しいな。ここまでしてくれるなんて。)
内心心配した。嫌いじゃないけど、倒れてものごとが次へ次へと崩れていかないか心配だ。
「うん。ありがとう。でも、無理しないでね。」
そう言うと、僕は助手席に乗って彼が運転席に乗るのを待った。すぐに彼は乗って来るのだが、どこへ行くのだろうか…。
「よろしくね。」
「うん。俺の運転技術また見せてあげるよ。」
「はは。張り切りすぎないようにね。最初はどこへ行くの?」
「お菓子を詰め込んで重さで値段が決まる場所!それから林くんのパーカーを買いに行って…」
僕は好きなことも趣味もないが、僕が気に入りそうなものを選んでいる。あまりの人間観察力に参ってしまう…。
「こんなに計画立ててくれたんだ…。本当に嬉しい。ありがとう。」
「でも一人ではしゃいで作ってしまって恥ずかしいな…」
彼は左手でハンドルを握り、右手で頬を掻く。最初に出会ったときは落ち着いていて、澄ました顔だったのに。今では照れ顔を見せる。顔色が変わったのは僕もかな。
「良いんじゃない…?僕も…色々考えてたし…。」
その言葉を聞いて彼は嬉しさのあまりまだ喉元でつっかえている表現し切れていない嬉しさを全部押し出した。
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