本当の羊の夢

「林くん、彼のことが好きなんだ。良かった。それじゃあもう僕は関係ないね。」


 奥から聞こえてくる声は初恋の相手、小川祐二だった。


「あっ…あ…」


 僕は過去のできごとと相まって恐怖を感じた。この場にいることがとにかく恐ろしい。


「林くんに好きな人ができて良かったよ。それじゃ。」


「ま…待って…」


「え?待つ必要なくない?」


 ただ僕は苦しみ、小川さんは去っていった…。すると、身体全身が黒い煙に囲まれて身動きが取れなくなった。


「はっ!!…はぁ…はぁ…」


 突然の息切れと共に目が覚めた。あれは夢だったんだと。全身汗まみれで部屋も蒸し暑かったのですぐに重たい布団を投げ飛ばした。冬と春の中間なのでこうなるのも仕方ないが、小川さんが夢に出てくるのは勘弁して欲しい。

 阿部さんとお付き合いすることで、僕は小川さんを捨てるという事になるのかな。うつ向いて考えた。


[通知:阿部さん:次いつ来れる?]


 今返信すべきだろうか。向こうはすぐ返信が欲しいんだろうけど、こっちにも独特な話が…。

 仕方ない。こんなことで小川さんを忘れられるとは元々思っていない。一生背負いながら生きていくんだし、阿部さんにはあまり重く感じられないように自分なりに努力しよう。

 ん?これって付き合えてるのかな…。隠し事をして、一人で勝手に苦しんでるのは…。

 考えてみれば前よりは楽で、カウンセリングもいらないと思えるくらいにはなったけど。


ー自分から話すと重く感じられるよねー


 向こうが聞いてきたら、全部話そう。


林「僕は特に暇だけど…。まだ高2だし。」


阿部「分かった。学校行くの嫌なら俺の家にいつでも来ていいから。」


(いや合鍵貰ってないし…)


 彼の好きという感情が前へ前へと進んでいることがよく分かる。それが少し可愛いと思ってしまった。


林「うん。ありがとう。明後日の土曜から日曜でどう?月曜は学校に課題だけ持っていくんだ。あと、次は着替えも持ってくるし!」


 めちゃくちゃな文章だが伝わっただろう。


阿部「よし!決まり!家まで迎えに行くから土曜日に待ってて!」


 僕は了解のスタンプを送信してトークを終了した。

 汗をシャワーで洗い流し、いつも通りパーカーを着る。僕はパーカーが大好きで下腹部の繋がったポケットには財布でもスマホでも何でも入り、フードは使わないが何故か自分は守られているような感覚がする。とても安心できる良い服なんだ。

 阿部さんは背が高いし、清楚で男前な人だから似合わないかも。あ、でも着こなすかも。

 僕は頭の中で阿部さんで遊んだ。タンクトップは似合うかな?でも一番似合うのはスーツだけど。

 シャワー浴びた後の形を降ろした髪型も綺麗だったな。僕少し癖が強いから羨ましい。

 寝ている間に悪夢を見て、起きている間に瑞夢を見る。

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