第5話 2日目5レースA級準決勝

 同県の先輩とともに、5レースに番組は組まれた。

 師匠は7レースのA級準決勝で、また6号車だ。

 僕も当然ながら6号車だ。言うまでもないだろう。


 選手紹介のときに野次が飛んできたのが聞こえた。


「メロン、今日も大穴頼むぞ!」


 そう、僕に名前なんて、必要ないのだ。

 昨日もメロンで今日もメロン。

 お客様からしたら、大穴を持ってくるためだけに存在する、昨日2着だったメロンが、僕なんだ。


 くそったれ。

 僕にだって少しは意地があるんだ。

 そんな風に言われたら、せめて名前で呼んでほしい、そう思うじゃないか。


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 今日は同県の先輩の番手を回ることになっていた。僕は先行逃げ切りに不安があるから、付いて来いと言われたのだ。美味しいところは持って行っていいから、思いっきり付いてきて、後ろを捌いて、そのうえで1着を取れ、先輩はそう言っていた。


 僕は夢中で先輩の後ろを追いながら、後ろから来る他の選手をブロックして捌いた。落車させて失格になるようなことがあると困るので、僕は初めての番手の仕事を丁寧にこなした、と思いたい。


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「決定! 1着、6番」


 2着3着がどうなったかなど、まるで覚えていなかった。ものすごい声援に包まれて、わけがわからないまま走って、捌いて、ゴールした。1着だった確信もなかった。だが、審判が「1着、6番」と言ったのだけははっきりと聞こえた。

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