第4話 A級初日予選1レース
初日予選なのだ。特選に行けるようなら、こんな色の服は着ていない。
特選のメロンなら、まだハクも付こうというものを。
僕はA3で9連勝してA2に特別昇班してきた、期待のルーキーだった。だったのだ。A3ではいろいろな色の服を着ていた。2号車だとよく勝てた気がする。だから僕の好きな色は、黒だ。
だが、A2に昇班してからというもの、最初に着たメロン色の服がよく似合うと自分でも思えるほど、1レース6号車から抜け出すことはできなかった。
実力が付くのを待つよりも、降級するのを待った方が勝てるんじゃないかと思うほどだ。
僕の師匠は今日、初日特選の6号車で走る。
「師匠、同じ色ですね」
ふざけてみたが、師匠は冷たかった。
「そりゃお前、特選周りできるだけでじゅうぶんってぐらいの点数しかないんだよ俺ぁ。だったらメロンでもなんでもいいじゃねえか。てめーは何なんだ、ずっと1レースでこんな服着て、なんとか特選に出ようとは思わねえのかよ」
そういえば、師匠と同じ斡旋は初めてだ。そうだ、師匠は今期からA1に落ちてきたから、僕がS級に上がれなかったのに同じ斡旋になってしまったんだ。
僕は悪いことを言ってしまったことに、そこでようやく気付いた。
「昨日、前検日インタビューが来たんですけど、師匠のところには?」
「そりゃ、特選なんだから来るに決まってんだろ。てめーが決勝まで上がって来るのを待っててやるって言っといたからよ、せめて準決には入れよな?」
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僕は、四国ラインの先頭であることを生かして必死に先行から突っ張りきって、最後の最後で番手の先輩に差されて、2着だった。
ハンドルを投げた瞬間には、もうわかっていた。僕は負けたんだ、と。
けど、2着だ。準決勝には行けるじゃないか。
A級に来てから初めての準決勝進出に、少し浮かれていたのは事実だ。
競走が終わったあとのことは、よく覚えていない。
師匠に変な絡み方をしたような気がした。
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