2日目
第1話:前準備の量 = 劇の出来
文化祭二日目が始まった。
生徒みな元気はつらつに動いている。昨日の疲れを知らないように動いている。
一日目からの続投の出し物もあれば、二日目限定の出し物を出しているグループもあり、一日目のみの出し物が引いたスペースを埋めるように出し物を展開している。
一日目のみ、二日目のみの出し物には特徴がある。基本、出し物は二日間を横断するように展開しなくてはいけない。つまり横断できないような理由があるからだ。
例えばパソコン同好会。あそこの展示物のフラッシュザウルス(桃踏みデストロイアーゲームと言い張られた)は破損につき展示が終了したり、飲食店のいくつかも用意してあった材料が切れたことにより終了した。
他にも出し物の中心人物が一日目にいなかったから出せなかったとかもあり、ほとんどは私情的な理由が付属している。
そんな方日のみの出し物の一つ、劇は少し理由が異なる。
劇を出し物とするクラスは多い。さらに劇団部も加わり一回の劇に1時間かかり、他に体育館を使う出し物などを考慮すると、二日に分けなければ時間がどうしても足りなくなるのだ。
よって、自由時間を確保したい人類が多いクラスでは劇を選んで、さらに劇の時間がカツカツになり、劇を行うクラスの自由時間が更に増えるという負のループが巻き起こっていた。その話は数十年にわたって語り続けられたりとしてるが今回の話とは関係の無い、文字数稼ぎの与太話だ。
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「準備はあらかた終わったか?」
そんな副学級長の言葉に、みな頷く。声を出す者は居ない。此処のすぐ隣では他のクラスが劇をやっているからだ。俺も準備が終わっていたので頷く。
今この場は体育館の裏手。別のクラスの劇の最中である体育館の裏手だ。この後、約10分後ほどで俺たちのクラスの劇が始まる。
何らかの役がある人間は衣装を着こみ、舞台を動かす係の黒子は目立たない黒字の服を着ている。
俺は前者。白色の修道服を着こんでいる。レンタルできそうにない衣装なのでクラスメイトの手作りであり、白い
「いいじゃない。ちゃんとした修道服は重いのよ。今回の修道服は軽いから得よ」
隣に居た彼女は、俺の不満げな気持ちを読み取ったのか、そう答えてくれる。
「そう言ってくれるのはありがたいけど……その衣装を着てる身で言われてもそんなに説得力はないと思うな」
彼女の服装はお嬢様じみた白いドレスだ。……非常に似合っている。ドレスについては全く知らないが、白くひらひらとしたスカートみたいな部分が全体的にファンシーな印象を持たせている。普段の彼女の印象はクール系だと思っていたが、今の彼女はそんな印象を持たせてはくれない。かっこいいよりも、かわいいが表現されている。化粧もそれに準ずるようにしてある。
なんだか普段の彼女がどっか行ってしまったような感覚がする。いつもの彼女はこんな服装はしない。つまり今現在隣に居る彼女は本当に彼女なのかと疑問をうっすらと思ってしまう。
というか、この衣装は彼女の利点をつぶすような衣装だ。彼女の素の印象ならカッコイイ服装がもっとも美しく、映えると思うんだ。かわいいもアリかもしれないが――むしろ新鮮な気持ちで見られるし、別の意味で美しく映えているけれども!
「……って言う割には、この服装にあまり良い気持ちが湧いてなさそうだけど?」
そうこう色々と考えていると彼女から言葉が発せられた。その表情は若干暗い。
「あ、いや。似合ってるよ」
「似合ってるとかじゃなくて、良い気持ちが湧いてるかの話だけども?」
「……それは、まぁ、そうなんだけどさ。何か複雑なんだよ」
「複雑って?」
「俺でも良くわからない。でも出来ればさ、その衣装を見る場が今回の場じゃなきゃ良かったとか思ってるよ。……他の連中とかが要因でその衣装を着るんじゃなくて、俺が要因なら良かったなって」
そうだ。どうして他人の影響で彼女の印象が変わるんだよ!
別に変わると嫌だとは言わない。でも彼女が変わるなら、俺が原因で変わって欲しいんだ。
俺以外では変わってほしくない。
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