第6話:自覚が無い
「……何してるの?」
「え? 蚊よけスプレーを全身にかけてますけど?」
そう言いながら俺はシューシュースプレーを全身にかけている。
「……いやぁオカシイと思うよぉ」
「何がおかしいって言うんですか?」
「なんでぇ何回も同じ所にスプレーかけているのぉ?」
「さぁ?」
「さぁあって何でよ?」
「外出する前に一本消費しきらないといけないので……」
スプレーの勢いが少しだが弱まわってきた。後もう少しで切れるだろう。
「やっぱオカシイよぉ……蚊をどんだけ憎んでるのよぉ」
「俺――じゃなくて僕自身はあまり憎んでは無いんですけどね。……その彼女に言われて……」
そう言ってから、また涙がたれそうになる。
別に良い思い出でもないのだが、印象的な一幕だ。そして彼女にほぼ振られたも確定な状態な今でも気が付いたらやっていた現象でもあった。辛い。
「……彼女さんになにがあったのよ。蚊に親を殺されたの?」
彼女が蚊に嫉妬した一件を話す。
「まあ血を吸われた後の事なんですけど、彼女は蚊よけスプレーを大量に持ってきて、僕に使えって言ってきたんですよ。それが今の行為の事ですね。今回の旅行前も1週間分渡されましたよ」
そう言うと、女性二人は「うわぁ」という感情を顔で表示させていた。
「ごめん、彼女ちゃん浮気してないわ」
「え?」
「そんなに愛が重い……いや、深い? まぁ深淵みたいな愛を貴方に感じてるのなら恋愛対象をすぐに変えそうにないわよね」
「え?」
「そそそぉ。人に嫉妬するのは分かるけどぉ虫に嫉妬するのヤベェでしょぉ」
「え?」
@
まあ、その後。色々な言葉を投げかけられて、俺の気持ちは元に戻った。
そうだよな。彼女の不貞を疑うなんて馬鹿らしいよなっという気持ちになった。
「いや、そこまで愛してもらってる自覚は無いの? 普通そこまでされてたら相手は浮気しないだろうって分かるもんでしょ?」
「鈍感てぇレベルじゃあないですよぉ」
「……なんかすいません」
そう言いながらカップル専用カルボナーラを食す。
美味しい。今まで食べてきたカルボナーラのナンバー1にしても良いだろう。
ここのカフェは家からそこまで離れてはないし、今度彼女と一緒に頼んでみようかな。
……でも取り皿ないのはなぁ。カップルだからいらないという発想はあるいみアリだと思うけど、今は知り合いと食べているから何かと辛い。
いや俺らが完全に悪いから下らない愚痴だな。ツイッターにでも書いとこう。
「とぉいうかぁ、このカップル限定メニュー頼んだこと知られたらぁ少年ヤバくなぁい?」
「このことは墓まで持っていくつもりです……」
@
その後のバイトはとても頑張れた。帰って寝る時も健やかに寝ることが出来た。
彼女が不貞してるはずがない。という確固たる意志が出来たおかげだろう。
そして朝。寝起きは最高だった。
彼女のためにバイト頑張らなくては。そう思って支度をする。
そうしてると電話が鳴った。画面には彼女の名前。
「?」
何で電話してきたのだろう?
契約してる通信会社の関係上、海外からの通信料が馬鹿高いので電話しないという約束だと思ったが。
……なにか緊急の用事でもあるのかな。
もしかしたら、今すぐ別れるとか言うのか? 新しい恋を見つけたからって。……いやいや、それは流石に無いか。
そう思って電話に出る。
「もしも」もしもし私よ。恋人限定メニュー美味しかった?』
「……へ?」
思わずマヌけな声が出た。
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