第2話
気がつくとそこは俺の部屋ではなく、一言で言えば森の中にいた。
「...え?なに、どこだよここ...。」
俺はキャンプでもしていた覚えもなく、家で寝ていたはずなのだが、森に来ている。ならあれは夢だったのだろうか。今ここにいるという事は、家族でキャンプでもしに来たという事か...と思う。俺にはアウトドアな友達はいないしそもそも友達と呼べるような人がいたかどうかも怪しいところだ。故に友達と一緒に来ているとは考えづらい。
「...母さん!...親父ー!...雫ー!」
大声を上げれば気づくかもしれない。だが返ってくるのは森の鳥たちのさえずりや川の流れる音だけだ。とりあえず移動しなければ。呼んでも返答がないという事は、ここの近くには居ないのだろうから。そしてひとつやふたつどころではない変化が見られる。俺はこんな植物は見たこともないし、生っている木の実も初めて見るものだらけだ。ここは外国なのだろうか?でも外国に来ているからと言ってこんなに見たことも無いようなものがそこら中にあるのだろうか。考えながら歩いていくにつれて頭も冷えて冷静な判断ができるようになっていく。多分これは最近アニメでよく見る異世界に転生した。という事か。
やだ!自分で言ってて恥ずかしい!実際、あれはアニメでしか起こらない事だし、大体は何か事件があって死んだ後に異世界へ行く様な感じだった。俺は自分が死んだ記憶はないまあ、家族でキャンプに来た覚えもないが。すると突然茂みの方から木の枝が割れるような乾いた音がする。
どうやら誰かが踏みつけたらしい。
「...!誰?」
すると茂みから顔を出してきたのはとても大きい猪...?のようだった。え、猪ってこんなに大きかったかなと困惑していると突進してきた。ギリギリの所でかわし、後ろの大木に頭をぶつけているようだ。どうやら俺は餌にされてしまいそう。とりあえず猪は突進しかしてこないと思うからジグザグに蛇行しながら走って逃げた。そして予想外だったのがこの猪、めちゃめちゃ小回りが利く。余裕で追いついてくる、どうしよう...。
「なんなんだよっ!こいつ!」
もうそれしか言葉が出てこない。走りながら猪の猛攻をかわしながら叫んだ。こういうどうしようもない時ってなんか叫びたくなるよね。え?俺だけだと思うって?うるさい。流石に逃げきれずに追いつかれてしまい、猪に体当たりをされる。かなり遠い距離まで飛ばされてしまった。息ができない。そしてこちらの動きが止まったため猪は狙いを済ませているようだ。こうなれば、もうどうしようもない。さっきので足も動かないしな。なのでその辺に落ちている頑丈そうな木の棒を拾い、応戦する構えをする。それが合図のように猪は突進してきた。それに合わせて俺は横薙ぎに木の棒を振るう。
「...フッ!」
力が入るように掛け声をかけるが、木の棒から伝わってくる反動はなく、空を切っていた。なぜかというと猪は横から矢を放たれており、背中に命中したため動きが止まったようだ。俺は矢が飛んできた方向を確認する。その方向には弓を構えた男がいた。
「よう、少年。助けが必要かい?」
その男は大胆不敵に笑っていた。
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