最後の追跡


 ウェス・ターナーは追跡を止めない。


 光走船もまたウェスの意志を引き写したように、疾走することをやめなかった。


 悪魔の中指はハイドラの水底で朽ちていくだろう。大喰いもまたアイシス河の魚の棲みかとなるに違いない。レイゼルの犬橇はロドニーで粉砕された。飛行船ウィースガム号は炎に包まれながらリドワップ台地に墜ちた。


 ウェスの機械マシン、そして古代の自走機械マシンだけが、いまだ地を這い、風を纏い、水を裂いて、ひたむきに進み続けるのだった。


 理由は明白だった。このレースに名乗りを上げた誰よりも、ウェスは機械に精通し、その呼吸を熟知していた。


 機械が歌うようにウェスは歌う。機械が唸るようにウェスは唸る。機械が咽ぶようにウェスは咽ぶ。


 それでいて機械と生身の境界線を誰もより見極めていたのもウェスだった。機械はウェスの手足であり、世界と触れあう端末だ。


 ――キキッキー!


 ラトナーカルが崩壊・沈下するハイドラの骸のそばに何かを見つけた。


「スタンだ! 寄せるぞ、拾い上げてくれラトナ!」


 船は大きく軌道の孤を膨らませた。これで水面に出たスタンの位置に届くはずだ。同じ位置にレイゼルの姿もあったが、彼女は独力で岸へ泳ぎつこうとしている。


 スタンとラトナの手が水上に結ぼれると、冷え切ってずぶ濡れのスタンが船に引き上げられた。


「問題ないか、ウェス?」

「そりゃこっちが言いたいよ。でもやっぱり生きてた」


 ウェスがどれだけ親友の身を案じたのか、どれほど無事を信じたのか、スタンだけが知っていた。立場が逆なら同量同質の感情を抱くだろうから。


「まだ追うんだな?」答えのわかり切っている問い。

「もうすぐだ。手が届くんだ」


 ウェスの視線の先にはあの機械がある。何本もの脚を失い、ぎこちなくよろめくその様は滑稽で惨めだったが、決して笑いを誘いはしない。


(あれを笑う権利が誰にある?)


「やつは兄弟だ。スタンもラトナも兄弟みたいなものだけど、そういうんじゃない。あれは双子みたく僕と同じだ。知らなきゃ気が済まない。突き止めなきゃ止まれない。物事がどんな案配で成ってんのか。世界ってのが、そんなふうに思われてる通りのソレなのか」


 ――わかりたい、わかりたい、わかりたい、わかりたいんだ!


 ウェスはいつだってそう叫んでいた。たとえ声を上げなくとも。否、そんな叫びが人の形となって産声を上げたのがウェス・ターナーだった。


「ウェス、この長い旅で変わらなかったのはおまえだけだな」

「そいつは誉め言葉? じゃなかったら忙しいから後にしてくれ」

「――ああ」スタンはずぶ濡れになった身体を震わせながら苦笑を浮かべた。


 その時、落雷のごとき痛みがスタンの四肢を駆け巡った。


 それは奇しくも、ベイリー・ラドフォードが絶命した瞬間だった。半身がもぎ離されるような衝撃。スタンは立ちすくむ。


「どうしたの? スタン」

「だ、大丈夫だ。前を見ろ、終着点は近い」


 強がってはいても声に力がない。感情を御す自制力がいまにも霧散しそうだ。


 穴、使い古された常套句に頼るならば、まさに胸に穴が空いた、とそう形容するしかない。


「――それ」


 ウェスは満月の冴えた光のもとでスタンを見やる。


「髪が変だよ」


 ウェスが指摘したのは、みるみるうちにスタンの髪の一房が白くなったことだった。隠し通せるわけがない。


「何が起きたの?」

「……ベイリーが死んだ」


 河口はリボンを解くように拡がって海となる。暗夜に水平線はなく、混ざり合った海と夜、それは漆黒のどよもすアマルガムだった。


「ビーチだ」


 千年海岸ミレニアムビーチ――物語の発端の地。


 悠久の盟約が交わされた聖なる海。


 巨獣ウィースガムが初代王ハゼムに屠られたという伝承からシェストラの歴史は始まる。ウィースガムの腸より取り出されたと伝えられるのが、あの玉座だった。


「平気かい? スタン」


 衝撃が過ぎた。が、埋めることのできない胸の穴は大きくなり続ける。竜紋サーペインは死の衝撃を伝えたけれど、死の向こう側にあるものを伝えなかった。煉獄も楽園も見えない。


(ベイリーどこにいる? 何を見ている?)


 スタンたちの眼差しの果て、沖の暗黒に向かったのか、それとも頭上の光明に触れたのか。


 そう、満月は明るく眩い。


 死者の応えはない。スタンは慟哭を押し殺した。いま押し殺してしまえば二度を吐き出すことのできない悲嘆。かわりにスタンは言った。


「間近だ。王たちの遊歩道は途切れる。機械は踵を返すか……それとも?」

「わからない。未知数だ」


 ウェスたちは距離を詰めた。土壌がさらさらとした砂に変わっていく。自走機械クモは脚をもつれさせる。さらに距離を縮めれば、相手に鼻息がかかるほどの間合いとなるだろう。


 追う者と追われる者、月光に照らされながら、二つの機械の疾走はいつしか節くれ立った動線で踊る輪舞となった。


 


× × ×


 岸に泳ぎついたレイゼルの額からは一筋の血が滴っていた。


 スタン同様、レイゼルもベイリーの死を感得したのだった。ベイリー自らが命を断ったのと同じ箇所から出血があった。共感呪術のように二人は繋がっている。あるいは双子の片割れの傷をもう片割れが負うようなものだ。


 スタン・キュラムが押し殺したものを、レイゼルは抑えることができなかった。耐えることなどできなかったのだ。


「――ウォォォォォオオオオオオオオオ!!!!!」


 コギト犬の遠吠えもかくやという絶叫だった。月に吠えるその様は、まさしくコギト犬、あるいはその近親種である狼さながらだ。


「なぜだベイリー」


 ポタポタと髪と衣服から水滴を垂らしながら、レイゼルは夢遊病者のように岸を彷徨った。メリサはレイゼルの狼狽を遠巻きに眺めたが、やがて意を決したように駆け寄った。サルキアとジヴはガラッドの側を離れなかった。


「……ベイリー様がどうかしたの?」

「死んだ」

「……」

「あれは自死に近い」


 まさか、とはメリサは言わなかった。あのオアシスの永い夜において、ベイリーは裏切り者ゼロッドの手で殺されてもいいような、そんな言動を示した。


 竜紋サーペインの影響だとメリサは断じたが……。


(あれはそうじゃなかったの?)


「思い当たることが?」レイゼルは額の血を拭おうともせずにメリサに問いを投げた。


「わからない。わからないの」メリサは首を振った。


 もとよりベイリーが死の衝動を抱えていたにしろ、こうなっては本人より聞き出す術はない。レイゼルは竜紋を通してつながったベイリーの心の奥底に死への衝動が蠢いたことに気付いていた。しかし、それがこんな形で実現するとは考えてもみなかった。


「あの人は心の内を見せることが少なかったから」


 寂し気にメリサは笑った。彼女にとっては、その死が意外すぎる事実ではなかったことを彼女の面持ちが物語っていた。ベイリーには死の匂いがこびりついていた。幾多の戦場を踏み越えてきた軍人の佇まいであるよりむしろ、それはベイリー自身の深淵に由来するものだったのだ。


「レイゼル・ネフスキー」


 レイゼルの、そしてメリサの黙考をジヴが断ち切った。


「あんたとは因縁がある。それもこちらから仕掛けたゴタだ。あのジャングルであんたの犬を……で、砂漠じゃ惨めにのされたな。まるで昨日のことみてぇさ」


 レイゼルは何も言わず続きを促す。

 サルキアは超然とした態度でそれを見守った。


「勝手は承知だ。恥を忍んで頼む。方法があるなら、ガラッドさんを……」


「さっき……呼吸が。冷たくなっていく」ようやくサルキアが口を開いた。


 超然としていたのではなくただ気丈に振舞っていただけなのだと知れた。ただし、レイゼルに助力を頼むことをジヴに持ち掛けたのはきっとサルキアだろう。


 変成した者に癒しの力が宿ることをサルキアは知っていた。


 横たわったガラッドの姿に生気はなかった。打ち捨てられた魂の抜け殻。レイゼルは思わず膝をつき、かつては不屈の闘志に満ちていた顔をのぞき込む。


「おまえもかガラッド。友を残して去るのか?」


 わなわなとレイゼルのこめかみが震えた。友とはジヴのことだけはない。


「姉妹であった犬たちは死んだ。そしてベイリーも」


 北の民は平常、感情を発露させることは滅多にない。だが、レイゼルは先ほどの咆哮で心の蓋が開いてしまったようだ


「――いつだ?」

「??」

「ガラッドの呼吸が止まったのは? 心臓も?」

「ええ、心肺停止で7分てとこでしょうか」


 絶望的な時間だった。1分ごとに救命率は夥しく下がる。レイゼルはガラッドの額と心臓に手を置いた。機械の片腕にも、摂化力ゾーナムは流れる。白い呪力、その奔流を送り込む。


 死んだ者を現世に繋ぎ止めようとすれば、屍食鬼となり蘇ることがある、とはスタンの言だったが、それでもレイゼルはやめるつもりはなかった。つまるところ彼女は死という不条理にまるで子供のように憤怒していたのだ。


「戻れ、ガラッド」


(冥府は罪科を商うだけの場所だ。おまえには退屈であろう)


「戻れ、ガラッド」


(この私に喧嘩を売りつけておいて――おまえは、まだ対価を受け取ってもいない)


 レイゼルの両手から滲み出す光が、ガラッドの全身を覆った。


「あらためてふさわしく殺してやろう。だから……戻れ」


 温かい、しかし、現実に存在するどんな光とも違う白虹ハローが放たれる。宗教画の天使たちの身を包む光をサルキアは思う。ただし、いま天使たちが降りてきたら、追い払わなければならない。ガラッドの魂を連れていかせるわけにはいかない。


「僕たちは、この競争の結末にさらなる自由があると思ってた。でも、これは願ってたものとは違う。違うんだ」ジヴはいつしか滂沱の涙に濡れていた。


「レイゼル・ネフスキー。どうか。この男を助けてください」


 サルキアは慈母の表情でジヴの頭を抱き寄せた。このありさまに同情しているのではない。彼らの歩んできた険しい道程に敬意を寄せているのだ。


「公女サルキア」

「なぜ、私のことを?」

「あなたは長陽石を持っているな」

「ええ、ウェス・ターナーが持っていきました。――光を力に変えるために」


「そうか」ひとり納得するや、レイゼルは口をつぐんだ。


 メリサだけは、ガラッドの生還にさほど関心がなさそうだったが、レイゼルから波打つ白光に眼を奪われて、やがて両手を組み合わせた。ベイリーのことを想っているのかもしれない。この優しい光の中でなら、記憶の中の痛みは薄らいで温もりだけが、そこに残るだろう。


(ガラッド、おまえを救えないのだとしたら、ベイリーを置き去りにした意味がない。我々の決断は無駄になる)


「誰も救えぬなら、こんな力など――」


 無力感に抗ってレイゼルは力一杯歯ぎしりした。


 地上は、祈りの時間だ。夕食を囲んで、神の恵みに感謝する。日々の苦役を忘れ、静謐の内に留まる時刻。ただ、ウェスたちと自走機械だけが激動の只中にある……しかし、それもやがて終焉を迎えるだろう。


 そう、祈りとは、抗うことすらを大いなる存在に預けること。


 だとしたら、レイゼルにとってそれは惨めな受容に過ぎない。負け犬の所作だ。


(それは許されぬ)


 己の咬合力で奥歯の砕ける音がした。


「ガラッド・ボーエン。おまえはどれほどのものを勝ち取ってきた? おまえはどれほど生きるためにためらいを捨てた? ガラッド、生きろ、ここに在れ!」


 レイゼルはありったけの力を、最後の一滴までを敵手ガラッドに注ぎ込んだのだった。


× × ×


 機械マシンたちは戯れるように踊り続けた。


 浜辺を輪舞するその姿はまるで初心うぶでぎこちない恋人同士のようだ。


 玉座なき疾走に古代機械は歓喜しているとも見えた。それでもその足取りはだんだんと衰えていた。息も絶え絶えといった感じでよろめき、満潮を過ぎた波打ち際に転倒しそうになる。


「ラトナもういい。待とう、こいつはひとりでに止まる……いや、やっぱりすっぱりと介錯してやるべきか」


 ウェスは思案した。眼鏡が鼻梁からずり落ちる。


 宇宙の真理を究明せんと疾走する機械。この一本気で不器用な機械を自分と重ねずにはいられなかった。科学者にあるまじき感傷だったが、「らしさ」に拘泥することがないのもまたウェス・ターナーだった。


「スタン、運転交替だ。僕とラトナはあっちへ移るよ」

「前に感電しかけたろ? いつアレが来るかわからないぞ」

「もうそんな電気残ってないさ。すべて放出したんだ。もう空っぽなんだ、こいつは」


 スタンは操舵を握った。


 ラトナーカルは自身が身軽に飛び移りながら、同時にウェスを引っ張り込んだ。


「壊し過ぎるなよラトナ」


 ラトナは妙に人間臭い顔付きで装甲の隙間を覗き込んだ。おもむろに手を差し込むと上腕の筋肉を硬くした。


 ウェスは機械にそっと語りかけた。


「よぉ、ずいぶんと長い追いかけっこだったな。おまえが見たのと同じ風景を僕も見た。おまえが知りたかったことは全部僕が突き止めてやる。だからもう眠れ」


 ――パキッ!


 聡明な猿は、寸分たがわずアクチュエーターの基幹部に損傷を与えた。それも最小限の破壊で最大限の効果を狙ったのだった。


 数歩、海へ。


 疾走する機械は慣性の法則を知らぬようにぴったりと歩を止めた。半身を波に浸して、星空の下に骸となった。


「ウェス!」


 浜辺からスタンが叫んだ。


 機械が目指そうとしたのは沖の方角だった。王たちの遊歩道は、いやロドニーの女王が演算回路サーキットと呼んでいた道は陸上だけでなく海にまで拡がっているのかもしれない。垣間見えた新たな可能性と仮説にウェスはぞくぞくする。しかし、その視線の先は漆黒の水平線だ。


「ウェス!」

「終わったぞ、スタン」


 振り返るウェスの眼には眩い光が飛び込んでくる。長陽石の光は減衰したもののいまだ明るかった。スタンの側にはいつも光がある。闇を手探りで進むウェスには、だからスタンが必要だった。


「うえぇっぷ、助けてくれぇ!」


 波打ち際には、河に沈んだはずの生首ジャックスが流れついていた。


 笑いながらウェスが、

「なーんだそこに居たのか」

 と髪を掴んでジャックスを引き上げる。


「見えっか? 海だ。真っ黒だけど、これだって海さ」


 それはまるで砂漠の街でマイルストームを断首したベイリーの雄姿を思わせた。そのベイリーはもうこの世にはいない。船から下りたスタンは裸足になって波に踏み込んだ。


「ヴェローナも死んだ。とうとうベイリーを仕留められなかったけど。あの女は、ふたつの意味をひとつの弾に込めることができた。殺意とその反対を」


 スタンがヴェローナのことを持ち出したのは深い意味はない。ただ、ふと、あの少女の声を、体温を感じたような気がしたのだ。海に憧れた彼女が、そこに立つことを望まなかったはずがない。ヴェローナなら足指が水の中の砂を掴む心地よさに笑ったはずだ。


「たくさん死んじまった。なぁ、ウェス、俺たちがガキじゃなかったら、俺がもっと強くておまえがもっともっと賢かったら、この場所にベイリーやヴェローナも並んで立ってたかな?」


「かもね」とウェスはぞんざいに答えた。


 その表情は潮風になびく髪のせいで見えなかった。この世には、どうしても並び立てぬ者同士がある。そいつがわからねえのがガキってことだ、とガラッドなら言うかもしれない。


 しかし、この競争にゴールというものがあるのなら、そこに到達したのは、百戦錬磨の大人たちではなく二人の子供だった。少年たちだけが、世界と素手で対峙し、勝敗とは無縁の価値を、見出すのではなく、創り出すことができた。


 この殺風景こそが、おまえたちの場所だと教わるまでもなく二人は知っていた。それは未発のキャンバスだ。手つかずのフロンティアだ。


「海ってのは青くてきれいなんだろ」


「昼間ならね」眼鏡を持ち上げつつウェスは言った。

「夜明けは?」

「あと9時間と27分ってところかな」


「長いな」とスタンは答えた。


 寄せては返す波の音、永遠を夢想させる潮鳴り。それは心地よくも退屈な調べだ。


「ウェス」「スタン」


 少年たちは、目配せのかわりに互いの名を呼んだ。


「閃いたんだ、新しい動力システムを。誰も知らない駆動系だ。次の機械マシンができる!」


 だしぬけにウェスは砂浜に指で数式と図を描き始めた。いずれ波に洗われるだろう砂地に書いたそれは、しかし、ウェスの脳にしっかりと刻み込まれていく。


「はぁ、そうだろうさ。おまえはそういうやつだウェス。悲しいのに泣けねえ時どうすりゃいいかなんて知ってるはずないか」

「うん、知らない!」


(感傷もクソもねえな。でも……)


 これがウェスなりの慰めである可能性もあった。限りなく低いにしても。 


 ちょうど長陽石がありったけの光の放出し尽して沈黙すると、真っ暗だと見えた海に星明りが映じていることがわかった。


 海は星火に燃えた。この炎はやがて地上にまで燃え移らないとも限らない。持ち前の心配症にロマンチックな希望を乗せてスタンは思った。


「ち、暗くなっちゃった。こんなにもアイデアが溢れてくるのに。こうしちゃいられない。いつやって来るのかわからない夜明けなんて待ってられないよ!」

「9時間と27分後だって、おまえがさっき……」

「そんなことどうでもいい! 始めなきゃ始まんない。この怠惰な世界は僕がぜんまいを巻いてやんなきゃぴくりとも動かないんだから!」

古代機械マシンはどうすんだ?」

「後で回収する。それにもうだいたい

「わかった? わかっただと?!」


 ウェスの天才にスタンは改めてげんなりした。そんなことにお構いなく、白々とした表情のスタンをウェスは急きたてる。脳中にとめどなく溢れる発想を取りこぼさぬようにウェスは耳を塞いで地団駄を踏んだ。


「早くしろよ、スタン! 置き去りにされたくなきゃ」

「そう怒鳴るなウェス。おまえのちまい歩幅じゃ俺を引き離せない」


 単調な潮鳴りを押しのけてウェス・ターナーが身を乗り出せば物語マシンはまた動き出すだろう。


 ――物語は疾走する。より速く、遠くへと。


 二人は、黎明を待たず海に背を向けた。

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