第2話 鈴の宮学園のご令嬢

 今日からやっと、俺の学園生活が始まる。何もない平凡な日常が始まるはずだった……

「あれが噂の……」

「空気読めよあいつ……」

なぜだろう、周りの人たちの目線が痛い。それに陰口が聞こえてくる。

どうして、こんなことになってしまったのか……?

「絶対にあの女、藤堂南のせいだ……」

話は二週間前、入学式の日へと遡る。



――あの日、楓は入学式に間に合うはずだった。

しかし、鈴の宮学園の門の前の交差点で、藤堂家のベントレーに引かれてしまったのだ。

そして、目を覚ますとくさやを持った藤堂南がいたのである。

「なんで、くさや持ってるの……?」

俺は疑問に思ったことをそのまま聞いた。

「あなたを起こすためよ……」

彼女はクールにそう答えたが、すぐにその強烈なにおいにクールだったその表情は歪み始めた。

「思った以上にくさいわね……」

「ちょっと捨ててくるから、待っていなさい」

「あと、お花も摘んでくるから、おとなしく待ってなさいよ!」

やはり、このにおいは女性はきつかったのか、彼女は足早に外へ出て行った。

さてと、ここはどこなのだろう……

俺は周りを見渡した。

「病院……?」

外を見ると、空は夕焼け色をしていた。

あぁ、そうか入学式は終わったんだな……と

楓が今の状況を理解し始めていた時だった。

「おはようございます。あぁ、もうこんにちはと言うべきですか」

横からスーツを着た女性が話しかけてきた。

「天野様の入学式に配布されるはずだった教科書等はこちらがお預かりしていますので、安心してください」

「あ、ありがとうございます」

どうしてスーツを着ているのだろう。

その答えはすぐにわかった。

「自己紹介がまだでしたね、私は藤堂家の長女である藤堂南様の付き人兼メイドである桐野と申します」

付き人……? メイド……?

楓の理解はついていけていなかった。

「あぁ、あとここは病院ではありますが、正確には、藤堂家の敷地内にある病院です」

ここでやっと楓の理解が追いついた。

「お嬢様かよーーーーーー!?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園のご令嬢 よしりん @yoshi02

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ