「極彩色、じゃない?」



途端に、場が静まり返る。



【極彩色】



小さい頃に、この名前を聞いた。

本当に存在するのかなんて半信半疑だけど、

あたしの直感がそう言ってる。




「お前、なんでその名前」


「朝陽、あたしたちが極彩色だって言えないような子連れてきたの?」



はじめに沈黙を破ったのは朝陽だった。



木蓮はひきつった朝陽の顔を睨むみたいに、

鋭い言葉を投げかけた。



「…ああ、そうだぜ。

表沙汰にできない依頼を秘密裏に受け、遂行する、隠密衆極彩色」


まるで木蓮の言葉が聞こえてないみたいに、朝陽は呑気な語調で言った。


あたしを助けてくれたときみたいな、

そんな調子で。

木蓮は少し咎めるような視線が緩んで、感情は焦りに変わったようだった。


「ちょっと、朝陽」


「あぁだからそれは悪かったって。でもどうしても放っておけなかったんだよ!」



隠密衆、極彩色。


やっぱりそうだ。


彼らは幕府のような公的組織でもなく、忍というわけでもない。

一般の人々はまず知らない存在だ。


けれど、その腕は一流で表沙汰にできない依頼を引き受けているらしい。


小さい頃、聞いたんだ。父上から。



「そろそろお前のことも教えてくれねぇか?等価交換ってやつだ」


「えっ」


予想外の言葉だ。

本来知られちゃいけないことのはずだけど…

当の本人たちは【等価交換】で済む話らしい。


「等価交換って言ったって…あたしの話なんて対した価値にならないよ」


「話すことがないってわけでもねぇんだろ?」



あたしのことは知られちゃいけないわけじゃない。だから…

そんな単純な理由で口を開いた。

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