肆
「極彩色、じゃない?」
途端に、場が静まり返る。
【極彩色】
小さい頃に、この名前を聞いた。
本当に存在するのかなんて半信半疑だけど、
あたしの直感がそう言ってる。
「お前、なんでその名前」
「朝陽、あたしたちが極彩色だって言えないような子連れてきたの?」
はじめに沈黙を破ったのは朝陽だった。
木蓮はひきつった朝陽の顔を睨むみたいに、
鋭い言葉を投げかけた。
「…ああ、そうだぜ。
表沙汰にできない依頼を秘密裏に受け、遂行する、隠密衆極彩色」
まるで木蓮の言葉が聞こえてないみたいに、朝陽は呑気な語調で言った。
あたしを助けてくれたときみたいな、
そんな調子で。
木蓮は少し咎めるような視線が緩んで、感情は焦りに変わったようだった。
「ちょっと、朝陽」
「あぁだからそれは悪かったって。でもどうしても放っておけなかったんだよ!」
隠密衆、極彩色。
やっぱりそうだ。
彼らは幕府のような公的組織でもなく、忍というわけでもない。
一般の人々はまず知らない存在だ。
けれど、その腕は一流で表沙汰にできない依頼を引き受けているらしい。
小さい頃、聞いたんだ。父上から。
「そろそろお前のことも教えてくれねぇか?等価交換ってやつだ」
「えっ」
予想外の言葉だ。
本来知られちゃいけないことのはずだけど…
当の本人たちは【等価交換】で済む話らしい。
「等価交換って言ったって…あたしの話なんて対した価値にならないよ」
「話すことがないってわけでもねぇんだろ?」
あたしのことは知られちゃいけないわけじゃない。だから…
そんな単純な理由で口を開いた。
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