弐
「おかえり、朝陽」
紫の着物にかんざしの煌めく女の子があたしたちを出迎える。
「こいつに飯用意してやってくれ。あと怪我の手当ても」
朝陽、と呼ばれた彼は少し早口でそう言った。
さっき、あたしを助けてくれた彼だ。
「その方は?」
眼鏡をかけた男の人があたしを見た。
若葉色の着物がよく似合う、朝陽や紫の女の子よりずっと年上にみえる。
「こいつは――」
あたしを見やる朝陽。
「琥珀」
「琥珀!」
「まったく貴方という人は…」
呆れた様子だけど、いつも通りって感じの反応。
「金品目当ての浪士に追われてたんだよ。まともに飯も食ってねぇみたいなんだ。頼む、
「仕方ないですね…ただし、貴方の分はありませんよ」
「えっ」
「別にいいのに」
少し大きめなあたしの独り言は鶯の耳には届かなかったらしい。
…紫のあの子があたしを興味津々に見つめているのには今気がついた。
「その子、怪我してんの?」
手当て…してくれるってこと?
「じゃあ、あたしが」
「却下だ」
!?
「まだ何も言ってない!」
「言わせないようにしたんだよ。お前に手当てなんかさせられるか!」
「でもさっきは手当てしてやってくれって言ったじゃん!」
誰もが驚く速さで会話が進んでいく。
つまりは紫のあの子に手当てをさせたくない…ってこと…?
「阿呆かお前!おい、村雨!」
「何」
「!?」
真後ろから聞こえた声に飛び退く。
村雨、と呼ばれた青い着物の彼女は
そんなあたしに特に反応を示さなかった。
「こいつの手当てしてやってくれ」
村雨は手際よく手当てをしてくれた。
いつも紫の彼女の代わりに手当てをしてるのかな…?
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