その8 有言不実行
「多分……このセルリアン達が、今回の依頼の小型セルリアンの群れだね……。」
「どう倒しましょうか……。」
「……あ!センちゃん、丸くなって!」
「……また"アレ"をやるのですね」
……そして私は丸くなる。
アルマーさんに身を委ねて、転がっていく。
私のウロコに、次々と手応えが……。
「ふふ、本当に強いね、センちゃんは」
「むぅ……私ばっかり目が回るんですからぁ……」
「わ、私は本来丸まらない動物なんだからね!それに私のコウラは防御用だし!ね、だからお願い……。」
……でも目が回ってると万が一またセルリアンが来た時危ないじゃないですか……。
この攻撃方法はどうかと……。
「私も私独自の攻撃方法を編み出すから!それまでお願い!」
「アルマーさんはそう言っておきながらサボって編み出さないのがオチですよ」
「何だと!何も言い返しができない!」
「正に"有言不実行"ですね」
私達は依頼主に報告に行こうと、歩き出す。
アルマーさんが自分のコウラを見ながら攻撃方法を考えている。
「うーん……攻撃はできないんだよなぁ、私のコウラ……攻撃はやっぱりセンちゃんがやってよぉ……強いってことを行動で証明してよぉ……」
「とは言っても……んっ?」
ガサガサと、しげみが揺れる。
何だかよくある展開だけど、嫌な予感がします。
「……アルマーさん……。」
「センちゃん……まさか……!」
現れたのは、また大量の小型セルリアン!
「依頼主が言ってた数と全然違うなって思っていたところだよ!まだ残ってたんだね!やっつけてやる!」
「アルマーさん、口を動かす前に手を動かして下さい!」
「分かってるって!えーっと、私はどうやって攻撃すれば……。」
「ああもう、じれったいですね!アルマーさんの言った通り行動で証明してやりますよ!」
何回もアルマーさんが投げるから転がり方も身についてますよ全く!
私は本来丸まることのできる動物だし、ウロコも攻撃用だってことを行動で証明します!
「わー、センちゃん、速い!」
「ふふふ、絶好調ですよ!」
「あはは!おっと、おかえりセンちゃん!」
「ただいま……ああ、目が回ります!」
「でもこれで仕事は完全に終わったし、結果オーライだよ!」
本当にそうでしょうか?
ああ、フラフラする……。
「……あれぇ!?センちゃん!後ろ!」
「えっ……」
あっ、大きなセルリアンだ……
フラフラする……
動けない……
「センちゃん!今助けるよ!てやーっ!」
アルマーさんが、セルリアンに思いきりかったいコウラをぶつけていく。
セルリアンが、その固さに散っていく。
フラフラしていても、それだけは確かだ……。
「……大丈夫!?センちゃん!」
「大丈夫ですよ……。それよりあなた、初めて"有言実行"しましたね……。」
「うぇっ?あああ!本当だあああ!やったあ!今日はラムネ味のじゃぱりまんとジャパリスティック、どっちも食べちゃおー!」
アルマーさんが初めて有言実行をした記念、らしいけれど……
恥ずかしくないのでしょうか……。
でも、まあ……
「お腹空いてきましたね……。」
「一仕事終えた後だからねー!」
いいと、しましょう。
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