第16話 あの夜のこと

 

 あの夜、林田とまり子は杏子の思いを理解していて、いろいろと気を使ってくれていたのだと、後になって知った。 

 

 俺もどこかで杏子の思いに触れ、それを感じてもいたが、どうして良いのか分からなかった。自分の勝手な思い込みだという気持ちも心のどこかにあった。

 

 杏子との高校生活での普通の時間を失ってしまうのが怖かった。

 

 恋愛の破局の先に友達関係は存在しない。

 

 だから自分を傷付けるのが嫌だった。


 そうやって、受験に追われ焦る気持ちだけを優先させた。


 それで杏子の気持ちも自分の本当の気持ちもその先に追いやってしまっていた。 

 だが、まずは受験だった。

 時間も無かった。


 その後で時間があるはずだった。

 しかし、どう言ってみても、それは自分への言い訳でしかない。

 

 俺はどうすれば良かったのだろう?

 どうすれば?

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