第7話 COLOR「コバルト色」
「レント、元気か。」
タクトからのラインは久々だったし、うれしかったけど、「元気だ」と答える気分にはなれなかった。
タクトは続けてラインを送ってきた。
「なあ、僕らの写真見てくれよ。」
タクトは僕が写真を見ると、「色のようなものが見える」ことを知っていた。
「ああ、見たよ。」
僕は返した。
タクトから電話がかかってきた。
「なあわかるか?」
「ん?」
「二人の色が変わったのはわかるけど、それって何か意味あると思うか?」
僕は答えた。
「やっぱ、お前スゲーよ。その色っていつわかった?」
「3か月前に会ったときに気付いたけど。やっぱり仲がいいと色が変わるんだな、って思ったと思う。」
「やっぱり!!おまえは天才だ。」
「なんだよ。」
「実はな。」
「3カ月前に、僕らの子供が宿ってたんだ。カノンのお腹の中に。」
「まあ、俺は単なる大学院生だから手放しで喜べる立場にはないけどさ。」
「ともかく最高だよ。カノンの中に俺たちの子供がいるんだぜ!お前にはすぐに教えたいと思ったけど、3カ月前に既に気づいてたとはな。」
「マジか!おめでとう!」
僕はようやくそのことを理解した。
「って、3カ月前に気づいてたわけじゃないけどさ、、、。
「あ、今やっとわかったわ。」
僕は気付いた。つまりそういうことだったのか。
「とにかくそういうことだ。今度会う時はカノンのおなか大分大きくなってるかもな。」
「じゃあな、また。」
タクトはうれしそうに電話を切った。相手の両親に伝えたらすごく嫌がられる可能性だってあるはずなのに、そんな雰囲気は微塵も感じられないくらい喜びにあふれていた。
二人が仲良くしているから色が変わったというわけではなかったんだ。
お腹の子の色のパワーが強すぎて、親の色が消えちゃったってことか。
生命の力にあふれたコバルト色の「新しい命」。
僕は、もう一度エンジェルのサイトを立ち上げた。
「親愛なる皆さまへ。」
「僕の母、エンジェルは天国に召されました。あなた方のご指摘通り、私はエンジェルではありません。母の力を継いだ身として、僕は『死』ではなく、『生』のカウントダウンをさせていただきます。」
と書き込んだ。
新しい命には良い色も、悪い色をかき消す力もあるだろう。
それは多くの人を救うカギになるかもしれない。
いやいや、そんな立派なことを思うのは格好つけでしかないか。
新しい命を追うことで、きっとまた生まれ変わるだろう母をいち早く見つけたいってだけ、というのが正直な話か。
僕はそんな風に思う自分を恥ずかしく思った。
それでもいい、とも思った。母がいなくなってから随分と時間がかかったが、ようやく僕にはやるべきことができた。
ふと、母のうれしそうな顔が見えた気がした。
COLOR usagi @unop7035
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