第31話 フレイムキマイラ → 対策検討

 もし、フレイムキマイラを倒せる可能性があるとすれば……やっぱり僕の【技能交換】しかない。一応同時進行でモフに父さんの槍を探しにいってもらっているけど、この戦闘中に見つかる可能性は低いと思う。


 ただフレイムキマイラのスキル構成を見る限り、誰でも思いつきそうな作戦がひとつ。


 フレイムキマイラという名前、パッシブな固有スキル、そしてひとつだけ突出したスキル。これらから考えられること……それはフレイムキマイラの【炎身】と【火無効5】は種族特性としての初期スキルなのではないかっていうこと。


 つまり、フレイムキマイラはこの世に発生した瞬間から炎に包まれている。そしてその炎から【火無効5】で守られているんだ。それならば、その初期スキルをなんとかすればきっとフレイムキマイラにとって都合の悪いことが起きる。だって発生した時から当たり前のようにあったスキルがなくなるんだから。


 でも、特殊スキルは相手の同意がないと絶対に交換出来ないし、固有スキルに至っては完全に交換不可。交換するなら【火無効5】を狙うしかない。たぶんこれを失えばパッシブで【炎身】をオフできないはずのフレイムキマイラは自滅する。


 問題はあの燃えた身体に近づいて触らなきゃいけないことと、スキルレベルが離れているから確率が悪いことか……。

 僕のスキルでレベルがもっとも高いのは三。【棒術】【隠密】【解体】【調教】、そして父さんから借りている【狩猟】の五つ。父さんの【狩猟】は獲物の追跡とか罠に関するスキルで直接戦闘には関わってこない。だから今後の戦いでもし手持ちのスキルで交換が成り立たなかったときのための保険として、僕の中で預かっている認識だ。

 

 だって、レベル三が四つあるとはいっても、【隠密】は絶対手放せないしモフとの絆でもある【調教】も無くせない。それに槍の扱いに利点がある【棒術】もできるなら持っていたいところなんだ。となると、使えるのは【解体】だけ。魔境産の魔物に対してレベル三が一個じゃ、その一個で失敗したら交換に使えるレベル三スキルがなくなってしまう。


 もちろんいざとなったら惜しむつもりはないんだけど選択肢が多いにこしたことはないよね。


 で、どうやって【火無効5】までいくか。この辺のパターンは今までタツマとも散々話し合って来た。やり方としてはふたつだ。


一.手持ちのレベル三から直接、【火無効5】との間で【技能交換】を試す。

二.手持ちのレベル三と敵のレベル四との交換を経由して、取得したレベル四で【火無効5】との交換を試す。


 一は確率的には二十五%、二は五十%だけど二回成功しなくちゃならないから五十%から五十%でやっぱり確率的には二十五%になる。


 一の利点はうまくいけば一回で交換が成立すること。でも、四回に一回しか成功しない確率なのに使えるレベル三スキルは最大で五つしかないという無視できないリスクがある。同じ相手にこちらから同じスキルを二度指定できないのが痛い。


 その点、二は二回に一回成功するうえに、交換に成功したレベル四スキルも使用できるので、交換しなきゃいけない回数は増えるけど手詰まりになるリスクが少ない。


 そして、ふたつを検討したうえで僕は二を選ぶ。一はやっぱりリスクが大き過ぎるんだ。せっかく苦労して相手に触れて、トレードを試しても全部失敗したらトレード前と何も変わらない。決め手を欠いたままだ。


 でも、二なら一度でも成功すればその後のトレードが失敗しても相手のレベル四のスキルをひとつは僕の生活系のスキルなんかと交換することができる。【爪術】【跳躍】【敏捷】どれを交換してもフレイムキマイラの戦闘力をかなり削ぐことができる。これは仮に【火無効5】に届かなかったときに大きな意味を持つ。


 後の問題は、あいつに何度も触れなきゃいけないってことか……父さんとガンツさんに動きを牽制してもらえば近づくことはたぶんできると思うけど……あれに触るのか……いやいや! 駄目だ、そんなこと言っている場合じゃない。このままなら皆殺されちゃうんだから腕の一本や二本惜しんでちゃ駄目だ! 幸い今なら母さんから借りている【回復魔法】もある。僕がやるしかない!


「父さん! あいつを倒すのにひとつ提案があるんだ」

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