第9話 リューマ → 10歳
「いくよ、モフ!」
『きゅきゅん!』
「リューマ! 気を付けるのよ!リミちゃんと仲良くね!」
「はーい!」
剣を持って槍を背負いながら家を飛び出す僕に声を掛けてくれたお母さんに元気よく返事をすると、ひと跳びで僕の前に飛び出したモフの後ろ姿を追いかける。
この二年で僕も大きくなったけど、モフもかなり大きくなった。
最初の頃のように僕の肩の上に乗るのはもう厳しくなってしまったけど、今でも横になると首筋辺りに寄ってくる。僕も寝る時はそこにモフの柔らかい感触がないと落ち着かなくなっちゃってる。
僕とモフは本当にいつも一緒で、村の人たちも最初こそ僕が魔物を連れて帰ったことに動揺してたけど、モフの愛らしさを日々見せつけられたせいで、いまでは皆モフのこと受け入れて村のマスコット的存在になっている。
狩りにはあれからもお父さんと何回か行ったけど、あの時のように魔物を出くわす訳でもなく、罠にかかっている獲物もちゃんとした獣だけだった。初めての狩りであんなことがあったのは珍しいことだったみたい。もちろんお父さんが魔物の気配を探知して避けてくれていたんだと思うけど。
モフとはいつも一緒なので、当然狩りにも一緒に同行している。その際には小動物をモフが仕留めてくることもあって、そのせいかどうかわからないけどモフのレベルも少し上がっていた。
名前: モフ(従魔)♀
状態: 健常
LV: 3
称号: リューマのペット
種族: 角耳兎
技能: 愛嬌3(+1補正) 跳躍2 毛艶2
主人: リューマ
当初は【愛嬌】しかなかったスキルも、兎らしく【跳躍】のスキルを覚えていた。後は僕がモフの毛並みを維持するために執拗に毛の手入れをしていたせいか【毛艶】なんてスキルを覚えていて、最近は僕が手入れをしなくてもいつでもふわふわもふもふ状態だった。
ちなみに10歳になった僕のステータスは
名前: リューマ
状態: 健常
LV: 8
称号: わらしべ初心者
(熟練度が同じスキルのトレード率が85%。以降対象レベルが1上がるごとに成功率2分の1)
年齢: 10歳
種族: 人族
技能: 剣術2/槍術2/隠密2/統率1/木工2/料理1/手当1/解体1/調教2/掃除2/採取/裁縫1
特殊技能: 鑑定
固有技能: 技能交換
才覚: 早熟/目利き
こんな感じ。半年くらい前にやっと【槍術】がレベル二に、十日くらい前に【剣術】もやっとレベル二になった。あとは村のみんなの為に家具とかを作ってあげてたら【木工】レベルも上がった。瓶詰のスライムも枕元に置いて、いつも寝る前にぎりぎりまで【調教】を使っていたら二日前の朝に起きたらレベル二になっていた。ちなみにスライムは未だにテイムできない。これだけやってダメだと本当にテイムできるのかどうか疑わしくなるよ。スキルは上がったから別にテイムできなくても構わないんだけどさ。
新規としては、トレードで失っていた【掃除】【採取】【裁縫】を再取得しておいた。またいつ必要になるかわからないので交換用に覚えておいたほうがいいかなと思ったから……といいたいところだけど生活系のスキルはいきなりなくなると凄い不便なんだ。だからちょっと頑張ってお手伝いをして再取得した。
最初に覚えたときは結構かかったんだけど再取得は意外と早かった。たしか一カ月もかからないくらいだったかな? これも【早熟】のおかげかもね。
「おお! モフちゃん! 今日も可愛いねぇ、ほらこれをお食べ」
『きゅん!』
「ありがとう、ネルばあちゃん!」
村の中を走っていると軒先で日向ぼっこをしていたネルばあちゃんが人参の端材を、モフの鼻先に投げてくれた。ネルばあちゃんが座っている揺り椅子は僕が【木工】スキルで作ったものだ。
今みたいに通りすがりにいろいろモフにくれるのは、実はいつものことなのでモフは慌てた様子もなく、跳躍して空中で人参をキャッチする。
「リュー坊は今日はどこに行くんだい?」
「今日は、リミと川の仕掛けを回収に行くんだ」
「おお、そうかい。それは楽しみだ。たくさんとってきておくれ」
「うん!」
今日はこれからリミと合流して、川に沈めてある仕掛けを回収に行く。ネルばあちゃんは魚、特にウナギが好きなのでちゃんと掛かってたら届けてあげよう。
ネルばあちゃんに手を振って別れるとリミと待ち合わせをしている北門に向かって走る。その後も何人かにモフが餌付けされつつ、一言二言交わしながら走ると北門が見えてきた。ポルック村も最初の頃と比べると倍くらいに広くなっているので大きくなったなぁと思う。
北門前にはワンピースのような服を着て大きな籠を抱えたリミが耳と尻尾をぴくぴくと震わせていた。あ、少し遅くなっちゃったからちょっと機嫌が悪いらしい。
今はちょっと不機嫌で頬が膨らんでいるけど、最近のリミは背も伸びて来てとても可愛くなってきたと思う。僕はいつも一緒にいるから正確に評価できていないかもだけど十人とすれ違ったら七、八人は振り返るくらいかなぁと思ってる。
「りゅーちゃん! 遅いぞ」
「ごめんリミ。またモフが餌付けされてて遅くなっちゃった」
「こ~ら! モフちゃんのせいにしないの! モフちゃんがそうなるのはわかってるんだから、そのぶん早く出ればいいでしょ」
「あれ? この前はこれで誤魔化せたのにな」
「あ~! ずるい! やっぱりこの間のも嘘だったのね!」
「あははは! ごめん、ごめん。次からはちゃんと遅れないようにするから」
「もう! りゅーちゃんてば」
そう言ってぷいっと顔を背けるリミの胸元には僕が作ってあげた木彫りのペンダントがかかっている。【木工】を得てから作ったジェミナという花を模した物だ。ジェミナという花は必ずふたつの花がセットで咲くという綺麗な花で木彫りも半分重なり合った2つの花を意匠して、それぞれの花の中央にお父さんから貰ったゴブリンの魔晶をはめ込んである。
リミはとっても気に入ってくれたみたいで、プレゼントした日からそのペンダントをしていない姿を見たことは一度もない。そこまで気に入ってもらえるのは作った人間としてはとても嬉しい。
「さ、早く行こう。リミの好きな魚が待ってる」
リミの手から籠を受け取ると片手で抱えてもう片方の手でリミの手を取る。
「にゃ! う、うん! 早く行こうりゅーちゃん!」
うん、相変わらず魚が絡むとリミはちょろい……ん? なんだかリミの可愛さが増した気がする。今なら十人中九人くらいは振り返るかもしれない。
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