Two

Two



 次に話したのは、父だった。

 正直言うと、僕はすごく怖かった。

 でも言った。

「お父さん」

 その日は雨で、外の雨水が地面を激しく叩いていた。

「おばあちゃん、死んじゃうよ」

 今度は、試しに直球で投げてみた。

 父の顔は、鬼みたいだった。それが始めに思っとことだ。

「お前、いい加減にしろよ。他人の親が死ぬとか言って、考えた事あるか? 他人の気持ち」

 違う、僕はただ。

 父は僕に近づいてくる。

「それ以上、そんな馬鹿げた事を言うな」

 最後の時間をおばあちゃんと過ごしたいだけなんだ。

 父に口答えしたのは、その時が初めてかもしれない。

「ちょっと僕の話を聞いてよ、本当なんだよ、だから最後におばあちゃんと過ごそうって言いたいんだよ」

 父は聞く耳を持ってくれない。さっさとこの話を終わらせたいのかもしれない。

 溜息をついて、僕に背を向けた。


 その後何度も、父と母に言った。

 うんざりした目で、父に見られるようになった。

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