第3話 ⑵


 ドアの中に入ると、雷坂がいた。俺は相変わらず先生から預かったプリントや宿題やらを、彼女に手渡す。彼女の部屋で流れるわけのわからない英語のの歌。

「ありがとう、北本くん」

「いやお前、北川だから、毎回間違えるなよ」

「ごめんごめん」

 彼女の《×××××××》は相変わらず×××いた。別に心は痛まないが、さっきわざと俺のことを無視した……なんだっけ? 春野と彼女が会っている事が分かった以上、面白いと思った。

 これ以上進んだらどうなるんだと、気になった。

「すごい量のCDだな、まぁ、初めてじゃないけど」

「家の中はもっとすごいもんね」

「お前はちょっと整理しろよ」

「これはファッションなの」

「あ、そ。じゃあ俺帰るわ」

 そう言って、俺はカバンを肩にかけて、立ち上がる。

「そんな嫌そうにしてるけど、来てくれるんでしょ。素直じゃないな、北川くんは」

「うっせ、先生に頼まれたから来てんだよ。俺の代わりなんていくらでもいる」

 俺はそれ以上の会話をする気がないので、部屋を出る。

 明日、春野の家に行って、プリントを届けることを、思い出した。

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