第8話 春の飲み物
苺ジュースを飲んでいる。冷蔵庫を開けると残ってたんだ昨日の妹の飲み残し。
ラップで蓋をしたコップの中のいちごとみるく。もう溶けてるけれど紅と白のショーウィンドウの春物衣料みたい。
ぱっと頭の中に色んなキャラのお花が咲いたよ。
三月に咲く辛夷(友情・歓迎・信頼)。とか、
四月のラナンキュラス(とても魅力的・晴れやかなそれも・丸ごと輝き放ってる)。
そして五月になると何といってもチューリップ(永遠の愛に思いやり)。
人に話すのはちょっと恥ずかしいけれど、図鑑の中の彼女たちには、素敵な人の写真集に溺れ包まれるみたいにさ、そこには私一人しかいないもん。それは映画やドラマより素敵かも。だって、ストーリー作るの私だもの。私の世界の真っただ中にいられるんだよ。おとぎの国にも負けないよ。
苺ジュースを飲んでいる。
いちごとみるくが舌先でころがる。とても甘くて脳がよろこぶ。でも、もうね。
飲み込まなっくっちゃ。
そろそろ夢が醒める季節だ。
ムラのお祭り サクラチル @DIOGENES-X
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