第116話 不穏の前兆

 夜の王城、中庭。

 噴水に腰掛け、夜風を浴びていた金髪の青年は、近付く足音に気付いて視線を向ける。


「ルナか」

 

 夜闇で視認性の悪い中、彼は迷わず名を呼ぶ。

 同時に窓から漏れる光の下へ、


「シスル様」


 長い黒髪、豊満な胸を持つ女性が姿を現す。


「お尋ねしたい事があり、探していました」


 賢者ルナ。

 青年と同じ、女神に祝福された存在の一人。


「何かな?」


「……宜しかったのですか? ユキナは」


「剣聖の奇蹟ギフトは不安定になるだろうね」


 なんの躊躇いもなく、シスルは告げた。

 ルナは顔を顰めるが、すぐに表情を繕う。


「それが分かっていて、何故……」


 不自然なルナの様子を見て、シスルは微笑んだ。


「そろそろ動き出す頃合いだ。半端に取り繕っても問題の先延ばしにしかならないからね」


 彼は、何も間違った事は言っていない。

 そのあまりの完璧さが、いつも不気味だった。


「……貴方なら、他に幾らでも」


 反論の余地はない。

 あったとしてもそれは、自己満足に過ぎない。

 偽善。そう理解していても……


「ルナ、僕だって人間だよ」


 それでも、ルナが口にした言葉を一笑して。

 

「ユキナが立ち直るまでの間、フォローを頼むよ。出来れば、何かキッカケを作ってあげて欲しいな。今の状態で戦わせるのは流石に可哀想だからね」


「……それは貴方の役割でしょう」


「本来はね。でも今の僕に出来るのは、生き残りを探してみるくらいかな?」


「あの村の話ですか?」


「うん。もう調査隊を送って、報告は貰っている。そうそう、お陰で不思議な事が分かったんだよ? あの村からは一人も遺体が見つかってないってさ」


 あまりに不可解な情報に、ルナは眉を寄せた。


「え? それは……」


「公には、今回も魔人のせいにして国中を扇動するつもりみたいだけどね。あの付近は僕達が四天王の一人を討ったから、報復を受けたって事にしてさ」


 肩を竦めて見せ、シスルは薄ら笑ったまま核心に触れる。


「でも真実は違う。そう思わないかい? 賢者」


「……知らないのは本人だけ、ですか」


「まぁ、そういう訳だ。頼んだよ? 絶望の淵から自ら這い上がり、何度も立ち上がれる者。それこそ女神様に見出された英雄である、僕達に求められる最も期待される資質らしいからね」


 青年は立ち上がり、自らの尻を叩いた。


「英雄になる時が来たんだよ、ユキナは」


 クスッと笑って、シスルは背を向けた。

 後ろ手に手を振りながら去って行く。


「貴方が、それを言うの?」


 そんな青年の背を見送りながら……ルナは胸元で強く拳を握った。


「挫折した事なんて一度もない癖に」


 悔しくて悔しくて堪らなかった。


「全部分かっていて、散々人を弄んで……」


 認めたくないのに、認めざる得ない。


「……私達は、貴方の付属品なんかじゃない」


 歯噛みした彼女に出来る事は、青年と真逆の方向に立ち去る事だけだった。






 異界から招いた客人二人が、襲撃を受けた翌朝。


「どういうつもりじゃ!」


 白竜家に借りている自室。

 通信機の受話器に、赤竜の姫は怒鳴っていた。


『もー。私に怒鳴られても困るよー』


 受話器から発される音声は、幼い少女のものだ。


 少々舌足らずな通話相手に、メルティアは激情を隠すつもりはない。


「此度の襲撃は、お主の家直属の部隊の人間も参加していた! 悪いが遺品を改めさせて貰ったぞ!」


『だから、まだ家を継いでない私に言われてもぉ。それに、メルちゃんの自業自得でしょー?』


「あまりに横暴じゃろうがぁっ! 言っておくが、此度の件は責任や賠償を求められても応じぬぞ! 妾はっ!」


『メルちゃん。とりあえず落ち着こ? さんはい、深呼吸ー!』


 気の抜けた声に気勢を削がれてしまって。

 頭を抱えたメルティアは、


「はぁー……」


『はい、よくできました♪』


 受話器から、パチパチと拍手の音がした。

 イライラするが、言及しても仕方ないと呆れる。


「馬鹿者……これは溜息じゃ」


『えー。まぁいっか。じゃ、昨晩の話に戻るけど』


 ようやく、まともに話す気になったらしい。

 受話器の線を指先にくるくると巻き付けながら、メルティアは深く椅子に背を預けた。


『まず、メルちゃんの旦那様候補を襲った傭兵達。彼等は、首都を拠点に活動してる傭兵団でねー? 組織名は【ケルベロス】。私達竜と同じで、神話の時代から語り継がれる、三頭の冥府の番犬の名を』


「不届者の名の由来なんぞ、興味がない」


『冷たいなー。それで、今回の雇い主だけど』


 突然、核心に触れてきた通話相手にメルティアは表情を強張らせる。

 しかし、


『いやー、ごめんねー。それはまだ調査中でー! てへへ♡』


「切るぞ?」


『ま、メルちゃんの元候補者。今回は無関係だよ。それだけは確かだねー。ざーんねん』


「…………」


『アテが外れたかな?』


「……いや、そうじゃろうな」


 剣聖とまで呼ばれ、竜殺しすら叶うと言われる。

 そんな剣士を刺客として送り込まれたのだ。

 もし仮に事実だとすれば、色々と腑に落ちない。


 そんな無駄を、狡猾な彼がするだろうか?


「まぁよい。今後なにか分かったら連絡してくれ」


『ま、拒否権ないもんね。もっちろん協力するよ。身の潔白を証明する為にもねぇ』


 話が早くて助かる。

 そう感じ、メルティアは表情が緩むのを感じた。


「……近々そちらに出向くつもりじゃ。ご両親にも宜しく伝えておいてくれ』


『硬い! 硬いよ、メルちゃん! 余裕がないのは仕方ないけど、少しは肩の力を抜かないとっ!』


「お互い様じゃろ。こんな時勢じゃからな」


『そうだけどさ、焦っても……いや、ごめん』


 尚も諭そうとした通話相手は、思い返したらしく謝罪の言葉を口にした。

 お陰で少しだけ、メルティアの表情が緩む。


「謝るな。妾は嬉しかったぞ」


『そっか。なら良かった♪ あ、ところでさー』


 あまりの切り替えの速さに呆れる。

 もう面倒だ、聞くべきも聞いた。

 すぐにガチャ切りしてやろうかと思ったが……


『メルちゃんの新しい旦那様候補の人にさー』


 次の瞬間。メルティアが耳にした言葉は、


『私のも触ってみて欲しいんだよねー』


「………………は?」


 決して、無視出来ないものだった。

 絶句していると、楽しそうな声が耳に響く。


『ほら、私もまだ独りだし? 興味あるんだよね。メルちゃんとリアちゃん……二人の竜装に選ばれた候補者なんて、前代未聞じゃない?』


「……むぅ」


『なら、もしかしたら私もかなって思うじゃない。ねね? いいでしょー?』


「……本人にその気がないのじゃ。関わるな」


『なりふり構ってられないのは、みんな一緒だよ。でもまぁ安心して? 私のは純粋に好奇心だから。別に奪い取ろうなんて思ってないし♪』


 そう言われても、安心なんて出来るはずがない。

 初めて竜装に触れられ、引き抜かれた時の感覚。

 あれを知らないから言える、無責任な台詞だ。


「頼む、これ以上掻き乱さないで欲しいのじゃ」


『えー、私だけ仲間外れは嫌だなー。そーいう訳で近いうちに会お? よろしくねー! ばーい♪』


「あっ、待てっ! まだ話は……っ」


 通話が切れた事を確認し、虚無感に苛まれながら受話器を置く。


「はぁー………」


 椅子の背もたれに深く深く沈んだメルティアは、大きく溜息を吐き出して。


「全く。次から次へと……妾は、どうすれば……」


 答える者はいないと知りながら、呟いた。






 

「昨晩は大変でしたね、シーナ」


 昼前。自室の扉が開くと同時、訪れたゼロリアは開口一番そう言った。

 ソファで寛いでいた俺は、すぐに起き上がる。


「ノックくらいしろよ」


「構わないでしょう。我が家の屋敷なのですから」


 早急に部屋を借りる必要が出来たらしい。

 メルティアに相談しよ。


「突然なによ? 不躾ね」


 俺の対面で椅子に座り、銃の分解整備をしていたミーアも怪訝な表情で言うが、無駄だ。


 もし言葉が通じても、まともに聞かないからな。


「それで、要件は?」


「言ったでしょう。貴方を労わりに来ました」


 とても信用出来ない。

 こいつと関わると間違いなく疲れる。


「不要だ。出て行ってくれ」


「良いのですか? 随分消耗しているようですが」


 敵意に満ちた眼差しが、ミーアに向けられる。

 こいつ……労わる気なんて微塵もないな。


「それにしても、酷い臭いがする部屋ですねぇ? この私に我慢を強いておきながら……ふふふ♪」


 ……竜姫様は鼻も効くから困る。


「この小娘さえ消えれば……」


 顔も怖いし、勘弁してくれ。


「なに? 私に何か用かしら? 負け竜さん」


 だからやめろって……ミーア。

 お前はこの状況で、なんで平然と睨み返せる?


「あー、待て。頼むから二人共落ち着け」


 これは流石に拙い。機嫌を取っておこう。

 思えば、こいつには先日の借りもある。


「ゼロリア。わかったよ、話を聞こう」


 両手を上げて降参の姿勢を見せる。

 途端、ゼロリアの高圧的な雰囲気が和らいだ。


「……そうですか。では、着いて来てください」


 踵を返し、小さな背が退出していく。

 うーん。身体は辛いが、我慢しなきゃ。

 なんとか凌ぐしかないもんな。


「シーナ」


 立ち上がると同時、呼び止められて振り向く。

 ……また、ミーアが不安そうな顔をしていた。


「何をしているのですか? 早く来なさい」


 でも、今は構ってやれる時間はない。


「ちょっと話をして来るだけだ。心配するな」


「……気を付けてね」


 行くな、と言わないのは助かる。

 この信頼には一生、応え続ける義務がある。


「行って来る」


 俺は、ミーアから貰った雪華を強く握り締めた。

 

 




 連れて来られたのは、ゼロリアの私室だった。


 俺達の客室は勿論、メルティアよりも広い室内は

至る所に豪華な調度品が目立つ。


「どうぞ、入ってください」


 ……筋金入りの綺麗好きらしい。

 広い室内は清掃は勿論、整頓も完璧だ。


「そちらに腰掛けて下さい」


 ベッドには皺一つなく、全く生活感を感じない。

 全く。庶民の俺には落ち着かない部屋だな……


「シーナ。乙女の部屋を、あまりジロジロ見るのは感心しませんよ?」


 は? お前、乙女って年齢かよ。

 六十代半ばのメルティアより歳上の癖に。


「それは悪かったな」


 大人しく促されたソファに座る。

 すると足早に近付いて来たゼロリアは、


「お、おい……」


 俺に背を向け、スカートを抱えると……


「よっと……」


 開いた俺の股の間に、小さな尻を収めてしまう。

 って、なにしてんの? こいつ。


「……なんのつもりだ?」


「これなら私の美しい翼が間近で見れますからね。勿論、存分に触れて頂いて構いません」


 あー、なるほど?

 前にメルティアの黒翼の方が好きだと言ったのが気に入らないのか。


「触らない。お前の白翼も綺麗だとは思うが、俺はメルティアの黒い翼の方が好きだからな」


「では、抱き締めて下さい」


「は? なぁ、話聞いてたか?」


「現在、貴方の生殺与奪権は私にあります」


 え? あ……っ、拙い。

 この状態じゃ、抜剣すら出来ないぞ。


「ゆめゆめ、お忘れなきよう」


 にやり。

 首だけで振り返って来たゼロリアの頬は紅潮し、完全に主導権を握ったと確信した表情をしている。


「……お前」


 くそ、やられたな……迂闊だった。

 まさか背を向けた相手に脅迫されるとは。


「俺を労わるって話は嘘かよ」


「いいえ本当です。本来は食事やお茶に招待して、穏やかに過ごすべきなのでしょうが……ねぇ?」


 ゼロリアは困った表情で頬に手を添える。

 この腹黒め。

 俺が飲食の同伴を断っている事を利用したのか。

 

「安心しなさい。そう警戒しなくても、私は貴方に危害を加えるつもりはありません」


 手を伸ばし、テーブルの上から黒い板を手にしたゼロリアは、部屋の隅にある大きな黒い箱に向けて板のボタンを押す。


「電視機はご存知ですか? 蛮人の剣士さん」


 途端に黒い箱が光って……

 驚く事に、見覚えのある光景を映し出した。


「これは……?」


 メルティアと、ユキヒメ……?

 これは先日、二人が戦ってる時の映像か。


「こちらは先日、敷地内で撮影した動画です」


「動画……? 音はないのか」


 魔法、じゃないな。また機械技術か。


「はい。残念ながら音声はありません。ですが……よく撮れているでしょう?」


「……あぁ」


 映像の中では、メルティアが首に刃を添えられて無力化され、怯えた表情で震えている。


 その様子を見て、笑みを深めたゼロリアは、


「ご要望なら、一時停止やスロー再生も可能です。これを活用すれば、ユキヒメ攻略の糸口が掴める。そうは思いませんか?」


 一時停止に、スロー再生……だと?

 あの女の常軌を逸した剣技を存分に観察出来る?


「……おー」


 す、すげぇ……なんだこれ。

 確かに、これなら攻略の糸口が掴めるかも。

 

「貴方も彼女も、カメラで捉え切れない程の動きをしていたので苦労しましたよ? ですが、私の手で可能な限り編集してあります」


 そう言って、ゼロリアは映像を停止させた。

 本当に途中で止まった……すっげー。

 

「どうでしょう? この先は流石に有料ですよ」


「……最高の労いだな」


 確かに凄いが、有料なのかよ、金ならないぞ? 

 まだ絶賛無職だからな。


「今の貴方は実益を重視すると思いましたので」


「あぁ、参ったよ。それで? 要求はなんだ?」


 観念して尋ねると、ゼロリアはクスリと笑った。


「今なら、背中からギュッと抱き締めて頂ければ、その間は見放題にしましょう」


 ……ち、畜生。今回は従うしかないか。

 ごめん、ミーア。不甲斐ない俺を許してくれ。


「……これでいいかよ?」


 小さな身体に腕を回して抱き寄せる。

 途端。白竜姫様は遠慮なく全体重を預けて来た。


「ん……はい。なかなか悪くありませんね。ふふ」


「ほら、対価は払ったろ。早く始めてくれ」


 こいつ、ひんやりしてて抱き心地が良いな。

 う……なんか凄く良い匂いが……!


「はい。あ、ご要望は耳元で囁いて頂きますね?」


 はぁ? こいつ……! 好き勝手言いやがって!

 いや、我慢だ。今は我慢しろ……!


「では、始めますね」


 異世界の剣聖、ユキヒメの剣技。


 あの抜刀術を解明し、攻略の機会を与えてくれた報酬としては破格な条件。


 だから、今回。俺は悪くない……っ!


 心中で言い訳を並べていると、映像が再開した。

 それから暫く無言で見ていると……早速気になる場面になった。


「この技……確か抜刀術、疾風と言ったか?」


 画面ではユキヒメの剣を受け切れず地を転がり、即座に体勢を整えた俺が顔を顰めている。


「納刀時か、技を繰り出す直前に技名を言うのは、彼女の扱う桜月一刀流の特徴です。稀に斬った後、残心と呼ばれる状態の時に言う事もある様なので、あまり期待しない方が良いかと思います」


 確かに、ユキヒメは技名をいちいち口にしてた。

 これは流石に明確な弱点だろう。


「どんな技か覚えておけば、身構える事は出来る」


「ですが、悟られれば利用されます。異なる技名を告げるなど、やりようは幾らでもありますからね。彼女に対し受けに回るのは得策ではないでしょう」


 うーん、納得。

 ゼロリアの言う通りだな。


「それに今の貴方には彼女の太刀を受けられる力はない。年齢的に仕方ないのでしょうが、未熟な身体ですからね」


 映像では全く視認出来ない乱舞を凌いだものの、

腹を蹴られた俺は苦悶の表情で転がっていく。


 紅金に輝く赤竜の宝剣を手放していないだけマシだが、全く使えていない。

 最強の剣があっても、使い手がまるで駄目だ。


「……わかってるよ」


 ゼロリアに庇って貰えなければ死んでいた。

 今見ても、そう確信出来る場面だ。


 ユキヒメは、常軌を逸した速さだけではない。

 凄まじく鋭く、重い太刀を振るってくる。


 しかし、剣さえ当てれば斬れる。


 奴はユキナとは違い、普通の人間だ。


 半獣である以上基礎能力は俺より高いだろうが、無敵に近い異能を持っている訳ではないはず。


「もっと身体を鍛えないと……」


 元々、わかっていたつもりだった。


 今の俺では、あの勇者の聖剣は受けられない。

 女神の造った剣士の異能を幾つも使える剣聖も、あの細腕からは想像出来ない重い剣を使うはず。


 身体能力の向上は今後も急務だ。

 

「それなら私とそちらのベッドに行けば、今すぐに解決出来ますね?」


 代わりに俺の人生が犠牲になるけどな。


「断る。でも、この時はありがとう。助かった」


「素直ですね? 大変結構な事です」


 そこから、ゼロリアとの共闘場面が始まった。


 次々と生成される氷塊の中を駆けるユキヒメと、それを追う俺。


「うーん……?」


 確かに追い切れてない場面も多い。

 それどころか、速過ぎて全く分からない。

 ス、スロー再生。いいですか? 見えない……


「戦闘中も感じましたが、貴方は私の指示に素直に従ってくれた。私達の相性は悪くないと思います」


「……まぁ、そうかもな」


 ゼロリアの支援と指示には、本当に助けられた。

 今こうして見ても、それは認めるしかない。

 肝心の自分の姿は全く見えないけども。


「はい。メルティアよりも私の方が、貴方の長所を活かす事が出来る。先代である両親も健在で」


「今はユキヒメだ」


 映像の中では、納刀したユキヒメが屋敷の屋上に立つミーアに狙いを定めている。


 今更、分かり切っている結論には興味がない。


「お前でも、こいつは倒せなかった。そうだろ?」


「ですから、成体になった私と守護者としての力を得た貴方なら……」


「保証はあるのか? こいつは竜殺しとも呼ばれ、恐れられてると聞いたが」


 尋ねると、ゼロリアは眉を顰めた。


「忌々しい呼び名です。実際に誰か討たれた訳でもないのに……」


「そうなのか?」


 じゃあ、メルティアがあんなに怯えてた理由は?

 そう尋ねる前に、ゼロリアは不機嫌で口を開く。


「当たり前です。竜殺ドラゴンスレイヤーしとは、我々を討てる可能性を示した者達に不遜な輩が付けた渾名が、そのまま定着してしまったもの。彼女の持つもう一つの名、剣聖とは違い非公式の呼び名なのです」


 二つ名に公式とか非公式とかあるのかよ。

 だけど、まぁ納得の理由ではある。


「そうか。それで? お前達を討てるかもしれない竜殺し様は、ユキヒメの他にも存在するのか?」


 遠慮なく尋ねる。

 するとゼロリアは苦虫を噛み潰したような顔で、


「……数は、少ないですが」


 いや、声ちっさ。

 大事なところだから、ちゃんと教えて欲しい。


「ちなみに、あと何人居るんだ?」


「国内には二人。いえ、彼女を含めれば三人です」


 はぁ? 結構居るな。最強種族、駄目じゃん。

 あんなのが他に二人も居るの? マジで?

 ホントに勘弁して欲しいんだけど。


「ですが、勘違いしないでください! 私は」


「勘違い? 負けただろ。今のお前じゃ勝てない。喧嘩自慢らしいメルティアも怯えて頼りにならなかった」


 映像の中には、シラユキの姿があった。

 自らの剣が砕け散る中で、意識を失って……


「あの娘は所詮出来損ないです! 一緒にしないで下さい!」


 力なく、地に向かって落ちていく。

 俺の弱さのせいで大怪我をした、仲間の姿が。


「同じだろ。奴は狂人で、次は本気で殺しに来る。竜のお姫様であるお前達がどの程度か知らないが、誇りで命は守れないんだよ」


 華奢な身体からは、血が噴き出していた。

 決して少なくない出血量だ。

 何度見ても、胸が締め付けられる程に痛くなる。


 幸い命は助かった。助かってくれた。


 だが、シラユキが大怪我を負ってしまったのは、あんな無茶をさせたのは……俺の責任だ。


「今の俺達じゃ、到底敵わない相手だ」


 もう二度と、あんな光景は見たくない。

 そう思って、考え続けて。それでも俺は、何度も繰り返し続けている。


「……シーナ。貴方、自分が何を言っているか理解してますか?」


 いい加減、成長しなければならないんだ。俺は。

 その為にも、ユキヒメには必ず報いを受けさせてやる必要がある。

 もう二度と、あんな真似が出来ないように。


「あぁ。そして、あの女の狙いは俺だ」


「……? あっ……まさか、貴方は」


 もう誰も、巻き込む訳にはいかない。

 今の結果は全て、俺の我儘が原因なんだから。


「お前は手を引け。元々無関係だろ」


「貴方が敵う相手でもなかったでしょう!」


 怒鳴ったゼロリアは、黒い板を机に置いて立ち上がった。


 すぐに振り返り、両手を俺の両頬に添えた彼女は至近距離で見つめて来る。


 しかし凄い形相だな? 可愛い顔が台無しだ。


「確かに彼女の狙いは貴方です。責任を感じるのも分かりますっ! ですが、勇気と無謀は似て非なるものなのです! それに元凶を辿れば、責任を負うべきなのは貴方を連れて来たメルティアで……!」


「そのメルティアと協力出来ないなら、俺もお前に頼れない」


「……っ! で、ですから。貴方は、私が」


「俺は、自分の意思でメルティアに着いて来た」


 青銀の瞳を真っ直ぐに見つめ返して告げる。

 なにを勘違いしているか知らないが、俺は……


「俺が今ここに居るのは自分の意思だ」


 俺の為に命を張ってくれ。

 そんな事、誰にも頼んだ覚えはない。


『妾と共に来い』


 だけどメルティアには、俺を誘った責任がある。

 俺が掴んだのは、他でもない彼女の手だ。

 だから俺は、今更何を知っても裏切らない。


 いつか、別れる日が来る。その時まで。


「……貴方って、本当は馬鹿なんですね」


「よく言われる」


 最近は減ったけどな。

 尤も、最近は自覚があるので否定は出来ない。

 そんな嫁も今は、毎日俺の帰りを待っている。


「開き直られても困りますが……そうですね」


 ゼロリアは呆れた表情で俺の顔から手を離した。


 机から黒い板を手にした彼女は、また俺の股の間に腰を下ろす。


「……おい」


「なんですか? また最初から見るのでしょう? 昼食の時間までは付き合いますよ」


「別に付き合わなくていい。それの使い方さえ教えてくれれば、後は自分でやる」


「嫌です。さぁ早くしてください? このままでは始められないじゃないですか」


 どうしてそうなるの?

 尤も、あの壁に掛けられた白銀の剣……竜装。

 原因は明白だが、相変わらず押しが強くて困る。


「お前さ、本当に俺で良いのか?」


 まだ全然親しくもない男の腕に抱かれるなんて、普通の女の子なら嫌がるべきだと思う。


 ただでさえ綺麗好きで、この世界の人間が嫌い。

 初対面では、そんな白竜姫様だったはずだが……


「はい。私は貴方が良いのです。まだ短い付き合いですが、貴方は知れば知る程に欲しくなる」


 今では、積極的に甘えて来る。

 俺の胸に後頭部を預け、恍惚とした表情で。


「いつか私は、必ず貴方と契る。その時まで私は、貴方を死なせる訳にはいきません」


 こんな堂々と女神の力を目当てにされてもな。

 全く嬉しくない。

 

「今後、ユキヒメは私が退けます。私が貴方を必ず守ります。ですから、お願いします。私の庇護下に入り、傍に居なさい」


「はぁ……」


 それはまた健気な事で。

 絶対に騙される訳にはいかない。


「お前一人を矢面に立たせる訳にはいかない」


「人の身のままでは、剣聖には勝てません」


「じゃあ手を貸してくれよ、友人として」


「は? 友人? お断りします」


 きっぱりと断られてしまう。

 凄い表情だ。そんなに嫌がらなくても良いだろ。

 

「なんでだよ」


「友人関係は互いに対等でなければ成立しません。故に、竜たる私は同族以外の友人は作りません」


 ……参ったな。なんか納得させられた。

 とは言え、下手な提案をする訳にはいかない。

 めんどくせぇ、どうしろって言うんだよ。


「それにもし貴方がメルティアを選んだとしたら、私は貴方を生涯恨み、目の敵にし続けるでしょう」


「…………えぇ」


 唯一友達になれるまで先に方法が潰された。

 嫁にするか敵に回すか? なにそれ……?


「ですから貴方が私と対等かつ、友人以上の関係になりたいと望むのなら私を選びなさい。それ以外に私が貴方の存在を認める事は絶対にありません」


 だから、なんなんだよ? その二択は。

 選ばなかったら存在自体許されない?

 いや、待ってくれ。極端なんて話じゃないぞ。

 

「……今は、ユキヒメだと言っただろう」


 苦しい。我ながら苦し過ぎる。

 流石に気付いたらしく、俺に冷やかな青銀の瞳が向けられる。


 そうだよ、逃げたよ。

 だって、どうしようもないもん!


「はぁ……とにかく、貴方は私が守りますから」


「お前は関係ないと言っただろ」


「そうですね? ですが、貴方は言いました」


 ふと、青銀の瞳から不思議な力を感じた。


「これは私の意思です」


 ジッと見つめてきた白竜姫の表情は真剣だった。

 射抜かれるほど強く、見惚れるほど綺麗な瞳だ。


「つい最近、お前が殺そうとした奴だぞ? 俺は」


「はい。そして貴方に敗れ、我が至宝を無碍に扱われ、ずっと待ち望んでいた理想の番の夢を絶たれ、この短い間で今まで抱き続けていた竜としての誇りを幾度と踏み躙られて……」


 数秒前まで、侮蔑の色を宿していた瞳なのに……

 今は何故か、全く目が離せない。


「貴方に拘る他に、自尊心を保てなくなった哀れな雌竜が今の私です」


 ……って、待て待て。

 酷い言われようだが、全部自業自得だろ?


「責任、取ってくださぃ……」


 か細い声で呟いた白竜姫様は俺の胸に擦り寄って来るが……騙されてはいけない。

 

 俺は断固として認めない。

 認める訳にはいかないのだ。


「お、おい……ゼロリア?」


 俺は悪くない。

 確かに、酷い事をされた覚えはある。

 だが、俺がした覚えは一度もない……はず。


 そうだ。正当防衛だ。俺は悪くない。


「これが私の意思……覚悟と捉えて頂いても構いません」


 ……空いた口が塞がらない。


 女神、お前のせいだぞ?

 運命の竜姫様だけじゃなくて、悪戯に他の竜姫の宝剣まで使えるようにしたせいだからな?


「貴方は私が守ります。貴方が私より下等な種族である内は、異論は断じて許しません」


 マジでふざけるなよ、女神様。


 俺が傷付くのは今更だ。諦めてる。

 でもな……俺のせいで誰かが傷付くのは違う。


「必要ない」


 俺は、普通の人間だ。

 唯の一度も誰かの為になんて戦った覚えはない。

 特別な力は、確かに与えられた。

 だけど、俺は……


「いいえ、必要です。私には、貴方が」


「…………」


 俺の芯は、辺境の小さな村で生まれ育った村人。

 あの頃からまだ、何も変わってなくて。


「いつか必ず報われると信じていますからね?」


「…………」


「シーナ?」


 生涯守り続けると誓った女の子を奪われて。

 変わり果てた彼女の姿から目を背けて。

 生まれ育った故郷からも逃げ出して……


「なんですか? 急に黙り込んで」


「いや……」


 いつか必ず……か。

 俺も昔は、そう信じていた。


「お前もいずれ思い知るさ」


 あの日から、俺は……俺の我儘を通す。

 その為だけに戦うと決めた。


「はい? なんですか? 急に」


 誰かの為に。

 そう想い続けて生きるのは愚かだと思い知った。


 それでも他人に手を差し伸べたいと思ったなら、見返りを求めてはいけない。


 今の幸せを失いたくないから、俺は戦う。

 だが、ゼロリアはそうじゃない。

 

「……いや、なんでも」


 生まれながらに恵まれている白竜姫様と俺では、求める水準が違うのは当然ではある。


 だからこそ羨ましくて、鬱陶しくて……

 願わくば、あまり関わり合いたくない。


「あの……なにか私、貴方の気に障るような発言をしてしまいましたか?」


 今まさに気に障っている。

 それすら理解出来ないから、分かり合えない。

 そう素直に口に出来れば苦労しない。


「いや……」


 とは言え、今の俺にはプライドの高い白竜姫様を納得させられる程の説得力は皆無だ。


 どうしたものか、と悩んでいると。

 

「おい、ゼロリア。なぜこの部屋からシーナの声がするの……は?」

 

 不意に、キィィ……と。

 部屋の扉がゆっくり開き、メルティアが現れた。


 あ、やば。

 そう思った時には、手遅れだった。


 入室と同時、俺達を見てピシッと固まった彼女は、金色の瞳を爛々と輝かせ、小さな肩をわなわなと震わせる。


「全く、不躾な……メルティア。貴女の入室を許可した覚えはありませんよ?」


 対し、俺の股の間に座っていたゼロリアは、俺の首に両腕を回して抱き付いてくる。


「折角叶った逢瀬を邪魔しないで下さい」


 こいつ、平気で誤解を招くような真似を。


 そう思った途端、金の瞳がゆっくりと向けられた先は……当然のように俺だった。


「シーナ。お主、妾にはあんな事を言っておいて」


「誤解だ」


「丁度これからベッドに行くところでした」


 メルティアの瞳が蛇のような縦線に変化した。

 蔑むような視線が凄く痛い。


「…………」


「誤解だ」

 

 情けないが、これしか言えない。

 だって事実だもん。俺は悪くない。


「はぁぁぁ……ゼロリア」


 深く息を吐いたメルティアは、キッとゼロリアを睨み付けた。


「今は、下らぬ事で言い争っている場合ではない。早急に手を打たねばならん問題が起きた」


 なんだ? また面倒事か。

 表情を見る限り大分深刻そうだ。

 

「だからなんだと言うのですか? 貴女に私が手を貸す義理はないでしょう?」


「……リヴィリィが連絡してきたのじゃ」


 メルティアは、俺の顔をジッと見つめている。


 なんだ? 勿論無関係ではないと思っているが、何か手伝って欲しいのだろうか?


 疑問に思っていると、

 ゼロリアはメルティアの視線を追って俺を見て、すぐに何か察したらしい。


「……まさか」


 ハッとした様子で目を見開き、焦りを見せた。


 メルティアは腕を組み、苦虫を噛み潰したような表情でそっぽを向く。


「お主と妾。ならば自分も可能性があるのでは? そう言っておったぞ」


「前言を撤回します。よく相談してくれました」


 俺から離れ、ゼロリアは立ち上がった。

 その横顔は真剣で、事態の深刻さが窺える。

 

「お主にしては存外聞き分けが良いのう?」


「貴女のせいでしょう? 全く。では、話の続きは貴女の部屋で良いですね?」


「構わん。確かに、ここでは出来ぬ話じゃ」


 この殺伐とした雰囲気、二人の様子から察する。

 どうやら、相当厄介な相手のようだ。

 二人共、なんかチラチラ俺を見ているし……


 まさか、ついさっき聞いたばかりの他の竜殺しが俺を狙ってるなんて話じゃないだろうな?

 

「なぁ二人共。俺もなにか手伝った方が良いなら、話を聞くが……」


「結構じゃっ!」

「結構ですっ!」


「お、おぅ?」


 あれ? 二人して、なに? その凄い剣幕。

 荒事なら、どうせ俺の責任だろうに。

 

 ふと、顔を見合わせた二人は無言で頷き合って。


「シーナ、お主には暫く自室待機を命ずる!」


「私が許可するまで、絶対に部屋から出ない事! いいですねっ!?」


 やはり物凄い剣幕で怒鳴ってきた。


「は? いや、散歩くらいはさせろよ」


「口答えは許さん! わかったか!?」

「口答えしない! いいですね!?」


「……えぇ?」


 なんで俺、こんな怒鳴られてるの?


 確かに俺は、襲撃者達を数十人は殺した。

 そんな昨晩の件は悪かったと思う。

 思うが、突然襲われたんだから仕方ないだろう。


「わかったら早々に部屋へ戻りなさい!」

「話が終わったら様子を見に行くからの!」


 まさか流石にやり過ぎだって苦情でも来て、対応に困っているのか?

 もしそうだとすれば、普通に言って欲しい。

 別に邪魔をするつもりはないのに……


「妾を選ぶと言った癖に……」

「…………」


 ……今は言うだけ無駄か。

 とても聞いてくれる雰囲気じゃない。 

 二人共、凄い顔で俺を睨んでいる。

  

「わかったよ。着いて行かないから、早く行け」


「……今の状況を弁えて行動するのじゃぞ?」


「くれぐれも余計な行動は控えるように。では」


 信用ないなぁ。

 俺のせい……ではあるけど、釈然としない。

 二人は連れ立って退出し、静かになった。


 結局ユキヒメとの戦闘、一回しか見れなかった。


「……さて、もう少し見て行くか」


 すぐに部屋に戻っても暇だからな。

 えっと、電視機だったか。

 確か、このボタンで再生出来るはずで……

 

 





 屋敷の廊下に出た赤と白の竜姫達は、神妙な顔で移動を始めた。

 無言で歩く事、暫く……十分部屋から離れた所でメルティアは口を開いた


「……応えると思うか? あやつのも」


 落ち込んだ表情の赤竜姫を一瞥して、ゼロリアは呆れて嘆息した。


「今更ですね。まさかまだ信じていたのですか? 自分だけが特別であると」


「……じゃが、シーナは」


「呆れました。彼に最初に応えたのは、私の半身。その時点で諦めるべきでしょう」


 苛立ちを隠す気もなく、ゼロリアは続けた。


「私だって未だに信じられませんし、信じたくないですよ。ですが認めざる得なかった。貴女の半身が既に私の伴侶に選ばれていた彼に応えたからです」


 ギリリ、と歯軋りの音がした。

 隣を盗み見ると、牙を剥き出しにした白竜姫が額に青筋を浮かべている。


「彼は間違いなく鍵です。きっと私達がこの世界に招かれたのも、貴女が彼を見つけたのも……きっと何か意味がある筈なのです」


「……そう、じゃな」


 否定は出来なかった。

 そんな馬鹿なと笑い飛ばしたかった。

 何故なら彼は、もう何度も示したからだ。


(女神エリナ。シーナに力を与えたというこの世界の神は一体……何を考えているのじゃ?)


 自分の故郷で騎士達の返り血を浴び、天を仰いで立ち尽くしていた少年の姿が蘇る。


 あれだけの力を持ちながら、何故……?


 自分の身の上を少年は、全く話してくれない。

 信じるとは言ったが、やはり真実は知りたい。

 彼の戦闘時の躊躇いの無さは、とても十六歳とは思えない覚悟の証明なのだろうから。


「……彼を手に入れた者だけが、待ち受ける真実に迫る事が出来る。その資格を得るはずです」


 白竜姫の言葉に、メルティアはハッとした。

 見れば隣を歩く同族の竜姫は、その表情に強固な覚悟を感じさせる。


「私は傍観者では居たくない。白竜として生まれた私が、自らの手で抗い続ける資格と力を持つ私が、一瞬でも当事者から外れるなど絶対に許せません」


「……ゼロリア」


「彼はきっと、全ての竜の宝具を応えさせる資格を持っている……私は、そう仮定しています。そして彼に手を差し伸べられた一人だけが、彼と共に抗い真実に迫る事が出来る。そしていずれ至るのです。最強と呼ばれ、神にすら迫る存在、覇竜へと」


 恍惚とした表情の白竜姫を見て、流石に呆れた。


「……いや。それは流石に妄想が過ぎるじゃろ」


「さて、どうでしょう。しかし、全ての竜装を抜く資格があるというのは本気ですよ? 過去の文献を調べ、両親にも聞きましたが、本契約を済ませた訳でもない今。既に彼は手を触れずとも私達の竜装を呼び覚まし、従える事が出来るのですから」


 確かに少年は、まだ未契約の人間だ。


 それなのに本契約を済ませ半竜化した守護者でも難しいとされる竜装の呼応を可能にしている。 


 まだ実際に呼んだ場面はないが……以前、勝手に鞘から飛び出した白竜姫の宝剣を見た限りだと……


「……畑の大根の方が難しいくらいじゃったな」


「はい? 大根……? あっ。もしかして私に喧嘩売ってます?」


「なんじゃ、自覚はあったか? すぽーんって感じだったからのぅ……同じ竜として恥ずかしいわい」


「は? 貴女のだって似たような状態でしょう!」


「は? 残念じゃったな。妾の竜装はあんな醜態を晒さずとも抜いて貰えるのじゃ」


「こいつ……っ!」


 閑話休題。

 暫くの間、足を止め醜く言い争った二人は……


「ともかく貴女だけが特別ではないと言う事です。確かに彼は貴女が見つけ連れて来ました。ですが、貴女だけの伴侶候補者ではありません。これ以上のライバル出現は、なんとしても阻止しなければ!」


「うむ、全くその通りじゃ! あやつは女誑しで、歯の浮くような台詞も平気で吐きおるからのぅ!」


「なんだかんだ甘やかしてくれますからねっ!」


「全く信用出来ないのじゃっ!」


 結局その一点のみ合意し、頷き合った。











 いちまんよんせんじぃ。



 今回は結構長くなってしまいました。


 北海道、ほっかいどぅ、ほっかいどー。


 まだまだ雪いっぱいで寒いです。



 今年は沢山更新して、ユキナとの激突まで行きたいですね。


 今章長過ぎるので、何処かで分けたいと思います。



 おしながきとして、レオとユキヒメとの再戦。

 更には人間側との戦争があります。


 シーナとミーアも今章でかなり強くなります。


 お楽しみ頂ければと。

 日常回がほぼ無く、みんな大好きユキナの出番が沢山ありますので!

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