第91話 上陸の日。

 戦艦での海上生活は、驚く程に快適だった。

 起床後は、甲板で朝日を浴びながら運動をする。

 

「はぁっ!」


「っし! くっ!」


 訓練用の剣を手に、シラユキと立ち合えるのは本当に有難い。

 彼女は容姿こそ可愛らしいが、戦士としては全く可愛げがない。

 常人離れした身体能力から繰り出される、高速で力強い斬撃と刺突。それだけでも厄介なのに、大胆且つ繊細な技能を兼ね備えている。


「ぐ……あっ!」


 その証拠に、何とか三度受けた後。俺は、手にしていた剣を容易く手放させられた。

 斬り結んだ刹那。受けた刃が滑って、まるで絡め取るように打ち上げられてしまったのだ。

 手首が捻り、気付いた時には手が離れていた。


「返し手はあるか?」


 そうして喉元に剣先を突き付けられ、鋭い瞳と目が合えば、俺は両手を上げて降伏するしかない。


「馬鹿言え。実戦なら死んでる。参った」


「賢明だな。これで、私の十六勝三敗だ」


 剣を引きながら、シラユキは言った。

 それを見て、俺は降参の格好を辞め、弾かれた剣を拾いに向かう。


「またシーナの負けね。強いわねー、シラユキは」


 容赦のないミーアの言葉が、俺を抉る。

 男としては好きな子に情けない姿を見られたくないが、そうは言ってられない。

 恥を捨ててでも、技術を学びたいのだ。


 大体、何も恥ずべき事はない。

 生粋の戦士であるシラユキと村人の俺では積み上げてきた経験値が違う。

 第一、彼女は歳上だ。俺が敵わないのは当然の事であり、先駆者に教えを乞うのは、


「大体なんだ、その澄まし顔は。女に負けて悔しくないのか? 根性が足らんっ!」


「そんな可愛い子に何度も負けてんじゃないわよ。不安になるでしょ。あんたは私の剣士なのよ?」


 ……もうやだ。こいつ等。


 俺に求め過ぎだろ。手も足も出ないっての。

 相手は文句なし。これまで戦ってきた連中の中で一番強いんだぞ。


 男女差別、反対。


「もう一本だ」

 

「シーナ。約束の二十回目だ。全力で来い」

 

 剣を構えると、シラユキは腰を落としながら瞳に剣呑な光を輝かせた。

 何がそんなに嬉しいのか、尻尾を振っている。


「分かってるよ」


「もう四度目だ! 次こそは受けて……いや」


 事前の約束で、五回に一度。祝福を使う取り決めをしたのだ。


「勝ってやるからなっ!」


 鼻息荒く、シラユキが宣言した。


 一度でも受け切れたら、二人で食事一回。勝ったら発情期の期間中。相手をしろと言われたのだ。

 堂々と浮気に誘うな。意地でも負けられない。

 

「頼むから諦めろ」


「嫌だ。私は武人として、敵わない相手がいる事が我慢出来ない!」


「そっちは理解出来ている。もう一つの方だ」


 静かに告げれば、シラユキはミーアを一瞥した。

 そして、ポッと頬を赤くする。


「ミーアとお前の仲は理想的で羨ましい」


「……なら。邪魔するような真似しないでくれ」


「無論だ。だが、お前なら私も大切にして貰えると確信した。実は容姿も好みだ」


 そう宣言して、シラユキは俺を睨んだ。


「私も、お前も武人だ。互いの主張は、剣で通すのが筋だろう」


「お前。本当にメルティアに賛同してるのか?」


 欲しい物は力尽くでも手に入れる。

 考え方が、完全に略奪者のそれなんだけど。


「それとこれとは話が別だ。これ以上は問答無用!さぁ、来い!」


 説得失敗。仕方ない、気が済むようにしてやる。


「我、女神の祝福を」


「来たな! いつでも、構わんぞ……っ」


 集中力を研ぎ澄ませているのだろう。


 眼前のシラユキから、凄まじい覇気を感じる。

 だが、幾らお前が凄い奴でも……。

 

「受けし者」

『ブースト・アクセル。アクセラレーション』


 この力を使って、追い付かれる訳にはいかない。

 

 特に、俺を信じて付いて来てくれた。そんな彼女の前では、絶対に。

 ミーアを不安にさせる訳には、いかない。


「速く……速く速く速く速く速く速く速く速く」


 耳鳴りを聞き、踏み込みながら、呟き念じる。

 日頃の鍛錬のお陰で、この力も大分把握した。

 発動の瞬間に思考は十倍に加速され、祈る度に身体を加速して行く。


「速く!」


 つまり、十度加速すれば十倍の速度で動ける。

 

 横薙ぎ一閃。シラユキの首筋へ剣を振るい、寸止めして確認する。

 まるで反応出来てないな。表情を見る限り、少しずつ驚愕へ変わって行く。

 勝負ありだろう……権能を解除。


「あっ……また駄目か。やはり、速過ぎる」


 視界が元の速さを取り戻すと、呆然とした表情でシラユキが呟いた。

 その瞳は、己の首を捉える寸前で止まっている刃を見つめている。 

 

「降参で良いな?」


「あぁ。これで十六勝四敗……いや。四敗か」


「何故だ。俺の十六敗四勝で合ってる」


 実質、十六敗だけどな。こんなの卑怯だもん。

 

 剣を引くと、シラユキが擦り寄って来た。

 目を輝かせた彼女が、俺を見上げる。


「いいや。私の四敗だ。その十六戦は勘定に入れるべきではない。お前は私の持つ技術を見て吸収する為、敢えて負けていただけだろう」


 それを言えば、俺の四勝こそ数えては駄目だ。


 しかし、それを主張して弱さを見せる訳にはいかない。誰が聞いているか分からないのだ。

 ミーアの安全の為にも、俺はそれなりに強者で在らねばならない。時には、見栄も必要だ。


 言っても、どうせ聞かないだろうしな。こいつ。


「理由は如何あれ、負けは負けだ」


「シーナ。謙虚さは時に美徳だが、私のような女を相手にするなら必要ない。もっと自分を誇れ」


 こんな借り物の力で誇れるかよ。

 そんな恥晒しには絶対になりたくないね。


「兎に角、お前の十六勝だ。良いな?」


「はぁ。本当に。お前のような奴は初めてだ。この私が手も足も出ず、負けたというのに悔しいと感じない。寧ろ、その……」


 白い肌を朱に染め、右手で口元を隠し、内股を左手で隠しながら、シラユキはもじもじと恥ずかしそうな仕草をした。


 ……おいやめろ。ミーアが見てるんだから。

 

「シーナ? どうしたのかしら。うふふ……」


「こんな……その。切ないのは初めてだ。おかしいな。発情期はまだ先のはずだが……」


「ねぇ。一体何を話しているのかしら。随分と楽しそうじゃない。通訳して貰える?」


 俺は暖まったシラユキと冷えた声を発するミーアを交互に見ながら思った。


 本当に勘弁して欲しい、と。


 俺が選んだのはミーアだ。

 彼女を生涯愛し、共に在ると決めたのだ。

 二股なんて誠意を欠く行為は有り得ない。


『守護者の力と竜装があれば』

『貴方の運命の娘は!』

 

 ……だから、女神様。

 幾ら、あんたの決めた事でも。俺は従えない。


 目的の為に女の子を弄び、利用する。

 そんな屑は、俺が最も忌むべき野郎だから。


 美しい真紅の髪をした竜姫。

 あんな綺麗なお姫様には、いずれ。相応しい王子様が現れるはずだ。

 それが本来。あの勇者だった事は、癪だけどな。


 だから一つだけ。あんたを褒めてやる。

 どうしても脳裏を過る、街で見た子供達と洞窟のミーアの姿。

 ……あのメルティアが奴隷なんて。

 鋼鉄の首輪で戒められるなんて、有り得ない。


「おっ! おーい。皆、おはようなのじゃ! 朝から精が出るのー!」


 あの勇者のハーレムに、竜姫様が加わる。

 そんな光景、考えただけで吐き気がするからな。


「あっ。メルティア様、おはようございます」


「うむ。シラユキ、おはよー! シーナとミーアもおはようじゃ! 共に朝食にせんかー?」 


 物思いに耽っていると、甲板の出入り口にメルティアが立っていた。

 俺は彼女を見つめて、左手を上げる。


「分かった! 一度切り上げる!」


 竜人の婚姻と、守護者。竜装と呼ばれる剣か。

 さて、どうやって話を切り出したものか。







 魔界と呼ばれる新大陸が見えて来たのは、航海を始めて三日目。深夜の事だったらしい。


 らしいと言うのは、後から聞いた話で。俺はその時、就寝中だったからだ。

 目覚めた時には艦は港に到着しており、皆が起きて朝食を済ませた後。退艦する運びとなった。


「久々の陸地じゃのー」


 結局、艦に居る間はメルティアに竜装とやらの話は聞けなかったな。

 婚姻という非常に繊細な話題に繋がり、且つ竜装という重要機密かもしれない存在。何故知っているのかと疑われる危険がある。

 とても迂闊には聞き出せない。今は流れに任せ、まずは身辺を固めることが先決だ。

 

 そんな事を考えながら、艦を降りるメルティアに続いていると。


「色違いの出来損ないが、よく無事で帰って来られましたね?」


 艦から陸地を繋ぐ掛け橋を降り切る前、そんな透き通った声が響いた。


「む……何故、お主がここに?」


 見れば、腕を組んだ白銀の髪の少女が碧銀の瞳で此方を見上げている。

 背丈はメルティアより少し高いか。

 それは、息を飲む程に美しい少女だった。


「ミーア。シラユキの背に隠れて下がっていろ」


「……分かったわ。気を付けて」


「シラユキ、頼めるか?」


「勿論だ。やはり、お前は賢明だな」


 その少女は、一目でどんな存在か分かった。

 何故なら、形状と色こそ違うが……メルティアと同じ。角と翼、蜥蜴のような尻尾が生えている。

 間違いない。あまりにも酷似している。


 こいつは、他の……白い竜人の娘だ。


「聞かなければ察せないとは、相変わらず貴女は愚かですね、メルティア。着港信号があったと伺ったので、迎えに来てあげたのです。感謝しなさい」


「ふーん? 相変わらず暇じゃのう、お主は。妾は多忙じゃからな。羨ましい限りじゃ」


 高圧的な態度の白い竜姫に、メルティアは挑発的な態度を示した。


「……口の聞き方には気を付けなさい? この醜い出来損ないが」


 途端に表情を顰める白い竜姫。

 すると対抗するように腕を組んだメルティアは、


「はっ。白いだけの駄竜が吠えおるわ。とっとと帰ってパパに泣き付くが良かろう。得意じゃったもんなぁ?」


 鼻を鳴らしながら、更に挑発した。

 どうやら二人は、相当仲が悪いらしい。


「……私とやり合うつもりですか?」


「一度も勝った事ない癖に、随分と偉そうじゃな。今度こそ、その自慢の角をへし折ってやろうか?」


 おい、待て待て。

 なんか物騒な事を言い出したんだけど。

 あいつ本当にメルティアか?

 仲良く平和にとか言ってた、お姫様は何処行った?


「ちっ……馬鹿力だけが取り柄の出来損ないが。 まともに炎も吐けない癖に」


「おやおやぁ? 流石、見境も無く凍らせる事しか出来ない奴は言うことが違うのぅ。この貧弱」

 

 俺は睨み合う二人を指差して、シラユキに聞く。


「止めなくて良いのか?」


「自信があるなら、やれ。死ぬなよ?」


 おい、それで良いのか専属側近。


 俺? 俺は絶対やだよ。死にたくないもん。

 白い奴の後ろに控えてた従者達も、いつの間にか逃げてるし。

 でも、この二人が喧嘩し始めたら大変だ。

 誰か止めてくれそうな奴は……。

 

「ふん! まぁ良いでしょう。貴女なんかに構っても不快になるだけです」


 助けを求めて辺りを見渡していると、どうやら先に白い竜姫が折れたらしい。

 さっきの話を聞く限り、メルティアの方が喧嘩が強いらしいからな。


「それで? 貴女が連れて来たという現界人は……あぁ、お前ですね」


 自分から喧嘩を売った癖に情けな、と考えていた俺は、白い竜姫に睨まれた。

 途端に悪寒を感じた。凄まじい覇気だ。

 

「なっ……何故、お主がそれを……っ!」


「ふふ……貴女、随分と臣下に嫌われてますね」


「なにっ! く……っ!」


 メルティアの視線が自分の配下者達に向く。

 しかし、不審な動きを見せる者は居なかった。

 連絡手段は不明だが、航海中に誰かが先に情報を流したようだ。

 悔しげなメルティアを見て、そう確信した。


「哀れですね。困るんですよ、貴女みたいな出来損ないがいると……我々竜族全体の沽券に関わります。早く後継を産んで消えて下さい。貴女に残された役割は、それだけです」


「……っ!」


 ここぞとばかりに、好き勝手言われている。

 言い返せないのだろう。小さな拳が震えていた。


 ……裏切り者か。

 後で炙り出して、あいつの前に連れて行くか。


 白い竜姫を見れば、彼女は既にメルティアから興味を失ったらしい。俺へ視線を向けていた。


「それにしても……貴方。言葉が分かるんですよね? 此方に来て挨拶をして下さい」


 勘弁してくれよ。

 そう思ったが、呼ばれてしまえば拒否権はない。


「っ! 良い! 来るなっ! おい、シラユキ! シーナを連れて艦に引っ込んでいろっ!」


「はいっ! おい、シーナ、お前は」


「シラユキ。良いのですか?」


 白い竜姫に睨まれ、名を呼ばれたシラユキは固まった。


「私に逆らって、良いのですか?」


「……いえ。申し訳、ございません」


 再度。静かな声で脅され、シラユキは大人しく引き下がった。


 忠誠心が強く、メルティアが好き。

 何より誇り高いこいつが……主より、あの竜姫の命令を優先するのか。


「すまん……シーナ」


 ……これは何かあるな。


 権力者の脅しか。反吐が出る。

 見た目は綺麗だが、あの白いの。気に入らない。


「シラユキ……すまぬ」


「ふふっ。ですって? 一番の忠臣にも見離されて、可哀想ですね」


「くっ……卑劣な奴めっ!」


 本当に悔しそうな表情で白い竜姫を睨んでいる。

 そんなメルティアを見て、俺は歩き出した。

 これ以上は聞くに耐えない。


「ねぇ、シラユキ。やはり貴女は、私のところに来て下さい。既に契約書は用意してあります。貴女は優秀なのですから、仕えるべき主人は選んで」


「黙れよ」


 見据えながら近付きつつ、俺は白い竜姫に対して要求した。

 勝ち目のない相手に喧嘩を売る羽目にはなるが、仕方がない。

 我ながら馬鹿な事をしていると思う。

 だが、どちらにせよ。最も信頼しているシラユキを引き抜かれたら、遅かれ早かれ未来はないのだ。


「……今、貴方。私の言葉を遮りましたか?」


 なら、状況を考え。ここで立ち向かう方が得だ。


 そう判断した俺は、怒気の篭った声を無視しつつ。激情の浮かぶ瞳を見つめ返しながら、メルティアの隣に立った。

 

「はじめまして、竜姫様。シーナだ。宜しく」


 本当は皮肉込みで握手でも求めてやりたいが、それをやると手を握り潰されかねない。


 眼前に立った俺は、白い竜姫を観察した。


 白銀の髪に白を基調とした衣服。やはり、メルティアより少し背は高いが、幼児体型に変わりない。

 角も翼も尻尾も、雪のように白く美しい。


 腰にある剣は髪と同色の白銀。明らかに身の丈にあってないそれは、何処か神秘的な雰囲気を漂わせている。

 例えるなら、まるで剣聖の神剣のような……。


 恐らく、これが竜装だな。間違いない。


「……野蛮人にも名乗る名はありますか」


 敵意ある瞳が、俺を射抜く。

 分かってはいたが、とても歓迎されてない。

 

 少女は手を胸元に添えると、清涼な声を響かせた。


「ゼロリア・フロストドラです。宜しく。そして、さようなら」


 碧銀の瞳が、縦一本。まるで蛇のような恐ろしい形状に変わる。

 見つめる瞳に灯った敵意が、殺意に変わった瞬間だった。


『ブースト・アクセル。アクセラレーション』


 途端に耳鳴りが始まり、視界から時間を奪う。

 見慣れたその感覚は、俺の権能が発動した何よりの証拠だった。

 危険を感じた事で、お節介を焼いたのだろう。

 しかし、助かる。


 ……速く速く速く速く速く。


 急いで念じ、父から譲り受けた琥珀の剣を抜剣。充分に加速した俺は、白い竜姫の背に回り込んだ。

 

「ふーっ」


 白い竜姫は、息を吹いた。

 すると、俺がさっきまで立っていた場所から十数メートル先までが一瞬で凍り付いたのだ。

 その信じられない光景を見て、首筋に剣を添えようと考えていたが断念。

 背を向けて走り、数十メートル距離を取る。

 

「ぐぅぅ……っ! ゼロリア、貴様!」


 思考加速のみ解除すると、避け損なったらしく、右腕が凍ったメルティアが怒声を上げた。

 

「全く、鈍臭い……」


「なんじゃと! くっ……っ。こ、このような不意打ちをして、謝罪もなしか!」


「貴女は火竜でしょう? ご自慢の炎で溶かして下さい。それよりも……」


 白い竜姫は振り返り、俺を視界に捉えた。


「報告通り。凄まじい速さですね……まさか、この私が一瞬とは言え、見失うなんて」


 その瞳からは、殺意の他に興味が混じっていた。


 報告通り、か。俺の事を報告した奴は、随分と抜かりがないらしい。


「そりゃ、どーも」


 適当に返答しつつ、ミーアから預かった白い剣も抜剣し、臨戦態勢を整える。


「どういうつもりじゃ! ゼロリアっ!」


 凍った腕を振り、砕くという荒技を披露しながらメルティアが叫ぶ。

 何だそれ。やっぱり、あいつ。おかしいよ。


「どういうつもり、ですか。勿論……こういうつもりです」


 白い竜姫ゼロリアが腕を振るった。

 すると頭上に三つの氷塊が現れ、形状を槍のように変化させる。


 おいおい……なんだそれ。やば過ぎるだろ。


「やめんか! ゼロリアっ! ぐぅ! ああっ!」


「メルティア様!」


 制止の声を上げたメルティアが、無言で振るわれた冷気によって凍り付いてしまった。


 恐らく大丈夫なのだろうが、唯一の味方が居なくなったか。


 シラユキも悲痛な声で叫ぶだけで、加勢は見込めない。


「そこで見ていなさい、メルティア。私が、貴女の目を覚ましてあげます」


 三本の氷槍を従えた竜姫は俺へ向き直ると、冷え切った声音で言い放つ。

 その瞳に灯るのは、憎悪の輝きだった。


「蛮人と共存など……最早、あり得ないのです」


 一切の躊躇いもなく、振るわれる腕。

 迫り来る三つの氷槍を見て、俺は悟る。


「避けなさいっ! シーナッ!」


 俺の選択。女神が口にした最も過酷な運命と言うのは、間違いではないのだと。




















 滅びのバースト・ストリームさん!?


 

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