第72話 始まり。

「シーナ」


 それは、居間で昼食の最中だった。

 席を立っていたミーアが戻って来た。


「……来たか」


 彼女の険しい表情から察した俺は席を立つ。


「うん……」


 小さな声。

 俯いたミーアの頭に手を乗せ、ゆっくり撫でる。


「なんて顔してんだ。似合わないから、帰ってくるまでに直しとけ」


 柔らかい声音で言うと、ミーアは俺の顔を見てジッと見つめて来た。


「……見送りくらい、良いわよね?」


 逡巡はあったが、これが最後かもしれないと思うと無碍には出来ない。

 彼女の気持ちを汲んであげるべきだろう。


「いいけど、余計な事するなよ」


 最初、同行すると言ってきたミーアを言い聞かせるのは中々に大変だった。


 しかし、魔人の言葉を理解出来ない彼女を連れて行ったところで……正直、足手纏いだ。


 奴等の中には、昨晩の事でミーアを良く思っていない者も多いだろう。

 そう言うと、流石のミーアも聞き分けてくれた。


 ……大事な人だ。絶対に傷付けたくない。


「分かってるわよ。黙ってるから」


「くれぐれも頼む。じゃあ、行くか。待たせて機嫌を損ねられる前さ」


 既に支度は済んでいるので、俺は椅子に掛けておいた黒革の外套を羽織ると外に出た。


 すると、玄関先に爺さん。村長が立っていた。


「あぁ、シーナ。出てきたか。早かったな」


「おはよう、爺さん。行ってくるよ」


「うむ……頼んだぞ。では、向かうとしよう」


「うん」


 踵を返した爺さんの背を追う。

 しかし、ミーアが家から出て来ない。

 時間が惜しいので待ちも呼び掛けもしないが、見送るんじゃなかったのだろうか?


「シーナ。必ず生きて戻れ。何をしてもじゃ。一人で逃げても構わん」


 前を歩く爺さんが、突然。そんな言葉を口にした。


「村の事は気にするな。この村は、確かにお前の生まれ育った地。じゃが、お前が血を流すような価値はない。賢いお前なら、分かるじゃろう?」


 爺さんの言う意味は、分かる。

 この村で今、一番若いのは父さんだ。


 そう遠くないうちに、誰一人として居なくなる。

 ここは、消える事が確定した村……なのだ。


 ……それでも。俺にとっては故郷だ。


「いや? わからない。俺、馬鹿だからさ。あー! だから、剣聖は俺じゃなかったのかー」


「こら。真面目な話じゃ、シーナ。茶化すな」


「わかんねーって言ってんだよ」


 強い口調で言うと、爺さんは振り返ってきた。


 そんな爺さんの顔を睨み付けて、俺は口にする。


「自分の故郷も守れないなら、立ち向かえないなら、俺は剣なんて握らない。母さんは言ってた。戦う理由は、誰でもない……自分で決めなさいって」


「……またそれか。全く、お前は本当に」


「あぁ、好きさ。大好きな母さんが眠るこの場所を奴等に踏み荒らさせたりしない。父さんが居て、皆が居る。ここは……俺にとって唯一の守るべき場所だから」

 

 痛む身体に鞭打って、早足で爺さんを追い抜く。


「ここで立ち向かう為に、女神様は俺に力を与えてくれたんだと思うから」


 すれ違い際。俺は爺さんに強い口調で告げた。


「……本当に、よく似たな」


 背から掛けられたそんな声に、俺は妙に誇らしい気持ちになった。








「……来たか」


 村の出口に到着すると、そこには白い髪の女魔人が腕を組み、不機嫌そうな表情で立っていた。


 確か、メルティアの隣に居た女魔人だ。

 昨晩も思ったが、明るい今。改めて見ると……すげー綺麗な顔してるな。


 しかし物凄く態度悪いな、こいつ。


「お前は確か、シラユキ……だったか?」


「気安く名を口にするな、穢らわしい! ぺっ!」


 ……えぇ。

 友好的に接するつもり皆無じゃん。


「……と。言いたいところだが。貴様はメルティア様の大事な客人だ。くれぐれも失礼のないよう、丁重に扱うようにと言われてしまっている……ちっ」


 その大事な客人に、凄い失礼だな?


 丁重とはなんだ? 目の前で堂々と悪態を吐いて舌打ちしても良いのか?


「だからこそ、メルティア様は信頼が最も厚い私に命じられたのだろうな。仕方なく直々に迎えに来てやった。ふん、感謝しろ」


「そうか。わざわざ済まない。宜しく頼む」


 友好の意思を示す為に手を差し出すと、女魔人は少し驚いたような表情を見せた。


「……自分で言うのもなんだが、私は今。相当失礼な言動をしたと思う。腹が立たないのか?」


「なんだ。自覚はあるのか」


「な……っ! 貴様」


 鋭い目付きを向けられるが、残念ながら恐怖を感じないんでな。

 全然怖くない。


「問題ない。慣れている。俺も剣士の端くれだ。これくらいで腹なんて立てないさ」


 肩を竦め、茶化して見せる。

 すると女魔人の強張った表情が和らいだ。


「……貴様を侮った事を謝罪しよう。確か名は、シーナと言ったか」


「あぁ」


「ではシーナ。私の事もシラユキで良い。歳はいくつだ?」


「十六歳だ。あんたは?」


「私は今年十八を迎えた。歳も近いし、困った事があれば遠慮なく頼れ。では、立ち話もなんだ。向かうとしよう」


 女魔人……シラユキは、そう言って踵を返した。

 どうやら気に入られたらしい。良かった。

「じゃあ爺さん、行ってくるよ」


「うむ……くれぐれも気をつけてな」


「うん」


「シーナッ!」


 頷くと、不意に俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

 振り向いて見れば、村の中からミーアが駆け寄って来ている。


 腕の中には、剣が抱えられている。

 白鞘に収まった、彼女の剣だ。


「シラユキ、悪い。少し待ってくれ」


「うん? どうした?」


 足を止めたシラユキは、走って来るミーアを見て眉を寄せた。


 昨晩の事がある。あまり良い感情はないだろう。


「余計な事をすれば遠慮なく斬る。手短にな」


「すまない、助かる」


 了承を得て、少しでも距離があった方が良いだろうとミーアへ駆け寄る。

 近付いて互いに足を止めると、俺は尋ねた。


「どうした? ミーア」


「これ、持って行きなさい。あんた今、剣。ないでしょ?」


 グイ、と。ミーアは俺に剣を押し付けて来た。


「いや、持って行けと言われても……」


「丸腰で行く気? 馬鹿なの? 死にたいの?」


 流石に言い過ぎではないだろうか。


「別に戦いに行く訳じゃないんだぞ?」


「いいから、持って行きなさい。お願いよ、シーナ。一緒には行けないけど……私、あんたの役に立ちたいの」


 そんな真剣な表情で言われてしまえば、断れない。

 仕方なく俺は彼女の剣を手に取った。


「分かった。連れて行くよ、お前の気持ち」


「うん。必要な時は、遠慮せずに抜きなさい。だからお願い……必ず無事に帰って来て」


「あぁ。勿論だ」


 剣を帯に吊るして、俺はミーアの額をピンと指で弾いた。


「いたっ……ちょっと! 何すんのよっ!!」


「はは。悪いな、好きな子には意地悪したくなる性分なんだ」


「……っ! す、好きな……っ!? ちょっと! 今のもう一回っ!」


「ばーか、そう何度も言うかよ……行ってきます」


 額を抑えて睨み付けてきたミーアへ笑みを向け、俺は踵を返した。


「……っ! あぁもうっ! 行ってらっしゃい!」


 背後から聞こえる声に手を振って、村を出る。


「もう良いのか?」


「あぁ。それとすまない。帯剣してしまったんだが、構わないだろうか?」


 尋ねると、シラユキは俺の腰へ目線を向けた。


「構わない。剣士に剣が必要なのは道理だ」


「……そうか。ありがとう」


 礼を言うと、シラユキは忌々しそうに表情を歪めた。


「身の危険を感じたら遠慮せずに抜け。残念ながら我が隊には、聞き分けのない馬鹿も少なからず居る。もし斬ってしまっても、私が間に立ってやる」


 成る程、自分の身は自分で守れって事ね。


「それは有難い。しかし、良いのか? 俺は一応、貴女にとって敵だろう?」


「私はメルティア様の理念に賛同している。故に、お前を敵だとは考えない。寧ろ評価している」


「評価? 何故だ」


「昨晩。あの状況で、たった一人でも抗って見せたお前を同じ剣士として尊敬している」


 歩きながらシラユキは、腰から伸びた白い尻尾を揺らす。


「私は、強者が好きだ。特にお前は私より若いのに、全種族最強と名高い竜人であるメルティア様に一太刀浴びせ、悲鳴を上げさせた。あの速さ、太刀筋……悔しいが、私は目で追う事が出来なかった……暇が出来れば是非、私と立ち合え」


「勘弁してくれ」


 なんか、嫌な方向で気に入られているらしい。


 こっちは昨晩の事で身体中が悲鳴を上げてるってのに、立ち合えだ? 

 冗談にしてもキツい。


「なに、遠慮するな。お前だってそれ程の力、振るう為に得たのだろう? それにだ。私と立ち合い、力を示せば容易にお前に手を出そうと考える馬鹿も居なくなるだろう。悪い話ではない」


 魔人ってのは、随分と強さが大事な存在らしい。


 でも、やだな。

 せめて三日は待ってくれないかな?


 それと、種族ってなんだ? 

 同じ魔人でも違いがあるのか?


 確かに耳や尻尾の形や色が違ったり、メルティアに至っては黒い角や翼がある。


 折角だから、色々話を聞きながら行こうか。






 シラユキに連れられ、やって来たのは森の中。


 確か、もう少し行けば湖がある筈だ。

 そんな事を考えていると、開けた場所に出た。


 こんな平地は無かった筈だが……木を切り倒して野営地を作ったのか。


「……随分と歓迎されてるみたいだな」


 周囲から向けられる視線は、とても好意的とは思えないものばかりだった。

 寧ろ、敵意。そう表現出来るものが多い。

 本当に友好関係を結ぶ気があるのだろうか?


「……こっちだ」


 促され、俺は揺れる白髪を追った。

 目的の赤髪はすぐに見つかった。

 その少女はこちらに気付き、顔を綻ばせる。


「おぉ、来たか。待ち侘びたぞ」


 腰掛けていた切り株からぴょんと立ち上がり、長い赤髪を揺らして駆け寄って来る。

 魔人達の代表。竜人族? のメルティアだ。


 種族の話は、道中。シラユキに聞いた。


「メルティア様、お連れしました」


「うむ。ご苦労じゃったな、シラユキ。助かった。あぁ、すまんな? シーナ。本来なら妾が直々に出迎えるべきだったのじゃが」


「別に構わない。それに、彼女には随分と良くして貰った。良い従者が居て羨ましい限りだ」


「む……? シラユキが……?」


 訝しげな表情で、メルティアはシラユキを見た。

 途端、シラユキは得意げに胸を張る。


「メルティア様、聞きましたか!? いやぁ、彼はよく分かっていますよ。あっはっは!」


「……何を吹き込んだかは知らんが、既に打ち解けているようで何よりなのじゃ」


 げんなりとした顔でメルティアは呟く。

 苦労してるんだろうなぁ。

 昨晩も人の話を聞かない面倒な奴だと思ったし、なんとなく分かる。


「立ち話もなんじゃ。大したもてなしは出来んが、茶くらいは出せる。こっちじゃ」


 メルティアに促され、大人しく従う。


 野外に設置された木の卓に着くと、駆け寄って来たエプロン姿の女魔人が小洒落たカップと食べ物で卓上を彩った。


 見た事のない色の液体が、目の前のカップに注がれる。


「随分と熱心に見ておるが……まさか、茶を見るのは初めてか?」


「あぁ……知識はあるが、見るのは初めてだ。これは?」

 

 茶色く、丸い食べ物? を指差して尋ねる。


「それか? それはクッキーじゃ。試してみると良い。美味いぞー?」


 言われて、手を伸ばす。

 硬いな。石みたいだ。

 本当に食べられるのか? これは。


「早く食べるのじゃ。そんなに見つめても仕方なかろう。折角の茶も冷めてしまうぞ? あむ……んー! 美味いのじゃ!」


 触感から想像した通り、メルティアの口からボリボリと音がする。


 ……大丈夫だよな? 食べても。


 いや、駄目だ。まだ信用するな。

 相手は人類が戦っている最中の敵、魔人だぞ?


 毒とか入ってたら、どうする? 

 そんな間抜けな死に方は出来ない。


 俺は小皿に菓子を戻し、メルティアを見据えた。


「そうしたいのは山々だが……生憎。俺はまだ、あんたを信用していない。まずは話をしないか?」


「んくっ……心配せんでも、毒なんか入ってる訳がなかろう。妾も食べてるんじゃし」


 俺の心配を見透かしたようで、メルティアは言った。

 馬鹿だとは思っていたが、案外聡いな。


「あんたの事は……シラユキに聞いた。あんたは、竜人……竜ってのは、俺も知っている。御伽噺にしか存在しない、空想上の化け物だ。あんたはその化け物と同等の力を持っているんだろう?」


 上手く言えなかったが、兎に角。目の前の少女が人智を超えた化け物である事は確かだ。


 そんな奴が口にしているからと言って、俺が食べても無事で済む保証はない。


「……シラユキ。お主、シーナにどんな説明をしたのじゃ?」


「メルティア様は素晴らしいお方だとお伝えしました」


 シラユキは明後日の方向へ顔を向けた。

 とぼけるの下手過ぎるだろ。


 メルティアの金色の瞳が、シラユキを訝しむ。


「はぁ……此奴に何を言われたか知らんが、心配は要らん。妾は本気じゃ。本気で妾は、お主が欲しい。だからどうか、信じて欲しいのじゃ」


 真剣な顔を向けて来たメルティアを俺は見つめ返す。


 『彼女を信じなさい、シーナ』


 ずきり、と突然。頭痛が走った。 

 それは一瞬だったが、不快感に顔が歪む。


「……俺は、言葉が通じるからか」


「うむ。そうじゃ。シーナ、聞け。妾は、この無意味な戦いを終わらせたい。お主にはその手伝いをして欲しいのじゃ」


「無意味、だと……?」


 今、こいつはなんて言った?

 無意味、だと? 

 こいつら魔人と、俺達人間の戦いが?


 なら……なら何故だ? 

 それが本当だとすれば、真実だとすれば、何故?


 何故、必要だったんだ? 英雄が。


 なんでユキナは、剣聖に選ばれたんだ?


「うむ。無意味じゃよ」


 考え込む俺に、メルティアはハッキリと言った。


 その表情は真剣そのもので、とても嘘を吐いている様には見えない。


「……先に仕掛けたのはお前達だろ? この世界を侵略するつもりで」


 尋ねると、メルティアは首を左右に振った。


「違う。妾達はただ、巻き込まれただけじゃ。ふと気付いた時には、大陸ごと。この世界に飛ばされておったに過ぎん」


「……嘘だろ?」


 にわかに信じ難い話だ。

 大陸ごと飛ばされた? なんだそれ。

 御伽噺にも程がある。


 疑う俺に、メルティアは真剣な目を向けていた。


「そう思うなら構わん。しかし、ならば逆に問おう。妾達はこれまで、お主等に。この世界の者達に、何かしたじゃろうか?」


 ……言われてみれば、何も実害はないな。

 

 魔界へ渡って魔人を捕らえ、奴隷にしてみたり。

 見世物のように殺してみたり。

 そういう醜い話は、よく耳にしている。


 しかし、彼女達。魔人に襲われ、被害が出た。

 そんな話は、確かに。一度も耳にした事がない。


「……なぜ戦わない? お前達は散々、この世界で虐げられている筈だ」


 尋ねると、メルティアは手を組んで俯いた。

 

「戦えば、憎しみが生まれる。一度憎しみが生まれれば、それはまた新たな憎しみを生む。最後にはどちらかが滅びるまで戦い続けるしかなくなるじゃろう……だからこそ、妾達は耐えた。耐えて耐えて、耐え忍んで来た。いつか分かって貰える。そう信じてな」


 それは、酷く悲壮感漂う表情だった。

 顔を上げたメルティアは、俺をじっと見つめた。


「何故戦わないか。それは、この異界の地に。何の了承も無く足を踏み入れたのは妾達だからじゃ」


 ……悪いのは、自分達。

 彼女は認めているんだ。

 何も悪くないのに、己の非を。


「だって、そうじゃろう? お主等から見れば、妾達の存在は侵略だと勘違いされても仕方がない。故に妾達は、何とかこの世界の者達と対話が出来ないか。共に共存する方法はないか。ずっと模索してきた……しかしな。しかし、じゃ。限界は近い」


「……すまない」


 謝罪は、自然と口を突いて出た。

 すると二人は、驚いた様に目を丸くする。


 脳裏に浮かぶのは、奴隷にされた子供の魔人だ。

 とても擁護出来る行いではない。

 あの子達は今頃。この世にいないかもしれない。


「俺も正直、魔人……お前達は敵だと認識していた。実際に会った事も、話した事もないのに、だ」


 先程、口を付けなかった菓子に手を伸ばして口に入れる。


 甘い……な、これ。

 熱を通した乳のような香りが鼻を突く。


「美味い。何でも、食わず嫌いは良くないな」


「シーナ、お主……」


 俺を見て、メルティアは目を丸くした。

 そんな彼女に、俺は笑みを浮かべて見せる。


「話そう。話をしようぜ、メルティア。俺達に今、必要なのは会話だ。そうだろ?」


 知らない事があるなら、知れば良い。

 それがあまりにも多過ぎたから、俺は故郷を離れたのだから。


「まずは、自己紹介だ。俺はシーナ、十六歳。冒険者をしている。えーっと、悪い。他には何も思い付かない」


 あれ?

 勢いに任せて提案したが、本当に俺って何もないな……。


「とりあえず、よろしく。次はお前の番だ」


「う、うむ……こほんっ! メルティア・グレンドラじゃ。歳は今年で65になる」


 ……は?

 ちょっと待て。今何歳って言った?

 どう見ても十代前半だろ、お前。


「ええと……他にはー。そうじゃ、趣味は」


 メルティアはそれからも暫く何か喋っていたが、頭に入って来なかった。


 あまりにも衝撃が大きかったのだ。


「……シーナ。私が許す。今思ってることを言ってみろ」


 シラユキの声で我に帰る。

 思ってる事? そんなの決まってる。


「すげー年増じゃん。嘘だろ?」


「よし分かった。もうやめておけ」


 シラユキは満足げに頷いた。

 途端、メルティアの白い肌が真っ赤に染まる。


「!? おいっ! 誰が年増じゃ! お主の目は節穴かっ!? よく見よ! どう見ても妾はまだ幼竜じゃろうがっ!?」


 それから暫く……。

 

 メルティアは竜人族は長命な事。

 そして、自分は他の種族に比べれば、まだまだ未熟な少女なのだと力説した。

 

 捲し立てる彼女は、終始。それはそれは必死な表情をしていた。


 こうして、俺はまた一つ。

 世界の大きさを知ったのだった。








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