第23話 頭

いや何で?何が起きてんの?しかも、まあまあの水の量だぞ?

「おい!店員!どーなってんだ?」

強盗がレジの女に向かって吠える。

「いや、私にも何がなんだか.....」

レジの女も困惑した表情を浮かべている。

しかし、何かが臭った。

「てか、焦げ臭くね?」

ノリの何気ない言葉にピンと来た。

「厨房!おい、今、厨房どーなってんだよ?」

レジの女に聞く。

健太の言葉に女は固まる。

「あ、そーいえば、何か作ったまま放置してたかも?レジ終わってから、すぐ戻る気でいたから」

「マジかよ」

なんてことだ。てか、色々起きすぎだろ。

もう勘弁してくれ。俺なんかしたか?

水掛け論の最後が物理的に水掛かって終わりとか笑えねーからなマジで!

急いでレジの机へ飛び乗り、レジの女の隣に降り立つ。

「え」

「お前もこい」

絶句しているレジの女の腕を掴み、厨房内に入る。火元はすぐに分かった。大鍋から炎が燃え上がっている。

「チッ、遅かったか?消火器は?」

「これ」

レジの女が近くの床を指差す。

健太はすかさず消火器を手に取り放った。

無理かと思ったが、意外に消火器の威力は凄まじく、炎は無事に消えた。

火が消えた後、健太は脱力した。

危なかった。

真面目に学校の防災訓練参加しといて良かった。アレ意味あったんだな。

「おー、消えてる」

見ると、オッサン達も厨房に来ていた。しかし、その視線は火の消えた大鍋から、スグにレジの女へと向いていた。

そして、それは健太も同じくだった。

「おい、お前....」

健太がボソッと声を掛けると、怪訝そうな顔で女は見つめてきた。

「何?」

「頭」

「頭?」

健太に言われ、レジの女も気付いたようだった。

レジの女の茶髪のヅラが取れて、元の黒髪ショートヘアが見えていたのだ。

「あ、やっちゃった」


いや、やっちゃったじゃねぇぇぇぇぇ!!!


修羅場は続く。




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