第15話 十四日目の簡潔な覚え書き
船に乗った日から、もう十四日もたってしまった。ノートを開く気が起きなかった。だが、書いたほうがいい。そのほうが気が紛れる。地上での毎日のように。さあ何か書こう。
私は、移住先が、この星の未来ではないことを、確信する。
宇宙空間からは、星全体の姿を見ることができる。それは、乗員全員の前でモニターに映し出された。
日々遠ざかり、小さくなって行く星の姿は、無残だ。青い天海のあちこちで、真っ白いクレーターが深く落ち込み、じわじわと広がっていく。
今では、クレーターは互いにつながり、青い部分のほうが少なくなっている。もうすぐ、星全体が真っ白い水煙に覆われてしまうだろう。
巨大な質量と重量の液体は、大地を破壊してしまうだろう。厚い霧に覆われた星で、どれだけの生物が生き残れるだろう。ほとんど計算することも不可能だ。どれだけの水が霧となって太陽を遮るのか。
地表全体で水が渦巻いている世界。人間は
降海を地上で体験した人々の冥福を祈る。
私は裏切り者だ。
もう書けない。
加速。門をくぐる際に必要な速度を得るため。
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