新たなオウム真理教は現れるのか

ネコ エレクトゥス

第1話

 職場のテレビで巨額投資詐欺のニュースをやっていた。

「でも僕には投資するほどの金もないから関係ないか。これも投資するだけのお金を持っていて、しかも先行きが不安で安定した暮らしを求めたい人がいるからこそ起こる事件なのか。今はそんな時代なんだな。」

 などと考えていた。そこでアッと思った。

「ではオウム真理教はどうなんだ?」


 この文章を読む人の中にはあの出来事をよく知らない人もいると思うので、まず時代背景から説明したい。1980年代とはどんな時代なのか。

 80年代のなかば、強く安定したアメリカという背景のもといわゆるバブル景気なるものに向かっていった。健康志向でエアロビクスが流行し、ヨガもその中に加わっていった。そして『スター・ウォーズ』シリーズの大ヒット以降空前の宇宙、SFブーム、未知なる世界への関心が強まった時代でもあった。そして音楽はダンス・ミュージック全盛時代。みんな踊ってた。こんな生活は夢じゃないかと疑いつつも踊り続けていた。「今を楽しむこと。」その一方で日々の暮らしの中で鬱積するものを抱えている人たちがいたのだが、その人たちには関心が払われない時代でもあった。

 そして80年代後半のバブル経済の破綻。それまで築き上げてきたものが実は非常に危うい土台の上に乗っかってただけだと思い知らされる。『悟り』なるものへの関心も高まる。ちなみにオウム真理教には高学歴の人間が多く含まれていたが、彼らの多くは自分でものに触って学んだ世代ではなく、本やテレビを通して世界に触れた世代であった。ヲタクなる人たちが現れだすのもこういう世代からである。

 こんな時代に着々と信者を増やしていったのがオウム真理教だった。


 では今の時代はどうなんだろう。80年代リバイバル・ブーム。時代背景としては全く変わらない。歴史は繰り返す。そして現在の景気は良くてもいつかそれは破綻すると多くの人が感じていて、おそらくその直感は正しい。加えて今の時代怖いのが何にでも簡単にアクセスできてしまうこと。クリックするだけで全く抵抗感がない。

 こんな時代にオウム真理教みたいなものを持って来たらどうなるか。


 この文章を読んだ人はぜひ新たなオウム真理教には気を付けてほしい。麻原彰晃の『空中浮遊』みたいなものほど『悟り』と無関係なものはない。『悟り』なるものがあるとすればそれは僕らの日常生活の外ではなく中にこそ存在する。ヨガをやったらいけないとかいう訳ではない。ヨガの中には優れた呼吸法、リラックス法がある。だがそれは地面に根を張って空に体を伸ばす花に見習うことであって、ぜひ空を飛ばないように。

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