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上野美術館の建物の中にあるレストラン『昼顔』で三人はカレーライスを食べた。(カレーライスの値段は八百円だった)
最初に四葉が、カレーライスの食券を買い、詩織が「私も」と言って、四葉と同じカレーライスの食券を買った。なので真昼も「じゃあ、私も」と言って、二人と同じカレーライスの食券を買った。
上野美術館の建物の中にあるレストラン『昼顔』のカレーライスはすごく美味しかった。
三人はテーブルに座って(四葉と真昼が同じ側。四葉の反対側に詩織と言う席だった)お互いの過去の会話をした。
そのときになにを詩織さんとお話したのか、私(真昼)は今、あまりよく覚えてはいなかった。
情報としては記憶の中に詩織さんのことは、ちゃんと残っている。でも、思い出としては消えてしまった。
私は、そのことをとても後悔している。
もっときちんと、詩織さんの言葉を、(私と詩織さんの、とても短い人生の中の接点を)きちんと覚えていればよかったと、……本当に、強く思った。
食事を終えるころに展覧会のスタッフと思われる男性の人が、詩織さんを呼びに来た。
そして、詩織さんはその男の人に連れられて、「じゃあ、またね。四葉くん。真昼さん」と言って、私たちの前から(笑顔で)いなくなった。
四葉は「またね。詩織」と言って詩織さんを見送った。
二人はお互いの連絡先を交換していた。(私も詩織さんと電話番号を交換した)
私(真昼)は無言のまま、詩織さんに手を降った。
どうしても、「またあとで会いましょうね」と詩織さんに言葉にしていうことができなかったのだ。
すると真昼の心の中で桃ノ木紗枝先輩が、いつものように「村上さんは子供っぽいね」と言って、真昼のことを馬鹿にした。
その桃ノ木先輩の言葉を聞いて、確かに私は馬鹿だった、と真昼は素直に思った。
それから四葉と真昼は、(続きの絵を鑑賞する気にもなれなくて)詩織さんのいなくなった上野美術館をあとにした。
建物の外に出ると、空は曇り空に変わっていた。(今朝の晴天が嘘みたいだった)
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