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「……四葉くん」

 そんな声が聞こえた。

 とても、……とても懐かしい声だった。


 四葉はその声をしたほうに顔を向けた。……すると、そこには一人の女性が立っていた。

 長い黒髪をした、……女の人。


 年齢は四葉と同じ、二十歳半ばくらい。

 その人に会うのは、今日が初めてのことのはずだった。なのに、その四葉を見て、驚いて目を大きくしているその女の人のことを見て、四葉は一目で、それが『雨宮詩織』であることがわかった。


「……詩織」

 四葉は言った。

 その四葉の言葉と、秋野四葉の姿を見て、……雨宮詩織は、その目から、(さっきまでの四葉と同じように)透明な大粒の涙を、ぽろぽろと流した。


「え? あの、えっと」

 そんな(梟の森の絵画が飾ってある展覧会の通路の前で)少しだけ間を開けたままで、お互いの顔を見つめあって、(しかも、相手の、四葉が詩織と名前を呼んだ女性の人は、涙を拭った四葉とは違い、人目もはばからずに泣いていた)まるで二人だけ、その周辺だけが、時間が止まってしまったかのように、動かない二人を見て、村上真昼は混乱していた。


 ……明らかに私は今、場違いなところに立っている、……と、そんな悲しいことを真昼は思った。

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