~華麗~ 羽のように舞い上がり、天を突く情熱

「Light As A Feather」Return To Forever


エレクトリックでも、パッションは込められる。

吹き荒れろ、スペインの風――。


リターントゥフォーエヴァー。

1970年頃に活躍した、フュージョングループです。

リーダーは、ピアノ/キーボードのチック・コリア。

フュージョンを完成させた男。


サウンドの方向性としては、ブラジルやスペインというラテン系の音楽を、

エレクトリックで快活に演奏するというもの。

軽やかで、熱くて、明るい音楽。

聴きどころは、とにかく最後の曲ですが、

そこに至るまでの流れも完璧に近い。

早速、聴いて行きましょう。



1.「You're Everything」


チックの流れるようなエレピソロからゆったりと幕を開ける本アルバム。

そこへ、女性ボーカル。

ハキハキしつつも陰のある、美しい声で、テーマをスローにさらいます。


そして、入ってくるドラムとベース。

もう一度倍速でテーマを提示します。

アップテンポで、踊るよう。

フルートが入っていることにも注目です。

羽のようなかすれた音色。

チックの遊び心溢れるバッキング。

スタッカートでメロディアスに楽曲の雰囲気を作ります。


ボサノバ~サンバのエッセンスがふんだんに混ぜ込まれた、秀曲です。


2.「Light As A Feather」


表題曲は、妖しげなボサノバチューン。

かと思えば倍のテンポになって、スパニッシュにも姿を変える。


ボーカルの声に酔いしれてください。

彼女はブラジルの歌姫とも呼ばれた人。

楽曲の浮遊感を見事に体現しています。


軽やかな中にも、熱さがこもっているのがこのアルバムのいい所なのですが、

この曲はまさにそれです。

強打すると音が潰れるチックのエレピ。

時にエフェクトを駆使しながら、物語を作ります。


パーカッションを駆使しながらのエスニックなドラミング。

気合の入ったサックスソロ、ベースソロ。

隙のない名曲です。


3.「Captain Marvel」


激しいスパニッシュソング。

チックの素早いパッセージから入ります。

テーマは全体がハモリながら、リズミカルに動く熱すぎるもの。

フルート、ボーカル、エレピの相性が抜群です。


まずはフルートソロ。

音域が高く、軽やかな情熱を演出します。

テクニックが本当に凄い。

サックスとの二刀流だとは思えませんね。


そして、チックソロ。

彼にこういう曲をやらせたら敵なしです。

ひらめきが本当に凄い。

常に何かを狙ってきます。

エレピの特性もよく活きています。


大好きな曲です。


4.「500 Miles High」


またしても、パッションの溢れる名曲。

切なく、優雅なエレピのイントロが、その後の熱量を引き立てます。

うねるようなベースの上で、ファルセット交じりのテーマが響く。


アドリブに入ると、もう一段ギアが上がります。

500マイルというと、上空800メートルくらい。

この曲のイメージする鳥は、おそらく猛禽でしょう。

空を裂くようなスピードと迫力に満ち溢れてます。


バンドの一体感が凄い。

五人全員の意思が統一され、大きなエモーションを描き出しています。

ラストのチックのモジュレーションは必聴。


5.「Children's Song」


嵐の前の静けさのような短曲。

穏やかなアルペジオが繰り返されます。

ポクポクというパーカッションが、三拍子を優しく包む。

チルドレンというだけあって簡素ですが、どこか不安定で不気味です。

ラストに向けて、緊張感を高めていきましょう。


6.「Spain」


とうとう来ました。

伝説の曲、スペイン。

チックが書いた中で、一番有名かも知れません。


入りは、アランフェスのメロディですね。

スペインといえばアランフェスですから、ふさわしいでしょう。

アルコ(弓で弾くこと)のベース。

タンバリン的なパーカッション。

幻想的なエレピ。

ゆっくりと、スペインに移り変わっていきます。


とうとう、チックの複音フレーズからテーマへ。

フルート、ボーカル、エレピが同期しながら打ち出す、力強いメロディ。

切なく、流れます。

そして、ドラムが抜けてのテーマの後半部。

フラメンコのような手拍子に合わせ、

エレピ、フルート、ベースまでもが一つのメロディでユニゾンします。

裏に響くかけ声、合いの手。

まさに今、目の前で炎の舞いを見るかのようです。


ソロは、フルートから。

素早いフレーズが、熱すぎる伴奏の隙間をぬって煌めきます。

音色が最高。

まさに羽です。

天空を駆けるような音の上下動。

裏で印象的なバッキングをするチック。

それに呼応し、テンションは上がる一方。


間にもう一回テーマを挟んで、チックのソロ。

左手の刻み。

踊る右手。

モチーフを発展させていくようなフレーズ。

本当に情熱がほとばしっている。

アイデアが溢れて止まりません。


ベースソロを経由して、ラストのテーマ。

今まで、アルバムを通して高めてきた感情が、爆発します。

ラストの大団円を聴いたとき、必ずあなたもスペインが好きになります。

絶対に聴いてほしい曲です。

超おすすめ。



まとめ


軽快な楽しい瞬間。

たぎる灼熱の切なさ。

それらが交互に訪れる、聴きごたえある一枚です。

ここまでポップで高度なジャズを作るチックの才能には感服です。


ちなみに本作はリターン・トゥ・フォーエヴァーの二作目。

一作目はスペインよりかはブラジル寄り。

そっちもかなりおすすめです。

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