「Soultrane」 John Coltrane

まあそろそろ、この男を取り上げないと嘘になるので。


ジョンコルトレーン。

ジャズの殉教者と呼ばれる求道者です。

苛烈なコードチェンジの中に身を置き、

そして最後にはその全てを超越してフリージャズに目覚めた、

言ってしまえば過激派。


生き急ぎすぎて、すぐ死んじまいました。

本当にフレーズが早くて、荒々しいです。


ただこのアルバムはまだ初期なので可愛いもんです。

聴きやすいジャズです。


1.「Good Bait」


まぁ聴きやすいとは言え、早速怪しげですが。

印象的かつ独特なテーマ。

明るいんですが、どこかトチ狂ったような雰囲気。

これは完全に、セロニアス・モンクの影響ですね。

コルトレーンの師匠はまずマイルス。

そして何より、モンク。


モンクはピアニストで、かなり危ない男でした。

めちゃくちゃアウトなフレーズばっか弾いてるおっさんでした。

その弟子たるコルトレーンも存分にアウトしまくってます。


まずは何も考えずにブロウを聴いてください。

スピード感あふれるコルトレーンの展開力。

彼は隙間を埋めまくるタイプのインプロヴァイザーです。

そして、音色。

なんか変な笛でも吹いてんのかって音をしてます。

ペラペラしているというか、どこか珍妙。


2.「I Want To Talk About You」


からの、超絶甘ったるいメロディ。

ペラペラした音色が、謎の感慨を生み出しています。

蝶のように舞い、蛾のように鱗粉をばらまいてる感じ。

いや、それただの蛾か。

でも、すんごい綺麗な鱗粉なんです。

毒があるんじゃないかと疑っちゃうくらい、ヴィヴィッド。


強いメロディラインの合間に聴こえる、彼らしい高速のフレーズ。

それが本当にクセになるんですよね。

物語る力の高い男です。

小説で言うと、めちゃくちゃなことを書いてるだけかと思いきや、

実は大きなことを書いていた、みたいな。

掴みどころのない味のあるスタイルです。


3.「You Say You Care」


疾走感ある明るい曲。

息継ぎしないの?

と言いたくなるような連打。

これを、『シーツオブサウンズ』などと呼びもします。


静のマイルス、動のコルトレーン。

エレクトリックのマイルスに、フリーのコルトレーン。

こんな風に分けることもできます。

彼らは60年付近のジャズを押し広げた存在ですが、

その方向性は全く違いました。


コルトレーンはもっと観念的なものを重視していて、

人間性とか宗教性を全面に押し出し、

自らの内側に深く潜り込んで行ったのです。


4.「Theme For Ernie」


憂いのあるバラード。

情感たっぷりのサックスを聴いてください。

彼はたくさん吹いてもいいですが、

おおらかにロングトーンを出しても一流です。


秋の夕暮れとか、暗い寝室とか、そういうムード。

センチメンタルになりたいときに、是非。


5.「Russian Lullaby」


ピアノの独奏から始まるこの曲。

ロシアらしく赤い、情熱的な雰囲気。


と、思いきや突如響き渡るハイハット。

そしてなだれ込んでくるコルトレーン。

頭がおかしくなったのかと思うくらい吹いてます。

最強。

スピードが尋常じゃないです。

スケール(音階)を上下しまくり、高音を当てまくる。

ドラムも狂ったように叩きまくってます。

圧倒的、動のスタイル。


今後彼は、より動き回り始めます。

気になる方は聴いてみてください。

私も一、二個は紹介したいですね。



まとめ


本当に、いいアルバムです。

50年代とは思えない完成度。

これ以降の彼を考えればまだまだポップだし、

このくらいがちょうどいい、という人も多くいるでしょうね。

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