「Getz/Gilberto」 Stan Getz & Joao Gilberto

いやぁ、ボサノバ。

ボサノバはジャズよりも後にできたって、知ってました?

1960くらいにできたブラジル音楽なんですよ。

スタイルとしては、アコースティックで、ひんやりとしたコードを使うことですね。


コードっていうのは、音の堆積です。

ハーモニーです。

それを考える上で大事なのがベース。

一番低い音が、その上に乗る全ての音に意味を与えます。

そう考えるとベースとは非常にドミナンス(支配的)なものです。

ジャズに慣れるってことは、ベースラインに慣れることだとみなしてもいいと思います。

なんで初心者の方はベースを意識しながら聴いてみると、より楽しめるかも。


1.「The Girl From Ipanema」


一番有名なボサノバソング。

イパネマの娘、の方がわかりやすいかも。


曲調は夏の午後の憩いって感じ。

爽やかで、ストレスがない。

彩り豊かで、なんか高いサラダを食べてるみたい。


ボサノバを作ったのはトム・ジョビンとジョアン・ジルベルトだと言われていますが、

二人ともこの作品に参加しています。

ピアノとギターとして。

さらにジョアンの妻アストラッドもボーカルとして参加しています。

完全にボサノバの重鎮が集まっちまってます。


注目すべきは、やはりギター。

指弾き特有の柔らかい輪郭が、優しく曲を前に進めます。


それから、もちろんサックスソロ。

第三のヤク中、スタンゲッツの登場です。

この人もまた物凄い才能の持ち主でして、

一切の苦労なく最高に甘いメロディを紡ぎ続けられる人間です。

村上春樹さんが一番好きなジャズプレイヤーとしても有名ですね。


あとはボーカルもいい。

けだるい、外し気味の音程が最高にボサノバ。


2.「Doralice」


来ましたね、ジョアンのボーカルが。

彼は歌もアホみたいにうまいです。

ゆるウマです。


前曲よりも動きがあり、元気な曲。

少しサンバっぽくもあります。

最高にマングローブですね。

ガジュマルとかの下にいる気分です。


そしてもちろん、終盤のサックスソロが圧巻。

本当にわかりやすくかっこいい。


3.「Para Machucar Meu Corason」


ラフなラブバラードです。

テーマのリズムと独特な跳躍が本当にきれいで、私達とは全く違う音楽観なんだなと思わされます。

さすが地球の裏側ですね。


曲としては、ジャズスタンダードに近いようなノーマルさです。

こういうところも、初心者に薦めたい理由で、

ボサノバエッセンスが混ざってジャズが簡潔になっている。

さらに、アドリブもメロディを発展させる過程を丁寧に描いてくれる。

常に聴き手にメロディを忘れさせないので、流れを見失わせません。


4.「Desafinado」


ザ・ボサノバみたいな曲。

ソフトなクールさと、質感。


私の高校の同級生が、ボサノバは嫌いだ!退屈だ!

と言ってたいたんですが、

本当のボサノバはヴァリエーションが多く、繊細なものです。

肩肘を張らずに聴ける、複雑なジャンルです。

さらに今回はアドリブの神がいるので何も心配いりません。


5.「Corcovado」


有名なボサノババラード。

冒頭のアストラッドの歌声が、本当にえげつない。

ジョビンのピアノも基礎的ですが味わい深い。


この曲本当にメロディがよくて、シンプルながらに淡いんです。

夜空の下で聴きたくなります。

星空も見えそうです。


そしてこの名曲を最大限活かして暴れるのが、やはりゲッツ。

ゲッツは空間を与えてあげると一気に輝くんですよね。

隙間がかっこいいプレイヤーです。

ソロは吹いてないところを意識すると、より楽しめるかも。


6.「So Danco Samba」


サンバ踊るだけ

というタイトル。

アップテンポです。

とはいえ踊るほどではありません。

ノリのいいボサノバって感じ。


このくらいになると、ドラムを聴くのもありです。

どこにアクセントを置いているか。

ギターのバッキングとの兼ね合い。

そういうものが、ボサノバの土台ですから。


7.「O Grande Amor」


偉大な愛?だと思います。

ちなみにジャズスタンダードには、

偉大な愛なんてない、

という曲もあります。

どっちなんでしょうね?


珍しく、サックスから入ります。

物悲しい暗さから、哀愁のテーマへ。

泣きのサックスです。

しかし、泣きのボーカルではない。

ボサノバにおいては、ボーカルは愛憎を排して歌われます。

そのクールさがボサノバです。


あと、リズムセクションが一定なのもボサノバです。

流れるような繰り返し。

日常的な気配。

素朴な音楽です。


8.「Vivo Sonhando」


浮遊感のあるボサノバ。

おっ、と思う所は大抵部分的な転調だと思ってください。

ジャズを聴いてて、

なんか変なハーモニー

と感じたら、それを大事にした方がいい。

そういう違和感は、聴くうちに無くなります。

むしろ、たまらなく好きになります。



まとめ


いいですね、これ。

こんなに捨て曲がないボサノバは本当に珍しいですよ。

8曲全てに意味があります。

しかも親しみやすい。

是非聴いてください。

そして、ゲッツを感じてください。

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