「Saxophone Colossus」 Sonny Rollins

ゴキゲンです。

ゴキゲンな明るいアルバムです。

サックスです。

ブラックです。

ここまで白めのジャズを紹介してきましたからね。

やっぱりジャズといえば黒人音楽ですから。

そろそろ入れておかないと。


前回紹介したもの同様、

全ジャズアルバム中五指に入る売れ行きを誇る作品ですね。

未だに売れてるらしいですよ。

1955年くらいの作品なのに。

そんなんで大丈夫なのか、ジャズ界。

心配にはなりますが、まあ大丈夫でしょう。



1.「St.Thomas」


聖トーマス。いや、誰だよ。

そんなタイトルのこの曲。

とにかく聞くべきは、サックス。

サックスの、ソニーロリンズです。


ロリンズは本当に愉快なプレイヤーです。

素朴な音色。

小気味良いフレーズ。

スピード感。

リズムの正確さ。

彼の明るい面が凝縮されている曲です。

シンプルなテーマ。

ファンキーな曲調。

心から明るくなれます。


あと注目すべきはドラム。

マックスローチというドラマー。

彼の精密かつ情熱的なドラミング。

タイトな音作りのスネアを多用し、

曲に行進曲のような快活さを与えています。

素晴らしい!


2.「You Don't Know What Love Is」


お前は恋が何かを知らない――バキューン!!

タイトルがエモい。

シンプルに。


その名前に負けないくらいエキゾチックな曲です。

怪しげな雰囲気です。

実はロリンズ、こっちも行けます。

エキゾチックロリンズ、イケます。


空白を意識しながら吹いており、

息の一つ一つにすら意図を感じます。

随所に元のテーマを見せながら展開させていく様は、

本当に熟練といった感じです。

いや、まだ当時は若かったはずですが。

もうすでに完成されています。


3.「Strode Rode」


スタッカートな跳ねるメロディに全体で合わせたテーマ。

動きがあり、かっこいいです。

ファンキーで、マイナー調で、熱いコード。

その上をブロウするロリンズ。

彼に天井はありません。

どこまでも突き抜けます。


そしてこの曲の肝は、後半のドラムとのインタープレイ。

インタープレイとは、ソロを交互に細かく取り合う連携技みたいなもんです。

マックスローチとのフレーズの応酬が、どんどんと熱量を増していきます。

螺旋階段を下って行くようなうねりが心地いいです。


4.「Moritat」


シンプルなメロディのアットホームな曲。

落ち着きます。温まります。

緩いのも得意なロリンズ。

万能ですね。

本当にフレーズが流れるように出てきて速い。

華麗、という言葉が似合います。


ちなみに、彼はまだ生きています。

もう吹いてはいませんが、元気そうです。

同世代はほとんど死んでしまったんですが、

彼だけ残ったところを見るに、心の落ち着きと言うのは寿命と関係ありそうです。


なんせ、彼はジャズも休み休みやってましたからね。

無理にツアーを回らずに橋の下で練習したり、

急に引退してみたり。

そういうラフなところが長生きの秘訣なのかも。

もっとも、それでも一般人の数倍努力してきたのでしょうが。


ちなみにこの曲のインタープレイもいいです。

そして何より、ラストのサックス独奏が見事。

一人で曲を総括してみせます。


5.「Blue 7」


ラストは洒落っ気のあるブルースです。

みなさん、ブルースを知っていますか?

黒人音楽のルーツとも言える、重要な音楽です。

アメリカに着いた奴隷達が夜な夜な歌ってたらしいですよ。

本当か知りませんけど。


ブルースは結構形式的な音楽で、

大体が十二小節。コード進行もおおよそ定まってます。

リズムは元々シャッフル(タッタタッタって奴)。

これが白人の西洋音楽と混ざってジャズの下になったらしい。

確かにブルースのシブさはジャズに通ずるものがある。

というか、今やほぼジャズに内包されている。


ちなみに私はあまり平凡なブルースが好きではない。

若い頃、ギターでよく演奏したのだけれど、

なんだか飽きてしまった。

変化を付けたものならもちろん可。

現代ではさすがにセッション以外でオールドスクールを見たことはない。



こんなところで終わります。

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