授業10 反省
「んんー!」
二時間後。
俺は手足を紐で縛られ、口も布で塞がれていた。
どうしてこんな状態になっているのか?
それは明確な悪意を込めて母さんのことをロリババアと呼んだからだ。
歌い薬(初めての薬だったので命名)を注射されてから一時間、やっと薬の効果が切れたと安堵したのも束の間、俺は母さんに即効性の痺れ薬を注射され、身動きが取れなくなったところを拘束されてしまった。
慣れたように俺を拘束した母さんは――実際、昔から良く俺を拘束していたので慣れているのだが――縛られた俺を見てぽかんと口を開け驚く青姉を連れ、なにも言わず部屋を出て行った。
それから一時間が経って今に至るという訳だ。
「んん! んんー!」
冷静に回想していたが俺の体には現在、緊急事態が発生している。
もっとわかりやすく言おう。
俺はトイレに行きたくて仕方ないのだ!
だから青姉に助けて貰おうと叫んでいるのだが、口に嵌められた布のせいで上手く声が出せない。
「んんー! んんー!」
繰り返し叫んで青姉を呼ぶ。
けれど全然助けに来てくれなかった。
たぶん聞こえてないんだろうな。
どうすれば青姉が気づいてくれるのかを考えて、俺は思いついた方法を実行する。
ドン! ドン!
踵を床に打ち付けて音を鳴らす。
声は届かなくても上の部屋から音がすれば気になって上がってくるはずだ。
ドン! ドン! ドン! ドン!
何度も続けて打ち付ける。
数十秒後、ガチャっと扉が開いた。
「りっくん、床は蹴るものじゃありませんよ」
そこにいたのは青姉ではなく、母さんだった。
「んんー!」
母さんが現れることを全く想定していなかったバカな俺は、少しでも距離をとろうと芋虫のようにうねうねもがく。
「動いちゃ駄目です」
すぐに母さんに足を掴まれて動けなくなっった。
「んんんー! んんんんー!」
母さんから逃げようとジタバタ暴れる。
でも両手足を縛られた状態ではまともな抵抗は出来なかった。
「ふふふっ」
「んんー! んんんー!」
母さんは俺の腹の上に座って微笑む。
腹に圧力をかけられ、俺は猛烈な尿意に襲われる。
「どうかしましたか?」
母さんは俺の腹に手をつき、軽く体重をかけながら聞いてくる。
俺は漏らしそうになるのを必死で耐えながら、世界で一番性格の悪いロリっ子を睨んだ。
母さんは俺がトイレに行きたがっていることに絶対気が付いてる。
「ねぇりっくん。私は別にりっくんをいじめたい訳じゃないんですよ」
「んー!」
ぎゅっ、ぎゅっと俺の腹に体重をかけながら母さんは優しい口調で告げる。
いじめたい訳じゃないとかよく言える。いくら口調が優しいからって俺は騙されたりしないぞ!
「私はただりっくんにロリババアって言われたのが悲しくて、りっくんが他の人にはそんな酷いこと言わないように反省して貰おうと思って言っているだけなんです」
「んんんー!!」
今まさに俺へ酷いことをしているお母様は反省しなくてもよろしいのでしょうかねぇ!?
「もしりっくんが反省しているのならすぐにでも解放してあげたいんですけど、りっくんは反省していますか?」
「んんんー! んんんんー!」
母さんが可愛らしく首を傾げる。
俺は、してる、してます、と叫びながら激しく頷き反省の意志を示す。
すると母さんは俺の口に嵌められた布を取ってもう一度問いかける。
「本当に反省してますか?」
「し、してる! してます! 反省してます! だ、だから早く、早くほどいて下さい!」
今度は言葉で示し、今にも泣きそうになりながら母さんに懇願した。
「りっくん、本当に反省しているのなら私に言うことがありませんか?」
「か、母さんに酷いこと言ってごめんなさい! お、お願い、母さん! 俺もう!」
泣きそうになりながら、すぐに謝罪をして、母さんの深紅の瞳を見つめて請う。
母さんは、わかりました、と微笑み、俺の手足を拘束していた紐をほどいてくれた。
ついに本当の意味で解放された俺は急いで立ち上がり、一階にあるトイレへと走る。
「や、やばいぃぃぃぃ!」
股間を手で押さえ、額から冷や汗を流しながら階段を駆け降りトイレの中へ入る。
――「えっ」
つもりだったのだが、トイレには鍵がかかっていた。
そして、俺は、儚く散った……。
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