田豫と情報整理
「さて、これまでの経緯を少しまとめておこうか」
「そうですね。ボクもまだ把握し切れていないことがあると思いますし」
いつでも寝られるよう楽な格好になり、
それぞれが情報をまとめたメモを片手に話し始める。
数十万人の信者を有する宗教団体『
洛陽に入った幹部の
「このとき、叛乱を疑われた人たちが千人以上処刑されたそうだ」
「無実の人もたくさんいたんでしょうね……」
なんにせよ計画が露見した以上、時間が経つほど官軍の迎撃態勢は整い、張角は不利になっていくので、彼は慌てて蜂起し、洛陽を目指した。
いきなり千人を処刑したことからも、皇帝や宦官どもは相当ビビったに違いない。
皇后
『
太平道鎮圧の対策を協議するなかで、
党錮の禁ってのは、中常侍ら
このとき解任された人たちは200人にのぼり、一生仕官できない『終身党錮の刑』に処された。
ちなみに宦官や外戚におもねる連中を『濁流派』、敵対する勢力を『清流派』と呼ぶ。
「結局今回の叛乱が起こったおかげで、清流派の連中は終身党錮の刑を赦された……ようは、また仕官できるようになったわけだよな?」
「そうですね。そういう人たちが、太平道に結びつくのを恐れたから、党錮の禁は解かれたということらしいです」
「すでに結びついていた連中もいたんじゃね?」
「……いたでしょうね」
清流派によるマッチポンプ的な要素は少なからずあったはずだ。
なんにせよ、この時点で目的を果たした連中は、これ以上太平道の支援を続ける必要はなくなった、と。
急ピッチで軍備を整えた何進は、
なんちゃら中郎将ってのは、軍を率いる大将みたいなもんだと思ってくれ。
余談だが、劉備はガキのころ、盧植のもとで勉強していたらしい。
あんまり真面目にはやってなかったみたいだけどな。
「官軍は南北に分かれて進軍したみたいですけど、戦況はどうなんでしょう?」
「張角のいる
盧植率いる軍は、洛陽から北に向かい、張角のいる
それが先月のことだ。
何度か戦闘を行い、ことごとく勝利していると聞いたのは、俺たちが出発した直後のことだった。
情報の伝達に時間がかかる時代ではあるが、劉備らが持つ各種ネットワークのおかげで、官軍並みか、下手をすればそれ以上に早く、情報が手に入る。すごくない?
皇甫嵩と朱儁は、洛陽から南下し、
「穎川郡では十万人が蜂起したそうですね」
「らしいな。いまごろ官軍とぶつかってるころかもな。あと、
潁川郡での十万人蜂起も、宛県城陥落も先月の出来ごとだ。
俺たちが出発したのが四月の頭。
その直後には盧植の勝利が伝えられたけど、さらに十日ほどが経っても、皇甫嵩、朱儁らの戦況はまだわからないままだった。
「ふわぁ……ん……」
話し込んでいるうちにずいぶん遅い時間になってしまい、田豫は大きなあくびをした。
「明日には、
「おう、たぶんな」
眠い目をこすりながら俺に問いかけた田豫だったが、目の焦点がもう合っていない。
「明日も早い。そろそろ寝ようか」
「ふぁい……」
田豫がコテンと寝転がり、すぅすぅと寝息を立て始めたので、灯火を消して俺も横になった。
明日、官軍と合流すれば、いよいよ戦いが始まるのか……。
翌日、予定通り鄒靖と合流した俺たちは、潁川郡にて朱儁が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます